初稿への修正依頼は、「どこを直すか」だけを送ると往復が増えます。速く終わるのは、直す場所・直す理由・直った状態の3つが揃っている依頼です。理由が書かれていないと、制作会社は「何がお気に召さなかったのか」を推測して直すことになり、その推測が外れた分だけ2周目が発生します。日程への影響は修正内容や確認体制でも変わるため、本記事では発注側から渡す情報を整理します。
この記事では、修正箇所と意図を制作担当へ伝えるための書き方を提案します。読んでほしいのは、動画やショートドラマを発注し、これから初稿を受け取る事業会社のマーケティング・広報・採用の担当者です。発注前に渡す情報はショートドラマ制作のオリエンで渡す情報|仕上がりを左右する5つ、社内で予算を通す手順は動画制作の稟議を通す方法|ショートドラマの予算根拠と決裁資料にまとめました。この記事はその先、初稿が上がってから納品までの間を扱います。
修正が増えるのは、指示ではなく感想を送っているから
いちばん多いのが「全体的にもう少しよくしたい」「なんとなくしっくりこない」という一文です。書いた側にはたしかな違和感があるのですが、受け取る側からは、それが企画の問題なのか、テンポの問題なのか、役者の芝居の問題なのかが分かりません。
想定例として、「暗い印象」という指摘を受けた編集担当が色味を明るくしたものの、発注側が気にしていたのは物語の結末だった場合を考えます。原因が揃わないまま修正すると、再度確認が必要になる。違和感のある場面と、その場面で何を伝えたいかを一緒に送ってください。

違和感の言語化は、発注側にとっても簡単ではありません。ただ、完璧に言語化する必要はなく、「誰の目にどう映るのが心配か」を一行足すだけで解釈は絞れます。「テンポが遅い」ではなく「最初の3秒で離脱されそうに見える」と書かれていれば、直す場所は自動的に冒頭に決まります。
修正依頼は3つの階層に分けて出す
修正には重さの違いがあります。同じ「直してください」でも、企画そのものを変えるのか、テロップの文字を変えるのかでは、戻すコストが桁で違います。これを1通のメールに混ぜて送ると、制作側はどれから着手すべきか決められません。
詳しい条件・補足を読む
修正依頼の3階層
上の層を動かすと、下の層の作業は全部やり直しになる
第1層 方向|企画・設定・オチ・訴求
撮り直しが必要になる領域。編集では戻せない
出すなら台本の段階。初稿を見てから言うと費用が跳ねる
第2層 構成|尺・カットの順番・削る箇所
撮った素材の範囲内で組み替える
編集で対応できる。初稿への指摘はここに集める
第3層 仕上げ|テロップ・音量・色・ロゴ
作業時間は短い
ただし第1層が動くと、ここは全部やり直しになる
同じ回の依頼で第1層と第3層を混ぜて出すと、直した仕上げが次の稿で消える
修正依頼を階層で分けた形。第1層から順に潰し、下の層は上が固まってから出す。
順番には意味があります。第1層が確定していない状態で第3層のテロップを直しても、方向が変われば書き直しになるからです。上の層から順に閉じていくのが、結果として最短になります。
実務としては、1通の連絡に1つの階層だけを入れるのが分かりやすい形です。方向の話が残っているうちは、テロップの誤字は「後でまとめて出します」と保留しておく。細かい指摘を我慢するのは気持ちのいい作業ではありませんが、ここを混ぜないだけで往復は目に見えて減ります。
伝わる修正指示の4点セット
一つひとつの指示は、時間・現状・理由・期待の4つで書くと、ほぼ確実に1周で通ります。書式は箇条書きでも表でもかまいません。
| よく届く書き方 | 場所と目的が分かる書き方 |
|---|---|
| 冒頭がもう少しインパクトほしいです | 0:00〜0:03。いまは部屋の引きから始まっています。スクロール中の人に何の話か伝わらず離脱されそうです。1カット目を主人公の表情のアップにして、最初のセリフを先に出してください |
| セリフが聞き取りづらい | 0:24〜0:31。BGMがセリフに被っています。音を出せない環境で見る人が多い想定なので、この区間はテロップを全文入れ、BGMを一段下げてください |
| もっと商品を目立たせたい | 1:02。商品が映るのが一瞬です。ここは購入を検討している人に名前を覚えてもらう箇所なので、パッケージが読める尺で2秒止めてください。宣伝色は強めたくないので、セリフは足さずに画だけで見せたいです |
| 全体的に暗い印象 | 通し。採用向けなので「働きやすそう」と感じてほしいのですが、いまは照明と色味が重く、シリアスなドラマに見えます。全体を明るめのトーンに寄せてください。判断に迷ったら、暗さより明るさを優先してください |
右側は、本記事で作成した修正指示の例です。修正に必要な日数は、素材の有無と作業範囲を確認して制作担当と決めてください。
「お任せします」も立派な指示です。 全部を指定する必要はありません。どうしても言語化できない箇所は「違和感はあるが原因が分からない。プロの判断で直してほしい」と正直に書いてもらった方が、こちらは動けます。困るのは、言語化できていない違和感が「もっとよくしてください」という形で来ることだけです。
修正回数と追加費用を、作業範囲で確認する
基本料金に含まれる修正回数と範囲は、見積書・契約書で確認します。「2回まで」なら、1回分に含む指摘の範囲、再提出後に別部署から来た指摘の扱い、台本変更を含むかまで揃えてください。回数だけを他社と比べても、買う作業が同じとは限りません。
修正依頼を送る際は、合意済みの仕様へ合わせる訂正か、発注後に希望が変わった追加作業かを分けて伝えます。費用負担を一方で決めず、変更内容と合意した条件を制作会社と照合してください。
| 修正する段階 | 変更の例 | 見積もりで確かめる範囲 |
|---|---|---|
| 企画・構成 | 訴求や物語の変更 | 再提案・構成の作り直し |
| 脚本・絵コンテ | セリフ・構図の変更 | 書き直し・描き直し・再確認 |
| 撮影準備後 | 場所・出演者の変更 | 手配済みの内容と日程への影響 |
| 撮影後・編集中 | カットや演技の変更 | 元素材で対応できるか、追加撮影か |
| 納品前 | 文字・音量・色の変更 | 各版への反映と書き出し・検品 |
撮影前でも、企画やコンテを作り直す作業は発生します。早い段階で意見を揃えるのは、撮影後に必要な素材が足りないと判明するのを避けるためです。無償で何度でも変更できるという意味にはなりません。制作会社から追加作業・費用・提出日への影響を返してもらい、合意してから進めます。
たとえば「主人公の職業を変えたい」という依頼では、企画中なら台本の書き直し、撮影後なら衣装や背景を含む撮り直しが必要かを確認します。同じ希望でも、戻る工程が違う。工程全体はショートドラマの納期と撮影期間を参照してください。
発注側が知っておきたい法律の線引き
修正依頼は、量と出し方によっては取引の問題になります。フリーランスや個人事業主のクリエイターに直接発注している場合はとくに注意が必要です。
2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)では、発注事業者に対して禁止される行為が定められています。公正取引委員会は、そのひとつとして「フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに、給付の内容を変更させたり、受領後にやり直させたりして、フリーランスの利益を不当に害すること」を挙げています(出典: 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」)。この禁止には、発注者が従業員を使用するなどの「特定業務委託事業者」に該当し、1か月以上の業務委託をするという適用条件があります。個別の対象判定は、公式資料で確認してください。法律の位置づけと執行体制は公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた取組」にまとまっています。
実務に落とすと、注意すべきなのは次の点です。当初の依頼になかったことを後から足すなら、費用と納期も一緒に動かす。 「ついでにこれも」を無償で積み上げると、金額の大小にかかわらず、やり直しの強要と受け取られる余地が生まれます。
もうひとつは記録です。どの時点で何を合意し、どこから追加になったのかが残っていれば、発注側も制作側も守られます。口頭やチャットの断片で決めていくと、後から「言った・言わない」になりやすい。合意した内容はその都度、書面かメールに残しておくのが安全です。出演者の権利や二次利用の扱いはショートドラマの出演者契約と二次利用|発注側の権利処理にまとめました。
撮影前に、修正の判断基準を揃える
企画・台本・絵コンテを確認するときは、発注時に決めた訴求と、商品情報の正しい資料を照合します。曖昧な箇所は撮影へ進む前に制作会社へ返し、保留している内容が撮影条件へ影響するか確認してください。書き直しや描き直しを頼む場合も、見積もりに含まれる範囲と再提出日を確認します。
初稿への修正は、方向の変更と仕上げの訂正を分けて一覧にします。全体の方向が未決なら、その影響を受ける字幕の修正をいつ行うか、制作担当と順序を決められます。誤字や誤情報を見つけた場合は一覧に残し、仕上げの確認時に取りこぼさないようにしてください。
想定例として、撮影後に社内の商品担当から「その使い方は紹介できない」と指摘された場合を考えます。編集で除けるか、代わりの素材があるか、追加撮影が必要かで対応が変わります。これは当社の実案件の紹介ではなく、確認の順序を考える例です。撮影前に確認する商品表現は台本チェックへ整理しています。
よくある質問
Q1. 修正は何回まで無料ですか?
基本料金に含まれる回数・範囲・数え方を見積書や契約書で確認してください。企画や絵コンテの修正も、無制限・無償とは限りません。追加の希望がある場合は、作業と費用、提出日への影響を確認して合意します。
Q2. 違和感はあるのに、どこを直せばいいか分かりません
無理に原因を特定しなくて大丈夫です。「0:15あたりから見ていて集中が切れる」のように、違和感を覚えた時間と、そのときの感覚だけ書いてください。原因の特定は制作側の仕事です。困るのは、時間の情報がない全体評だけが届くときです。
Q3. 撮り直しはお願いできますか?
できますが、キャスト・ロケ地・スタッフをもう一度押さえる必要があるため、費用と日程は別途になります。撮り直しを避けたい場合は、撮影前に絵コンテと香盤表を必ず確認し、可能なら撮影当日に立ち会って「その日しか直せないもの」をその場で確認してください(動画撮影の立ち会いで発注者がやること|当日の判断とNGな一言)。撮影後に変えられるのは、撮った素材の範囲内だけです。
Q4. 修正のやり取りはどのツールがいいですか?
動画に直接コメントを打てるレビューツールがあれば最短です。無い場合でも、メールやチャットで「時間・現状・理由・期待」の4点が揃っていれば十分に機能します。避けたいのは、複数の担当者から別々の経路で修正が届く状態です。社内で一度まとめてから、窓口を一本にして送ってください。
Q5. 社内の意見が割れていて、指示がまとまりません
その状態のまま送っていただいてもかまいませんが、「最終的に誰が決めるか」だけは先に決めてください。決裁者が不在のまま修正を重ねると、往復が終わらなくなります。判断が割れた論点は、こちらから2案出して選んでいただく形にすることもあります。
修正したい箇所と、発注条件を添えて相談する
ナイトてんしょん(当社)へ制作を相談する際は、完成させたい内容、提出期限、社内の確認担当をお知らせください。初稿後の修正を含め、見積もりの範囲は個別の条件を確認して決めます。
自社SNSの年間再生回数1億5,000万回越えの制作活動を背景に、ショートドラマの企画・制作を行っています。ショートドラマ制作サービスとお問い合わせからご相談いただけます。