ショートドラマに商品を入れるときは、人物の行動や生活の場面と結び付け、商品が何を伝える役割を担うかを決めます。登場人物に商品の特長を順番に読み上げさせると、そこで物語が止まり、視聴者には広告の時間だと伝わってしまいます。発注側が台本で確かめるのは、商品が出てくる場面、言わせる言葉、映り方の三つです。

この記事は、自社の商品やサービスをショートドラマに登場させたい企業の担当者に向けて書いています。脚本全体の組み立てはショートドラマの脚本の書き方、台本チェックの全項目は台本で発注者が見る7項目にまとめているので、ここでは「商品の入れ方」に絞ります。法令やプラットフォームの説明は2026年10月9日に確認した公式資料を参照し、それ以外の判断は当記事からの制作上の提案として示します。

商品が浮くのは、物語の外から差し込むとき

確認したいのは、話の流れと関係なく商品の紹介シーンが挟まっている台本です。例えば、友人同士の会話が盛り上がっている途中で、一人が急に商品を手に取り、成分や価格を説明し始める構成です。商品の説明としては正確でも、視聴者が追っていた会話の続きがそこで途切れます。

商品を自然に見せるには、その場面がなくなると話がつながらない位置に置きます。主人公が困っていることを商品が解決する、あるいは商品を使っている習慣から人柄が伝わる、という形です。商品を外しても話が成立する場合は、生活の背景として見せる意図なのか、紹介場面が不要なのかを確かめます。商品の不可欠さだけで、すべての企画を判定することはできません。

関係を整理 置く場面で役割が変わる 置く場面 商品の役割 冒頭の数秒 状況を示す小道具 問題が起きる場面 解決のきっかけ 結末 変化した後の姿
どの場面に置くかで、商品に任せる仕事が変わります。1本の中で全部を使う必要はありません。

説明の台詞が長いと、物語が止まる

商品の良さを伝えたい気持ちが強いほど、台詞に特長を詰め込みたくなります。ただ、60秒前後の縦型ドラマで登場人物が商品を語る時間が長いと、視聴者は会話を聞く姿勢から広告を見る姿勢に切り替わります。台詞で説明する代わりに、使う前と使った後で登場人物の表情や行動がどう変わったかを見せると、同じ情報が物語の一部として伝わります。

商品説明の長さは、人物が話す理由と、正確に伝える必要のある条件から検討します。台詞の数に一律の上限は設けません。言葉で伝えたい特長が三つあるなら、どれを台詞にし、どれを映像に任せ、どれを投稿文や概要欄へ回すかを台本の段階で振り分けます。全部を本編で言わせようとしないことが、商品の場面を短く保つ近道です。

商品を映す回数は、場面ごとの役割から決める

商品が繰り返し映ることが必要な物語もあります。最初は贈り物を選ぶ場面、次は渡すのをためらう場面、最後は受け取る場面なら、同じ物が人物の選択を伝えます。回数だけを減らすと、そのつながりが分からなくなる場合があります。

台本では、商品が映る各場面の横に「何を知ってもらうか」を書きます。同じ説明が重なる場合はまとめ、使い方や人物の変化を伝える場面は残す案を検討してください。シリーズでも、毎回同じ見せ方がよいかは企画の狙いと公開後の反応から確かめます。特定の登場回数が視聴成果を高めるという根拠は、この記事では示していません。

商品に任せる役割を、三つの型から選ぶ

当社編集部が企画を比較するために整理した三つの案を挙げます。どれが正解ということはなく、商材の特徴と、視聴者に覚えてほしいことによって選びます。一つ目は主人公の困りごとを商品が解決する型、二つ目は登場人物が普段から使っている姿を見せる型、三つ目は結末で商品を選んだ後の暮らしや関係を映す型です。発注前に担当者が「この商品に何をさせたいか」を一言で言えると、制作会社との企画の打ち合わせが早く進みます。

型向いている商材の例気をつけること
困りごとを解く道具日用品、アプリ、業務効率化サービス効果を言い過ぎない
人物の習慣飲料、化粧品、食品、服一度は手元を映す
選んだ後の変化住まい、学習・転職、保険必ずそうなると描かない

問題を解く道具にするなら、困りごとを先に見せる

この型では、商品が出てくる前に、主人公の困りごとを視聴者がはっきり理解している必要があります。困っている様子が短すぎると、商品が出てきた理由が伝わらず、唐突な紹介に見えてしまいます。困りごとと使う理由のつながりが伝わるかを確認します。商品の登場を一度に限る必要はありません。困りごとは、ターゲットの視聴者が実際に口にしそうな言葉で描くと、自分のことだと感じてもらいやすくなります。

注意したいのは、解決の描き方が商品の実際の効果を超えないことです。ドラマの演出として誇張したつもりでも、視聴者には商品の性能として受け取られます。健康食品や化粧品のように表現の決まりがある商材は、ショートドラマの薬機法対応も合わせて確認してください。

習慣や結果として見せるなら、手元を一度は映す

人物の習慣として商品を見せる型は、広告らしさが出にくい反面、視聴者が商品に気づかないまま見終わることがあります。商品を認識してもらう必要がある場面では、パッケージや画面が読めるカットを検討し、商品の向きと照明を撮影前に確認します。商品名を台詞で言わない場合も、どのカットで認識してもらうかを台本に書き込みます。

変化の結果として見せる型は、高額な商品や、効果が出るまで時間がかかるサービスで使いやすい方法です。ただし、結末の幸せそうな姿を商品の効果として断定する描き方は、誤解を招くおそれがあります。変化のきっかけになった行動や決断を描き、その選択肢の一つとして商品が出てくる形にすると、言い過ぎを避けやすくなります。結末の映像に注意書きのテロップが必要かどうかも、表現の確認担当と台本の段階で決めておきます。

台本の段階で、商品まわりだけ別に確認する

撮影が終わった後に商品の見せ方を直そうとすると、撮り直しや編集の作り直しが必要になり、費用と日程に響きます。商品の場面は台本の段階で一度、全体の確認とは別に読み直すことをおすすめします。下の図は、その読み直しで確認したい項目です。

確認するポイント 商品の場面だけ読み直す 商品名 読み方と正式名称は正しいか 効果の表現 言える範囲を超えていないか 映り方 読める向きで一度は映るか 使い方 実際の手順と食い違いがないか
商品の場面は、物語の面白さとは別の基準で確認します。

必須の商品情報と、表現案を分けて渡す

制作会社へは、最も伝えたい内容に加え、省けない条件や注意書きも渡します。訴求を一つ選んでも、その成立条件まで削ることはできません。「時短」などの表現案を使うなら、何と比べ、どの条件で成立するかを商品担当へ確認してください。確認が済んでいない性能を、脚本家が推測して補う前提にはしません。

商品担当から渡す内容台本に残す判断
正式な商品名と画像どの画で商品を判別できるか
確認済みの説明と条件台詞・画面・案内先でどう伝えるか
避ける使い方動作と撮影小物で再現していないか
確認待ちの表現担当と返答期限、撮影へ進める条件

この表を埋めた段階で、企画から撮影までの制作相談へ進めます。未定の欄は未定と書き、商品資料と公開先を添えてください。

決めた言葉を台詞にそのまま入れるか、状況で伝えるかは、制作会社の提案を聞いてから判断しても遅くありません。商品パンフレットの文言をそのまま話し言葉にすると硬く聞こえるため、意味を変えない範囲で言い回しを崩してよいか、あらかじめ合意しておきます。崩せない言葉、例えば登録商標や効能の表現がある場合は、その一覧も一緒に渡してください。

映り方は、使う人の手元と向きまで書く

商品が映るカットは、台本のト書きに「誰が、どこで、どの向きで持つか」まで書いてもらうと、撮影当日に迷いません。パッケージの正面がカメラに向いているか、ロゴが手で隠れていないか、縦型の画面で切れない位置に置けているかは、撮影現場でも確認します。発注側が立ち会うなら、商品のカットだけは撮影後にモニターで確認する時間を取ってもらうと安心です。

使い方を描く場面では、実際の手順と違う使い方をしていないかも見ます。演出上の省略のつもりでも、間違った使い方として視聴者に広まると、問い合わせや誤解のもとになります。商品の担当部署に台本の該当ページだけ読んでもらう流れを作っておくと、確認の漏れを減らせます。撮影用の商品をいくつ用意するか、開封してよいかも、同じタイミングで決めておくと当日の段取りが楽になります。

PR表記は、物語の自然さとは別に決める

商品を物語に溶け込ませることと、広告であることを隠すことは別の話です。消費者庁は、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示をステルスマーケティングとして、2023年10月1日から景品表示法の規制対象にしています。規制の対象になるのは広告を出す事業者、つまり商品を供給する企業の側だと消費者庁の解説ページに示されています。

ショートドラマは物語として見られるぶん、広告であることが視聴者に伝わりにくい形式です。商品が自然に出てくるほど、投稿文やテロップでのPR表記を丁寧に行う必要があります。表記の文言、位置、読める大きさの決め方は広告動画のPR表記で詳しく扱っています。

投稿先ごとの申告機能も確認する

プラットフォームによっては、動画内の表記とは別に、有料のプロモーションであることを申告する機能があります。例えばYouTubeは、有料プロダクトプレースメントやスポンサーシップを含む動画について、アップロード時に「有料プロモーション」のチェックボックスで申告するようYouTubeヘルプで案内しています。同じページでは、開示に関する国内の法的義務を理解して守る責任がクリエイターとブランドパートナーにあることも明記されています。

自社アカウントではなく、制作会社やクリエイターのアカウントから投稿する場合は、誰が申告機能を設定し、誰が公開後に表示を確認するかを事前に決めます。表記と申告の担当が曖昧なまま公開すると、どちらも抜けたままになりかねません。発注書や進行表に、表記の文言と担当者の名前を書いておくと確認しやすくなります。

効果は、再生数と商品の覚えられ方を分けて見る

商品を自然に入れたドラマは、再生数が伸びても商品名が覚えられていないことがあります。反対に、再生数は控えめでも、コメント欄で商品について質問が来ている動画もあります。公開後の振り返りでは、物語として見られたかと、商品が伝わったかを別々に確認します。

流れをつかむ 見られた後の動きを追う 1 最後まで見られたか 商品の場面で離れていないか 2 商品に触れたか コメントの言及と質問を数える 3 移動したか プロフィールやリンクへの遷移 4 行動したか 問い合わせや購入を別に集計
再生数だけでは、商品が伝わったかどうかは判断できません。

視聴維持率は、商品の場面の前後で比べる

プラットフォームの分析画面で視聴者がどこで離れたかを確認できる場合は、商品が出てくる秒数の前後で落ち方を比べます。商品の場面で急に離れているなら、その場面が長すぎるか、物語から浮いている可能性があります。次の話では商品の出し方を変え、同じ位置の落ち方を比べると、改善の仮説を検討できます。

ただし、1本の動画の数字だけで原因を決めつけるのは避けてください。投稿の時間帯や題材、冒頭の引きでも数字は変わります。複数本を同じ見方で並べ、商品の出し方を変えた回と変えていない回を比べると、判断の根拠が増えます。KPIの組み立て全体はショートドラマ広告のROI・KPI設計を参考にしてください。

コメントの中身は、商品の伝わり方を表す

コメント欄に商品名や「どこで買えるのか」といった質問が書かれていれば、商品が視聴者の記憶に残った手がかりになります。逆に、物語への感想ばかりで商品に触れたコメントがない場合は、映り方や言わせる言葉を見直す余地があります。公開後の振り返りでは、商品への言及と物語への反応を分けて記録することを提案します。コメントがないことだけで、商品が伝わらなかったとは断定できません。

問い合わせや購入につながったかは、動画ごとにリンクを分ける、専用の割引コードを使うなどの方法で別に集計します。プロフィールへの移動やリンクのクリックは途中の動きとして、最終的な成果とは分けて報告すると、社内で数字の意味を取り違えずに済みます。集計の方法は公開前に決めておかないと、後から動画ごとの違いを追えなくなります。

ショートドラマの商品の見せ方でよくある質問

商品名は台詞で言わせたほうがよいですか?

商材によります。名前を聞いて検索してもらいたい商品なら、一度は台詞やテロップで名前を出すほうが覚えてもらいやすくなります。見た目で分かる商品なら、無理に台詞に入れず、パッケージが読めるカットで伝える方法もあります。

1本の動画に、複数の商品を入れてもよいですか?

入れることはできますが、それぞれの商品に役割を持たせるのは難しくなります。視聴者に一番覚えてほしい商品を一つ決め、他の商品は背景の小道具として控えめに扱うと、物語の流れを保ちやすくなります。

自然に入れると、広告だと気づかれないのではありませんか?

物語の中で自然に見せることと、広告であることを示すことは両立します。本編は物語として作り、投稿文やテロップでPR表記を入れ、投稿先の申告機能も使います。表記の担当と文言は公開前に決めておきます。

台本に商品の場面がないまま撮影に進んでもよいですか?

おすすめしません。商品の向き、映る時間、言わせる言葉は撮影当日に決めると迷いやすく、撮り直しの原因になります。台本の段階で商品の場面を書き込み、商品の担当部署にも確認してもらってから撮影に入ります。

商品と伝えたい一言を添えて相談する

ナイトてんしょんへショートドラマ制作を相談される際は、登場させたい商品、視聴者に覚えてほしい一言、表現上の決まりがあればその資料をお伝えください。商品に任せる役割と置く場面を、企画の段階から一緒に考えます。制作の流れと料金はショートドラマ制作のサービスページにまとめています。ショートドラマ制作を相談する際は、まだ商品の見せ方が決まっていない段階でもご連絡ください。