ショートドラマをブランディングに使うなら、見た人に「どんなときに、何の会社として思い出してほしいか」を先に決めます。再生数やロゴの認知だけでは、購入を考える場面で思い出されたかまでは分かりません。企画の狙いと、確認できた反応を分けて扱う必要があります。

この記事は、SNSで物語を発信する企業の担当者に向けた設計・検証の手引きです。メンタル・アベイラビリティという概念を参考に、台本への落とし込みを説明します。以前掲載した「物語は22倍記憶される」という数値や、神経伝達物質から広告成果を説明する記述は、本文の主張を裏付ける根拠が不十分なため取り下げました。

ブランドを知っていることと、買う場面で思い出すこと

Ehrenberg-Bass Instituteの説明では、メンタル・アベイラビリティを、購買状況でブランドに気付き、認識し、思い浮かべる可能性として扱っています。ブランドへの好意や、名前を知っているかという単一の質問とは区別されています。

例えば、架空の収納用品ブランドの名前を聞いたことがあっても、玄関を片付けたいときに思い出すとは限りません。反対に、使う場面は思い出しても、どの商品だったか分からなければ探しにくくなります。動画を作る側は、場面とブランドのつながりを確かめたいところです。

ただし、ブランディングという仕事のすべてを一つの概念で説明するわけではありません。商品そのもの、購入しやすさ、接客なども顧客の経験に関わります。短い動画を見せることだけで、これらの課題が解決すると考えないようにしましょう。

企画は「使うきっかけ」を具体化して考える

同研究所のカテゴリーエントリーポイントの資料は、購買状況で記憶にアクセスするきっかけを扱っています。場所や時間などの外的な条件、動機や気持ちなどの内的な条件が含まれます。以下はその概念を参考にした、当社編集部の架空の企画例です。

関係を整理 使う場面から台本を考える 架空の生活場面 撮る内容の例 外出前に鍵を探す 探して焦る行動 置き場を決める 商品を使う場面 何の商品か知る 名称と案内先
当社編集部による確認の整理。成果の予測や、媒体が定めた成功条件ではありません。

収納用品なら「片付け全般」では範囲が広いため、「外出直前、家族の鍵が見つからない」「帰宅後、荷物の置き場に迷う」のように場面を絞ります。どちらを描くかで、登場人物の行動も見せる商品も変わります。

企画メモ架空の記入例
使う場面外出前に鍵を探す
人物の困りごと出発が遅れそう
商品の役割置き場所を決める
覚えてほしい対応玄関の整理に使える
確認したい反応場面と商品を説明できる

このメモは、広告効果を予測する表ではありません。顧客が実際にその場面で困っているかは、相談内容や利用者への確認などで調べます。制作側が思い付いた都合の良い悩みを、調査済みの需要として扱わないことが大切です。

台本では、人物の行動と商品の役割をつなぐ

架空の場面として、主人公が鍵を探し、家族に急かされる話を考えます。帰宅後に鍵の置き場所を相談して決める場面まで描けば、生活の困りごとと収納用品がつながります。「この商品で人生が変わった」という説明を追加する必要はありません。

商品が登場する理由を台本の中に置きましょう。置かれているだけで用途が分からないなら、触る、片付ける、見つけるといった動作で伝えられるか考えます。商品の名称を何度も読み上げる前に、どの場面で何に使ったかを確かめます。

主人公の行動で説明できない機能や条件は、字幕や案内先の役割です。使える物のサイズや設置方法など、購入に必要な情報を物語の勢いで省いてはいけません。商品の見せ方と台本確認では、役割と配置を詳しく整理しています。

物語の人物が好かれたことと、ブランドが覚えられたことも別です。コメントが俳優の演技に集中しているなら、それ自体は作品への反応として残し、商品の認知を示す証拠へ置き換えないようにします。

色やキャラクターをそろえる前に、何を識別させるか

シリーズの色、人物、場所などをそろえる案は、制作方針として検討できます。ただし、同じ色を使えば自動的に自社ブランドと結び付くわけではありません。別の商品を連想させないか、ブランド名を見ずに何の映像か分かるかを確認します。

初めて見る人向けの説明も必要です。前話を見ていないと人物関係が分からない作品は、常連の視聴者と初見で理解が違うかもしれません。シリーズの継続性と、一本ずつの分かりやすさを一緒に検品しましょう。

発注書には、残すものと変えてよいものを書きます。「商品名とパッケージは実物どおり」「人物の口調は設定を維持」「服装は場面に合わせて変更可」のように書けば、毎回の修正理由も共有しやすくなります。シリーズを続ける場合は話数と構成の設計も確認してください。

試写で確かめることと、公開後に測ることを分ける

公開前の試写では、視聴者役の人に「何が起きた話か」「何の商品が出たか」「どんな場面で使うと思ったか」を、誘導しない聞き方で答えてもらう案があります。これは内容の理解を確かめるための試写で、広告効果を証明する調査ではありません。

関係を整理 指標ごとに、分かることが違う 確認資料 分かる範囲 再生の記録 映像が再生された 内容への回答 試写での受け取り方 購入の記録 確認できた購入
当社編集部による確認の整理。成果の予測や、媒体が定めた成功条件ではありません。

回答を聞く前に商品の狙いを説明すると、その説明を答えたのか、映像から理解したのかが分からなくなります。試写の人数や対象、質問文、視聴条件を残し、社内の少人数の感想を市場全体の反応として一般化しないようにします。

公開後は、映像の視聴、ブランドに関する反応、事業上の行動を別々に報告します。視聴維持率は、どの場面で視聴が続いたかの手がかりです。ブランドを記憶した割合や、商品を理解した割合へそのまま置き換えることはできません。

指名検索が増えた場合にも、別の広告、ニュース、季節要因などを確認します。動画の公開と同時に増えたという観測と、動画によって増えたという因果判断を分けましょう。バズと売上の関係の確かめ方も参照できます。

制作を続ける判断は、目的に対応した根拠で行う

企画時に置いた問いへ戻ります。「玄関を整理したいときに思い出してほしい」なら、単に総再生が伸びたという報告だけでは答えになりません。どこまで取得でき、どこが未確認なのかを担当者間で共有します。

反応が弱い場合は、接触した量が少ないのか、伝えたい場面が理解されなかったのか、ブランドとの関係が薄いのかを分けます。まだ分からない段階で、動画を長くしたり商品名を増やしたりすることを改善と決めないようにしましょう。

架空の振り返りなら「話の内容は説明できたが商品名は回答されなかった。次回は商品を使う場面の映り方を変更し、同じ質問で確認する」と残せます。想起や売上が上がったという結論を先に置かず、変更箇所と次の確認を具体化する方法です。

制作会社へ渡す企画メモ

相談時は、顧客が商品を検討する場面、現在の案内先、実際に提供できる価値を共有します。過去の動画があるなら、数字だけでなく、分かりづらかったという具体的な質問や、制作時に迷った判断も伝えると検討材料になります。

「もっと感動させたい」という依頼は、どの人物のどの選択を変えたいのかへ具体化します。感情を強めればブランド効果が上がるという前提を置かず、物語としての理解と企業の伝えたい内容を両方確認してください。制作オリエンで渡す情報に、共有する内容をまとめています。

よくある質問

Q1. 再生数が多ければブランディングに成功ですか?

多く再生されたという結果は残せますが、それだけでブランドが想起されるようになったとは分かりません。指標の意味を分け、目的に対応した調査や行動を確かめます。

Q2. 商品を出すと物語が弱くなりますか?

商品が場面に必要な役割を持つなら、行動と一緒に見せる案を検討できます。露出の量だけで判断せず、登場理由と視聴後の理解を確認しましょう。

Q3. ショートドラマは説明動画より優れていますか?

説明したい内容によります。操作方法を順番に伝えたいなら、実演や説明が適する場合もあります。形式を先に固定せず、視聴者が理解する必要のあることから選びます。

ナイトてんしょんでは、使う場面や人物の行動からショートドラマを企画します。商品と物語の結び付け方に迷っている場合は、制作サービスの範囲をご確認のうえ、企画について相談してください。