「今年は動画に予算を振る」とだけ決まって、では縦型なのか横型なのか、広告出稿なのかアカウント運用なのか、そこから先が止まっている。2026年の動画マーケティングで、発注側の担当者が最初にぶつかる壁はここにあります。
この記事は、動画広告の市場データを「どこにお金を置くか」という一点に翻訳します。トレンドの一覧ではなく、予算配分の判断材料として読めるように整理しました。書き手はTikTokショートドラマ専門の制作会社です。市場の数字と、実際に動画を作って回している現場の肌感を、両方から書きます。

2026年、動画広告市場は1兆円を超える
先に結論から書きます。国内の動画広告市場は、2026年に1兆437億円へ届く見込みです。2025年時点で8,855億円、前年比122.2%。テレビCMからの予算移動が続き、市場そのものが二桁成長を止めていません(サイバーエージェント 2025年国内動画広告の市場調査)。
数字が大きいだけなら「へえ」で終わります。発注者にとって意味があるのは、その中でどのフォーマットが伸びているかです。動画広告全体が2割成長する中で、縦型動画広告だけは前年比155.9%、2,049億円に達しました。スマートフォンで見られる動画広告の29.1%を、縦型が占めるところまで来ています。
つまり、平均的に伸びている市場の中で、縦型だけが平均の3倍近い速度で伸びている。予算を「動画」で括ると見えませんが、「縦型かどうか」で割ると、お金の流れの向きがはっきり出ます。
予算はどこへ動いているか|縦型が突出して伸びる理由
なぜ縦型だけがここまで伸びるのか。現場で作っていると、理由は3つに分解できます。
1つ目は、視聴環境がスマホに固定されたこと。可処分時間の奪い合いは、テレビの前ではなく通勤電車と布団の中で起きています。そこで再生されるのは縦画面です。横型の動画を縦の画面に置くと、上下に黒帯が出て情報量が半分になります。同じ予算なら、画面を使い切れる縦型のほうが単純に効率が良い。
2つ目は、大手広告主の出稿が定着したこと。かつて縦型は「若い会社が試すもの」でしたが、2025年は大手による縦型フォーマットへの出稿がさらに進み、SNS動画広告の主要フォーマットとして根づきました。実験枠ではなく、主力枠に変わったということです。
3つ目は、後述するストーリー化です。ここが今年のトレンドの中心なので、節を分けて書きます。

「動画広告トレンド」を発注者の意思決定に翻訳する
トレンド記事は「ストーリー化」「AI活用」「コミュニティ重視」といった単語を並べて終わりがちです。ここでは、それぞれが予算判断のどこに効くのかまで書きます。
ストーリー化(長尺化)— 広告を「見てもらえる」形にする
2026年の最大の潮流は、ショート動画の長尺化です。15秒で商品を見せて終わる形から、1〜3分の物語の中に商品を溶かし込む「縦型ショートドラマ」へ、視聴者の関心が移りました。理由は単純で、人は広告を避けるからです。冒頭で「これは広告です」と分かった瞬間に指が動く。物語なら最後まで見てもらえる。
発注者への意味は、KPIの置き方が変わるということです。従来の動画広告はインプレッション単価で管理しますが、ショートドラマ型は「何秒見られたか」「保存・コメントされたか」で評価します。予算を取る前に、社内の評価指標をここに合わせておかないと、成果が出ていても数字上は評価されません。
広告回避への対応 — 「広告らしさ」を減らす設計
視聴者の態度は「広告回避」と「タイパ」に二極化しています。広告色を消しつつ、無駄なく本題に入る。この矛盾を両立させる設計が要ります。私たちが実制作で繰り返しつまずくのもここで、冒頭のワンカット目に商品を出すと視聴維持率が落ちます。逆に、物語のフックで引き込んでから中盤で商品に触れると、最後まで残る。予算の何割を「広告に見えない冒頭」に投じられるかが、成果を分けます。
効果測定 — 縦型は測りやすい
縦型SNS広告は、テレビCMと違って一本ごとに数字が返ってきます。A/Bで冒頭を差し替え、どちらが最後まで見られたかを翌日に比較できる。予算を一度に張らず、小さく回して勝ちパターンを見つけてから増額する。この「回しながら決める」運用が、縦型に予算を置く最大の実利です。効果測定の具体的なKPI設計は、ショートドラマ広告のROI・KPIガイドで詳しく整理しています。
縦型ショートドラマが「予算の置き所」として合理的な理由
ここまでの3つの潮流は、いずれも縦型ショートドラマという一つの形式に収束します。物語で広告回避をかわし、縦画面で画面を使い切り、一本ごとに数字で測れる。市場データが指している「伸びている場所」と、現場が「効く」と感じる場所が一致しています。
数字でも裏づけがあります。私たちが運用してきた中では、広告費をかけずSNSのオーガミック流入だけでクリック単価30円まで下げられた事例があります。広告出稿で買う流入と違い、アカウントに積み上がった動画が資産として働き続けるため、時間が経つほど獲得単価が下がっていきます。ショートドラマ形式のSNS広告で、通常の動画広告より高いCVRを出した実績もあります。
一方で、縦型ショートドラマは「作れば当たる」ものではありません。ここは正直に書きます。冒頭3秒で離脱される、物語が面白くても商品が記憶に残らない、シリーズの2話目で視聴者が離れる——このどれか一つでも外すと、市場が伸びていても自社の一本は伸びません。予算を置くべきなのは「縦型」という枠ではなく、「離脱させない設計を回せる体制」のほうだと考えています。
始め方の全体像は縦型動画マーケティングの完全ガイドに、今年伸びる型の一覧はショート動画トレンド2026にまとめてあります。この記事は「予算をどこに置くか」に絞っているので、型そのものはそちらを参照してください。

発注者が2026年に取るべき打ち手
市場の向きが決まっている以上、判断は「やるかどうか」ではなく「どう置くか」に移っています。動画予算を組む前に、次の順で決めると迷いが減ります。
- 評価指標を先に決める:インプレッション単価ではなく、視聴維持率・保存・コメントで測ると社内合意しておく
- 小さく始めて回す:一度に大きく張らず、冒頭違いを数本作って翌週に比較する前提で予算を分ける
- 広告に見えない冒頭に投資する:制作費の配分を「商品説明」より「フックの物語」に寄せる
- 資産として積む:単発の出稿だけでなく、アカウントに動画を積んで獲得単価を下げる中長期の枠を別に取る
この4つは、どれも「縦型ショートドラマの制作」か「ショートドラマ型のSNS運用」に接続します。市場が縦型に寄っている今、動画予算の主軸をここに置くことは、トレンド追随ではなく合理的な選択です。
よくある質問
Q. 横型の動画広告はもう不要ですか? 不要ではありません。詳細な商品説明やBtoBのウェビナー用途では横型が向きます。ただし、SNSで新規の認知を取りに行くなら、伸び率が3倍近い縦型に主軸を置くのが市場の流れに沿います。
Q. 予算はいくらから始められますか? 金額は制作内容で変わるため一概には言えませんが、縦型は「小さく作って回す」ことができます。一度に大きく張るより、数本で勝ちパターンを見つけてから増やす進め方が向いています。具体的な費用感はご相談時にお伝えします。
Q. AIで作ればもっと安く済みますか? AIクリエイティブは制作コストと納期を圧縮できますが、「離脱させない設計」まで自動化できるわけではありません。ツールで速くしつつ、フックと構成は人が設計する。ここを分けて考えると、コストと成果のバランスが取れます。
Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか? 出稿型なら数日で数字が返りますが、アカウントを資産として育てる運用型は、数か月かけて獲得単価が下がっていく性質のものです。短期の刈り取りと中長期の積み上げは、別の枠として予算を分けるのが安全です。
動画予算の置き所が「縦型」に定まった今こそ、離脱させない設計を回せる制作体制が問われます。私たちはショートドラマ専門の制作会社として、企画から運用まで一気通貫で伴走しています。自社アカウントの年間再生回数は1億5,000万回を超えました。縦型ショートドラマの制作・運用をご検討の際は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
参考
- サイバーエージェント「2025年国内動画広告の市場調査」(cyberagent.co.jp・2026-08-24参照)
- AdverTimes「国内動画広告市場、2025年は8855億円 縦型広告が前年比155.9%で拡大」(advertimes.com・2026-08-24参照)