縦型で作ったショートドラマを、YouTubeの通常動画や展示会のモニターでも流したい。こうした相談を受けたとき、最初に確かめるのは、撮影の時点で横に広げるための余白が映像に残っているかどうかです。縦9:16の映像をそのまま横16:9の画面に置くと、左右に大きな空きができます。逆に横の映像から縦を切り出すと、画面の幅の約3分の1しか残りません。
この記事は、ショートドラマや商品紹介動画を発注する企業の担当者向けです。縦型と横型の両方を使う予定があるとき、撮影前に何を決めれば見積もりと仕上がりがぶれないかを扱います。媒体の推奨比率は2026年10月23日に各社の公式ヘルプで確認しました。本文の例は説明用の架空例で、実案件の成果ではありません。
縦型と横型は、同じ素材から作れる範囲が違う
縦9:16と横16:9は、同じ動画の向きを変えただけの関係ではありません。画面に写る範囲そのものが違います。横16:9の映像から縦9:16を切り出すと、残る幅は元の約32%です。計算は「9÷16×9÷16」で、高さをそろえたときの幅の比になります。
縦の映像を横の画面へ広げる場合は、上下を大きく切り落とすか、左右に背景を足すかのどちらかになります。どちらを選んでも、撮影時に写っていない部分は後から作れません。生成AIで背景を描き足す方法もありますが、人物の動きや商品の形まで正しく補えるとは限らないため、本記事では補助的な選択肢として扱います。
媒体ごとの推奨比率を先に並べる
どの比率で作るかは、掲載先の公式ヘルプから決めます。2026年10月23日に確認した内容を、発注に関わる部分だけ並べます。
| 掲載先 | 公式ヘルプの記載 |
|---|---|
| YouTube(通常動画) | 動画はネイティブのアスペクト比でアップロードし、上下左右の帯を含めない。16:9は1280×720以上を推奨 |
| YouTubeショート | 2024年10月15日以降にアップロードされた、正方形または縦長で3分以内の動画がショートに分類される |
| Google広告(動画) | 横16:9・縦9:16・スクエア1:1の3比率を案内し、複数比率の併用を推奨。縦長はショートのフォーマットに最適と案内 |
| TikTok広告(インフィード) | 縦9:16を推奨(540×960以上)。横16:9と正方形1:1にも対応 |
出典はYouTubeの動画と音声の形式設定、3分間のYouTubeショート、Google広告のスクエア動画・縦長動画、TikTok広告の動画広告の仕様です。Google広告のヘルプは、動画キャンペーンとアプリキャンペーンでさまざまな比率の動画を使うことを勧めています。媒体の仕様は変わるため、入稿の前にもう一度確かめてください。
帯を足した横動画は、YouTubeの推奨から外れる
縦の動画の左右に黒や背景色の帯を足して16:9に書き出す方法は、手軽に見えます。ただ、YouTubeのヘルプは上下左右の帯を含めずにアップロードするよう案内しています。同じヘルプには、動画やプレーヤーのサイズに関係なく、プレーヤーが自動でフレームを調整するとも書かれています。YouTubeに載せるだけなら、縦のまま投稿したほうが案内に沿います。
帯を足した横版が必要になるのは、展示会のモニターや社内の横長スクリーンなど、再生する機器が16:9に固定されている場面です。会場での再生条件は展示会動画の外注で整理しています。掲載先が決まっていれば、横版を作るべきかどうかはそこで判断できます。
両方で使うなら、撮影前に3つを決める
縦と横を一度の撮影でまかなうには、撮影前の段取りがすべてです。後から「横版も欲しい」と伝えても、写っていない範囲は戻りません。当社編集部では、次の3点を企画書か発注書に書いておく方法を勧めます。
どちらを主にするかを決める
縦と横を同じ重さで両立させる撮影は、どちらの見え方も中途半端になりやすくなります。TikTokやリールが主で、YouTubeや展示会は補助なら、縦9:16を主にします。そのうえで、横で使う場面だけ左右に余白を残して撮るか、別のカメラ位置から撮り足すかを決めます。
主にする比率は、出稿予算が多い媒体から選ぶのが分かりやすい基準です。何本作るかと合わせて考えると、横版を全編で作るのか、一部の場面だけでよいのかも決まります。
字幕と人物の位置を、狭いほうの画面に合わせる
両方で使う場面は、縦の画面に収まる中央の範囲に人物の顔と商品を置きます。横に広げたときは左右の余白が背景として見え、縦に切ったときも主役が欠けません。字幕も同じ考え方で、縦の画面の中に収まる位置と大きさで設計します。
TikTok広告のヘルプは、セーフゾーンの大きさが画面の向き、説明文の長さ、使うフォーマットで変わると説明しています。説明文が長いほど映像に重なる範囲も変わるので、字幕や商品名を画面の端ぎりぎりに置かず、入稿前に配信画面のプレビューで重なりを確かめます。Google広告のヘルプも、縦長動画のセーフゾーンを1080×1920の画像で示しています。
横版だけの撮り足しを、香盤表に入れる
会話の場面を横でも見せたいとき、縦用の寄りのカットだけでは、横にしたときに二人の位置関係が伝わりません。引きの画を1カット足すだけで、横版の編集が組みやすくなる場合があります。撮り足すなら、どの場面で何カット撮るかを香盤表に書き、撮影時間に含めてもらってください。
撮影済みの縦動画から横版を作るときの選び方
すでに縦で撮り終えている場合でも、横版が作れないわけではありません。方法ごとに、できることと向く場面が違います。
| 方法 | 仕上がり | 向く場面 |
|---|---|---|
| 縦のまま横画面に置き、背景を足す | 人物は欠けないが、画面の左右が空く | 展示会や社内上映など、再生機器が横に固定 |
| 縦の映像を拡大して横に切り出す | 画面は埋まるが、上下が切れて画質も落ちる | 人物が中央にいて、引きで撮れている場面 |
| 生成AIで左右を描き足す | 背景が自然につながる場合がある | 動きが少ない場面。人物や商品の描き足しは避ける |
| 横版用の場面を撮り足す | 横の画面として自然に見える | 横版が広告や上映の主役になる場合 |
拡大して切り出す方法は、元の縦動画が1080×1920でも、横16:9の幅に合わせると縦方向の情報が大きく減ります。顔の上下が切れる、字幕が画面からはみ出すといった問題は、試しに1場面だけ書き出してもらうと早く分かります。全編を作る前に、代表の場面で仕上がりを確かめてください。試作で方向を決める進め方は、ほかの修正作業と同じです。
架空例:商品紹介のショートドラマを展示会でも流す
化粧品メーカーが、TikTok広告用に縦30秒のショートドラマを作ったと仮定します。半年後に展示会の横長モニターで流すことになり、横版を相談したという例です。
人物が画面の中央にいる会話の場面は、拡大して横に切り出せました。ところが、商品を手に取る場面は縦の画面いっぱいに手元が写っていて、横に切ると商品の上半分が切れてしまいます。この場面だけは、背景を足して縦のまま見せることにしました。展示会は音を出せない会場だったため、字幕も横画面用の位置に組み直しています。
この例で分かるのは、横版の作り方を全編で一つに決める必要はないということです。場面ごとに方法を選べば、撮り直しをせずに済む範囲が広がります。ただし字幕の組み直しや場面ごとの処理は作業が増えるため、見積もりに含めてもらいます。
見積もりと納品で、比率ごとの条件をそろえる
縦と横の両方を頼むとき、見積もりで「横版もお願いします」とだけ書くと、制作会社によって作業の範囲が変わります。帯を足すだけなのか、字幕を組み直すのか、撮り足すのかで、必要な作業が大きく違うからです。
| 見積もりに書く項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 主にする比率 | 縦9:16を主。横16:9は展示会用 |
| 横版の作り方 | 会話は切り出し、商品の場面は背景追加 |
| 字幕 | 縦用と横用で位置と大きさを分ける |
| 撮り足し | 横版用の引きの画を2場面 |
| 納品 | 比率ごとのファイル名、尺、音の有無 |
撮影の前に横版が決まっていれば、撮り足しの時間を香盤表に入れられます。撮影後に決まった場合は、既存の素材でできる範囲と、追加撮影が必要な範囲を分けて見積もってもらいます。制作費の考え方はショートドラマ制作費の内訳、修正の頼み方は動画制作の修正依頼で詳しく扱っています。
ナイトてんしょんのショートドラマ制作では、縦型を主にした撮影から、横版や短縮版の書き出しまで一緒に相談できます。単発の制作は、ライトショートドラマが5万円/本〜・3本以上、本格ショートドラマが15万円/本〜・2本以上です。横版の追加を含めた総額は見積書で確認し、本数と対応範囲は制作プランで確かめてください。横版の要否が決まっていない段階でも、掲載先の候補を伝えていただければ、撮影前に決めるべきことを整理します。
納品ファイルは、比率ごとに名前で分ける
縦版と横版を同時に受け取ると、入稿のときに取り違えが起こりやすくなります。ファイル名に比率と用途を入れ、どの版を承認したかを記録してください。例えば「商品A_縦9x16_TikTok広告_v3」のように書けば、確認する人が変わっても迷いません。
承認は版ごとに行います。縦版を確認したから横版も問題ない、とは扱いません。横版は字幕の位置、切り出しで欠けた部分、背景を足した場面のつながりを、横の画面で通して見てください。サムネイルの切り出しも比率ごとに変わるので、サムネイル設計の検品も合わせて確認すると安心です。
縦型動画を横型にするときのよくある質問
縦の動画をそのままYouTubeに載せてもよいですか?
載せられます。YouTubeのヘルプは、動画をネイティブのアスペクト比でアップロードし、帯を含めないよう案内しています。2024年10月15日以降にアップロードされた縦長で3分以内の動画は、ショートに分類されます。通常の動画として横で見せたい場合は、横版を別に作ります。
横で撮っておけば、縦にも切り出せますか?
切り出せますが、高さをそろえると残る幅は元の約32%です。人物が二人以上並ぶ場面や、商品を横に並べた場面は縦に収まりません。縦を主に使うなら、縦で撮るか、縦の画面に収まる構図で撮るよう撮影前に伝えてください。
生成AIで横に広げれば、撮り足しは不要ですか?
背景だけが写った動きの少ない場面なら、自然につながることがあります。人物の手足や商品が画面の端にかかる場面では、形が崩れることがあるため避けたほうが安全です。使う場合も、全編の前に1場面で仕上がりを確かめます。
横版は後から頼んでも大丈夫ですか?
頼めますが、撮影済みの素材でできる範囲に限られます。撮影前に決めておけば、横版用の引きの画を撮り足せるため、選べる方法が増えます。掲載先の候補が一つでもあれば、企画の段階で伝えてください。
相談には、掲載先と主にする比率を添える
縦と横のどちらを作るかは、編集の段階ではなく企画の段階で決まります。掲載先の候補、主にする比率、横版を使う場面の3つが分かれば、撮影の段取りと見積もりの範囲を決められます。ナイトてんしょんへの制作相談には、掲載予定の媒体と公開希望日を添えてください。撮影済みの素材から横版を作る相談も、素材の状態を見たうえで対応できる範囲をお伝えします。
出典確認日:2026年10月23日。比率ごとの切り出し幅は当社の計算、比較表・見積もり項目・架空例は当社編集部の提案です。横版の追加による再生数や問い合わせの増加を実測した事例ではありません。