2030年にショートドラマがテレビを置き換えるかは、現在の市場成長だけでは判断できません。視聴時間、広告費、アプリの課金収入は別の指標です。縦型ドラマの売上が伸びたことを、テレビ視聴が同じだけ減った証拠にはできません。
この記事では、確認できる市場資料を読み分けたうえで、併用が進む、一部の用途が移る、成長が鈍るという三つのシナリオから企業の準備を考えます。シナリオはナイトてんしょん編集部の検討用仮説で、2030年の市場規模や発生確率を算定した予測ではありません。
現在地は、何の市場を測った数字かから読む
電通が2026年3月に発表した2025年 日本の広告費では、インターネット広告費は4兆459億円、テレビメディア広告費は1兆7,556億円と推定されています。インターネット広告費には動画以外も含まれ、ショートドラマだけの市場を示す数値ではありません。
同資料のテレビメディア関連動画広告は805億円です。これをTVer一社の広告売上や、縦型ドラマの広告費と読み替えることはできません。広告費の区分を確認してから、自社が検討する制作や配信の領域と対応させます。
一方、Sensor Towerのショートドラマアプリ市場資料は、アプリ内課金などを扱っています。広告費の調査と対象が異なるため、そのまま合算して一つの市場規模にしません。調査対象の国、ストア、期間、含まれない収益も確認します。
| 見たい変化 | 必要になる資料 | 混ぜないもの |
|---|---|---|
| 視聴時間が移るか | 同じ人・期間・範囲の利用時間 | アプリ売上の増加 |
| 広告予算が移るか | 媒体別広告費と出稿条件 | 課金収入や制作費 |
| 配信事業が成立するか | 収益、集客費、制作費など | 総ダウンロード数だけ |
| 制作受注が増えるか | 発注件数・契約範囲・継続 | 市場全体の成長率だけ |
シナリオ1:テレビと短いドラマの併用が進む
長い番組を見る場面と、移動中に短い動画を見る場面が併存する想定です。同じ人が複数の形式を使うなら、どちらかが伸びたことだけで、もう一方が不要になったとは言えません。ここでは視聴用途が増える場合を考えます。
企業の準備としては、伝える内容を形式に合わせて分ける方法があります。商品を知る入口に短いドラマを使い、詳しい機能や条件は別の動画やページへつなぐ案です。ただし、短い動画を見た人が説明ページへ進んだかは、実際に計測できる範囲で確認します。
既存のテレビCMや長尺動画を使う場合も、縦型へ切り抜くだけで同じ情報が伝わるとは限りません。人物の動作や注意書きが画面から欠けないか、音なしで理解できるかを確認します。転用の許諾や素材条件は動画の使い回しで整理しています。
このシナリオを見直す材料は、同じ対象者の利用時間や、自社の流入・問い合わせの変化です。動画の形式ごとに接触者が重複する可能性を考え、各媒体の再生数を足して到達人数にしないようにします。
シナリオ2:特定の用途で短いドラマへ移る
一部の視聴場面や広告予算で、ショートドラマが選ばれる割合が増える想定です。例えば短時間の娯楽や、商品を知るきっかけとしての利用が増える場合でも、その変化がニュース、スポーツ、長編ドラマへ同じように広がるとは限りません。
この仮説を確かめるには、単にアプリ利用が伸びた資料に加え、何から移ってきたかを示す調査が必要です。異なる年齢層や異なる調査方法の数字を並べただけでは、置き換えの量を算定できません。取れない情報は不明として残します。
企業側は、既存施策の全予算を一度に移す前に、目的を揃えた試作や配信を検討できます。新商品の認知なら、何を覚えてほしいか、どの行動へ案内するかを決めます。制作本数や尺を先に固定するより、比較できる条件と継続できる費用を整理する方が判断に使えます。
制作会社へは、短い動画で残す情報と、別のページへ引き継ぐ情報を伝えます。商品の使い方を物語で描く際も、効果や性能を架空に足さないようにします。企画書の構成で目的と確認事項を揃えると、形式の新しさだけで発注することを避けられます。
シナリオ3:集客費や供給の増加で成長が鈍る
作品数が増えても、視聴や課金が同じ割合で増えるとは限りません。制作・集客・運用に必要な費用が上がり、継続が難しくなる場合を考えます。これは特定企業の経営状態を示す説明ではなく、投資判断で備える条件です。
課金型アプリの運営、作品の制作受託、企業のSNS運用は、費用のかかる場所が異なります。アプリ運営の収益予測を、制作会社の利益率や広告主の効果へそのまま移さないでください。自社がどの役割で参加するかを決めることが先です。
企業のSNS運用であれば、制作費に加え、社内確認、出演や素材の使用、投稿管理、広告配信、分析の作業も見積もります。試作の反応が弱かった場合は、続ける本数を増やす前に、伝えたい内容と見た人の期待が合っていたかを調べます。
停止や縮小の条件は、開始前に決めておきます。例えば必要な表現を安全に再現できない、確認工程が回らない、計測の欠測が続くといった場合は、結果の評価より先に運用を整える必要があります。単発の再生数だけで継続・中止を決めないようにします。
企業の予算は、シナリオが変わっても見直せる形にする
2030年の大きな市場額を置くと、現在の制作予算まで正当化できたように見えます。しかし市場全体の伸びと、自社の動画が読者や顧客へ届くことは別の問題です。予算表には、どの条件が変われば再見積もりするかを残します。
| 計画に置く項目 | 決めておくこと |
|---|---|
| 制作する範囲 | 企画、脚本、撮影、編集、投稿、分析 |
| 利用する範囲 | 公開先、広告への転用、期間、地域 |
| 試す内容 | 一つの企画で確認したい問い |
| 比較する条件 | 対象者、配信条件、同じ長さの期間 |
| 見直す時点 | 集計が揃う日と、担当者 |
制作体制も、すべての案件を量産型へ揃える必要はありません。商品の説明に確認が多い案件と、同じ設定を継続するシリーズでは、必要な準備が異なります。役者や場所を固定すると効率が上がる可能性はありますが、表現や利用条件に合うかを先に確認します。
AIを使う場合も、生成料金だけで費用が下がるとは決めません。採用できなかった生成、素材準備、確認、修正の工数を含めて比較します。商品や人物の再現に問題がある場面は、実写や別の演出へ切り替える余地を残します。外注範囲は制作費の整理も参考になります。
将来予測を読むときの確認票
資料を企画会議へ持ち込む際は、発表日、対象地域、対象期間、指標、実績か予測かを記載します。2026年の予測は、2026年が終わる前に実績として扱わないようにします。為替換算をする場合は、採用したレートと日付も必要です。
予測値が複数あっても、対象が違えば大小を競うものではありません。アプリ課金に限った予測と、広告・制作まで含めた推計の間には範囲の差があります。数字を引用する前に調査方法へ戻り、資料で確認できない前提は補わないでください。
社内でシナリオを作る場合は、入力した仮定と計算式を残します。費用や継続率の仮定を変えると結果がどれだけ動くかを見せると、単一の売上見込みより判断に使えます。本記事はその算定に必要な根拠を揃えていないため、2030年の独自の市場額やシェアは提示しません。
よくある質問
テレビは2030年になくなりますか?
本記事で確認した広告費やアプリ市場の資料からは判断できません。視聴用途や収益の種類を分け、同じ対象の推移を確認する必要があります。
縦型ドラマ広告なら、通常の広告より効果が出ますか?
形式だけで優劣は決まりません。目的、対象、配信条件、商品への案内を揃えて比較します。視聴されたことと購入・相談があったことも分けます。
初回は何本から始めるべきですか?
試したい問い、予算、制作条件から決めます。市場予測を理由に最低本数を一般化せず、依頼先の契約条件と検証に必要な内容を確認してください。
当社のショートドラマ制作サービスでは、目的と現在の素材から制作範囲を相談できます。市場への参入形態を比べたい場合は市場規模の読み方、配信先を選ぶ場合はプラットフォームの比較もご覧ください。