受注生産グッズは、注文を確認してから製造することで、売れる数を読み違えて完成品を抱えるリスクを減らせます。ただし、イラスト制作や試作に使う費用、製造中のトラブル、購入者へ届けるまでの対応は残ります。企業の担当者が比べるべきなのは、在庫の有無に加えて、注文ごとの受取額と、販売開始から発送までに誰が何を負担するかです。注文に応じて1点から作る仕組みは、実際にピクシブの公式サービスでも提供されています。ピクシブのサービス説明

この記事で分かること

  • 期間を区切る一括受注と、1点ずつ作るオンデマンドでは、製造費と発送の管理方法が変わります。
  • 玩具市場の2015〜2025年度の統計は、個別グッズの予約数を予測する数字としては使えません。
  • 公開決算の「商品」と「前受金」を並べても、受注生産商品の利益率は算出できません。
  • 公式手数料5.6%+45円を使う仮定例では、受取額500円から残るのは427円です。
  • 固定費10万円の回収には、その条件で235注文が必要です。本文の試算機で自社の条件に変更できます。

注文を集める単位で、減らせる在庫が変わる

製造する数量をいつ確定するかまで決めると、受注生産の見積もりを比較できます。

期間限定の一括受注と、注文ごとの製造を分ける

この記事では、一定期間の注文を集めてまとめて作る方式を「期間受注」、注文ごとに製造する方式を「オンデマンド」と呼び分けます。法律上の分類を示す呼び方ではなく、発注の違いを説明するための区分です。たとえば同じアクリルグッズでも、締切後にまとまった数量を工場へ発注する場合と、注文のたびに製造サービスへ流す場合では、単価の決まり方や納品の管理方法を別々に確認する必要があります。

ピクシブは、pixivFACTORYとBOOTHを併用すると、在庫を持たず、注文に応じて1点から生産・販売できると説明しています。これは販売者が先に完成品を買い取って保管する方式とは異なります。一方、自分で工場にまとめて発注する場合の最低数量や予備品の扱いまで、このサービス説明が保証するわけではありません。ピクシブ公式説明

以下は企業が発注先へ確認する項目の比較です。すべてのサービスがこの条件で動くという意味ではなく、見積書を読むための整理として使います。

比較する点期間受注の発注で確かめることオンデマンドで確かめること
製造数量締切時の入金済み数量と最低発注数1注文から作れる対象商品
製造費数量別単価、型代、試作代1点の製造価格と販売者の受取額
予備品不良交換用を誰が何個持つか製造側の再製作・交換条件
発送一括納品後に誰が梱包するか直送の対象地域と同梱条件

完成品の保管を外へ任せても、販売条件を購入者へ説明する仕事は残ります。製造と発送を一括で委託する場合ほど、問い合わせ窓口や不良品の確認方法を、注文を受ける前に分けておく必要があります。

予約数と製造数が同じになる条件を見落とさない

仮に入金済み注文が180個で、工場の最低発注数が200個なら、発注条件を変えない限り差の20個が残ります。これは当社が設定した説明用の仮定であり、特定工場の最低数量ではありません。「受注生産」という販売名だけでは、この差を誰が負担するかは決まりません。予備品として持つ、追加販売に回す、製造数量を交渉するという選択肢ごとに、費用と販売上の説明が変わります。

同じ軸で比較 受注しても最低発注数との差は残る 項目 数量 扱い 入金済み 180個 届ける分 発注下限 200個 工場の条件 差の数量 20個 保管等が必要
最低発注数が注文数を上回る場合の例。差の20個は当社が計算した値。 説明用の仮定/特定工場の条件ではない

数量の集計では、カートへの追加、注文手続きの完了、入金完了を分けます。未入金の注文まで製造数量に含めると、購入が確定していない分にも製造費を払うことになります。どの状態で発注を確定するかを、販売システムの表示名と対応させておくと、担当者が交代しても判断がずれません。

色やサイズを選べる商品なら、合計数量だけを見ても不足します。合計では発注条件を満たしていても、選択肢ごとの最低数量がある可能性があるからです。見積もりでは「総数で判定するのか」「絵柄・色・サイズごとなのか」を確認し、その単位で注文を集計します。数が少ない選択肢を後から廃止すると購入者への説明が変わるため、販売前に成立条件を決める方が管理しやすくなります。

権利者への許諾が必要な企画では、製造数量以外に販売期間や再販売の条件も照合します。作品への関わり方を先に整理したい場合は、IPに出資する場合と利用する場合の違いから確認できます。

玩具市場の10年統計から、個別商品の売上を予測しない

市場全体が伸びても、自社が作る絵柄や商品の注文数が同じ割合で増えるとは限りません。

2015〜2025年度を同じ公表表で比較する

日本玩具協会の2026年公表表では、国内玩具市場の合計は2015年度800,593百万円、2025年度1,166,422百万円です。同じ表から中間年を抜き出すと、カテゴリーごとの変化も確認できます。下表は原資料と同じ百万円単位で、最新年度には見込み値が含まれます。国内玩具市場規模2015〜2025年度

数値を比較 10年で拡大しても受注数は別 2015年度 800,593 2020年度 824,445 2025年度 1,166,422
日本玩具協会の2026年公表表。希望小売価格ベースで、受注生産だけの市場ではない。 国内玩具市場/百万円/2025は見込み含む
年度玩具市場合計カード類ぬいぐるみ
2015800,59396,06719,513
2020824,445122,45226,314
20241,097,403302,46645,142
2025(見込み含む)1,166,422338,41462,398

単位は百万円。カード類は原資料の「カードゲーム、トレーディングカード」です。合計の伸びとカテゴリーの伸びは異なり、全体の拡大率を一律に各商品の売上予測へ掛けることはできません。

この表の金額はメーカー希望小売価格ベースで、受注生産だけの集計ではありません。流通段階での値引き後の入金額や、販売者の利益を表す数字でもありません。企画書に市場規模を載せる場合は、販売方式と価格の基準を添える必要があります。受注生産市場の大きさを示す統計として転用すると、表が答えていない問いに数字を使うことになります。

更新値と集計範囲をそろえる

同協会の注記によると、最新年度は調査企業の決算期によって見込みが含まれ、翌年度に確定します。本記事は2026年公表表の系列にそろえています。別の年に保存した速報と最新表をつなぐと、同じ年度に異なる値が並ぶ可能性があるためです。日本玩具協会の統計と資料

企業が自社の受注実績を比較するときも、同じ扱いが必要です。受付中の累計注文と、入金・キャンセルを反映した発送完了数を並べると、販売力の違いと集計段階の違いが混ざります。速報の受注数、入金済み数、発送数、返品・交換数を別の列に残せば、どこで差が生じたかを後から確認できます。

市場統計は企画を検討する背景資料として使い、初回の製造判断には自社の販売条件を置きます。販売期間、対象読者、価格、届ける時期が違う商品同士では、過去の注文数をそのまま移せません。まず似た条件の企画を探し、違う条件を明記して試算します。比較できる実績がない場合は、少量の試作や受注受付で何を確認するかを決める段階です。

「推し活市場」など名称の近い統計にも、対象や調査方法の違いがあります。推し活の市場規模を比較するときの注意点では、その分母の違いを扱っています。本記事の玩具市場と足し合わせて、新しい市場規模を作ることはできません。

企業決算では、商品在庫と前受金を別々に読む

販売前に入金を受ける事業でも、商品在庫や発送までの負担がなくなるとは限りません。

公開残高から分かることと、分からないこと

カバーの2026年3月期決算短信では、貸借対照表に「商品」と「前受金」が別々に載っています。受注生産だけの成績を示す表ではありませんが、売る物と先に受け取ったお金を分けて読む例になります。金額は百万円単位です。カバー公式IRライブラリー・2026年3月期決算短信の貸借対照表

項目2025年3月末2026年3月末
商品3,131958
前受金7,9646,758

同短信は、低回転在庫の除却・評価減を実施したことも記載しています。商品残高が減ったという事実だけから、すべて販売できたと読み替えることはできません。なお、上表から受注生産商品の在庫額、前受金の内訳、個別商品の採算は確認できません。

この残高同士を差し引いて「未発送分の利益」とする計算もできません。商品の帳簿額と前受金は、同じ注文を同じ評価基準で測った一対の数字ではないからです。自社で未発送分の収支を調べるなら、注文番号に対応する製造費、送料、手数料、返金予定額を別途集計する必要があります。

期末の残高は、その日に残った金額を示します。受注と発送の時期が変われば残高も変わるため、残高が大きいことだけで販売方式の良し悪しを決められません。自社の管理では、何月に受注した注文が何月に発送されるかまで対応させると、販売好調による増加と、出荷の遅れによる増加を切り分けやすくなります。

注文時の入金を、次の企画に使える利益と混同しない

仮に購入者から先に代金を受け取っても、工場への支払いと配送費がこれからなら、その分を残しておく必要があります。ここで見るのは、会計上の利益とは別の、支払日にお金が足りるかという問題です。この記事では、企業ごとの売上計上の判断や税務処理は扱いません。

販売計画には、購入者の決済日、販売サービスからの入金日、工場への支払日、出荷費用の支払日を並べます。購入者が決済した日に、販売者の銀行口座へ同額が入るとは限らないためです。入金予定より先に工場への前払いが来るなら、その期間を自社資金でつなぐ必要があります。

たとえば仮定として、製造費30万円を先払いし、販売サービスからの入金が翌月なら、売上見込みが十分でも、その月の支払い用に30万円が必要です。受注で数量を確定できることと、資金の立て替えが不要になることは別々に確かめます。手元資金の余裕を計算するときは、別の企画で受け取った前払い代金も、同じように未払い費用と対応させます。

初回企画では、売上見込みから費用を引いた表に加え、日付順の入出金表を用意すると判断が具体的になります。返金や再製作が起きた場合の扱いも仮定として加え、追加負担を吸収できるかを確認します。公開されていない他社の不良率を、根拠なく自社の計画へ入れる必要はありません。

手数料を引いた427円から、固定費の回収数を計算する

在庫が残らない販売でも、注文ごとに残る金額で制作費を回収できなければ赤字になります。

同じ5.6%でも、何に掛けるかが違う

BOOTHは、pixivFACTORY商品の原価と送料を手数料の対象から外し、マージンを計算対象にする仕組みを2020年の公式告知で説明しています。その後、2025年10月28日の利用料改定で固定額が45円へ変わりました。本記事ではこの二つを照合し、マージンの5.6%+45円として計算します。小数点以下は切り上げです。2020年の告知に残る22円は、現在の固定額として使いません。

本記事ではオンデマンドの例として、サービス利用料を引く前のマージンを500円と仮定します。これは商品の販売価格でも製造費でもなく、試算用に置いた受取額です。500円×5.6%+45円=73円を引くと、注文あたり427円が残ります。当社が計算した値であり、特定商品の利益実績ではありません。

さらに、イラストや試作などの固定費を10万円と仮定すると、10万円÷427円=234.19…となります。注文数は整数なので、固定費を回収する最小数は235注文です。234注文では99,918円、235注文では100,345円になることも当社が計算しました。振込手数料、税務上の調整、広告費、別途の権利使用料はこの計算に含めていません。

この例は1注文に対象商品1点、追加支援金なしという条件です。複数点をまとめた注文では固定額部分の扱いも注文内容に合わせて確認します。「1点あたり」と「1注文あたり」を同じ意味で扱うと、セット販売の計算がずれます。初期値のマージンを決めるときも、商品価格から製造費だけを引いた自己計算を、そのままサービス上の表示へ当てはめず、販売設定画面の定義と照合します。

自社のマージンと制作費で試す

下の試算機では、手数料前のマージン、固定費、注文数を動かせます。マージンは250円刻みとし、この入力範囲では5.6%を掛けた結果が整数になるため、円未満切り上げによる差は生じません。注文数を増減させ、固定費を引いた金額がゼロ以上になる条件を確認してください。初期値のマージンと固定費なら、234注文と235注文の差を試せます。

関係を整理 固定費10万円の回収は235注文 仮定の計算 結果 500円−手数料 427円 234注文の受取 99,918円 235注文の受取 100,345円
1注文1点の例。振込手数料、税務調整、別途の広告費・権利使用料は含めない。 手数料5.6%+45円/他は仮定/当社計算

1注文のサービス利用料は円

1注文の手数料後受取額は円

受取額合計から固定費を引くと円

BOOTHのpixivFACTORY発送の公式料率5.6%+45円を使用。その他の初期値は仮定です。1注文1点・追加支援金なし。振込手数料、税務調整、追加の広告費・権利使用料は含まない簡易試算です。

初期値の200注文では、427円×200注文−10万円=マイナス14,600円です。当社が計算した値であり、在庫がゼロでも固定費が残る条件を示しています。販売数だけを目標にせず、注文が少なかった場合にどこまで固定費を許容するかも先に決めます。

マージンを上げれば計算上の回収数は減りますが、販売価格が変われば購入数も変わる可能性があります。この試算機は価格による需要変化を予測しません。価格を上げた案と下げた案は、それぞれの購入数を仮定し直して比較します。同じ注文数を固定したまま受取額だけを増やすと、販売面の条件を見落とします。

自社が工場へ発注する期間受注の場合は、この式のマージンをそのまま使いません。販売額から製造費、梱包費、送料負担、販売手数料を差し引き、残る金額を作り直します。製造単価が数量で変わるなら、注文数が変わるたびに単価も更新します。コラボ企画全体の費用まで含める場合は、作品に関わる企業の費用と取り分も併せて整理すると、商品単体と事業全体の計算が混ざりません。

受注を始める前に、供給停止と返品の条件を決める

売れ残りを減らした分だけ、製造と配送の約束を守るための確認が重要になります。

完成品を持たなくても、材料や工場は止まる

BOOTHは2020年2月17日、製造工場の稼働停止を理由に、pixivFACTORY製の一部商品を在庫切れとして購入停止にする告知を出しています。これは当時の事例で、現在も同じ商品が停止しているという意味ではありません。BOOTHの製造停止に関する公式告知

この事例から考えられるのは、販売者が完成品を保管しない場合でも、供給できる状態かどうかは別に確認する必要があるということです。販売画面の在庫なしという表示が、販売者の手元で完成品を売り切った状態を必ず意味するわけでもありません。製造サービスが受付を停止すれば、商品データがあっても注文を受けられないことがあります。

日付の決まったイベントに合わせる企画では、製造予定日と到着予定日を分けます。工場から出荷される日が、購入者の手元に届く日と同じとは限りません。配送を含む期限をどこまで約束できるのか、遅れた場合の案内を誰が出すのかを先に確認します。期限に間に合うことが商品の価値になっている場合は、期間受注が適しているかも含めて検討が必要です。

複数商品を一緒に売るなら、同梱条件も購入体験に影響します。ホロライブプロダクション公式ショップの案内では、発送時期の異なる商品を同一決済で注文すると、最も遅い商品に合わせて発送するとしています。これは同ショップの条件であり、業界共通のルールではありません。公式ショップの配送に関するFAQ

キャンセル不可と、不良品対応をひとまとめにしない

同ショップの特定商取引法に基づく表記では、購入者都合の返品・交換と初期不良の対応を分けています。また、生産・製造が困難な場合のキャンセルと返金や、EU/EEA居住者に関する別の条件も記載されています。「受注生産だから返品は一切ない」と短くまとめると、この区別が抜けます。公式ショップの返品・キャンセル条件

企業の販売担当者は、自社の販売地域と条件に合わせて案内を作ります。他社の文面をそのまま貼っても、製造委託先が同じ対応をしてくれるとは限りません。購入者には交換すると案内しているのに、工場とは再製作の条件を決めていない、という食い違いがないかを確認します。

交換品を確保するなら、予備品の数量と保管期限も費用に含めます。予備品を持たず再製作で対応するなら、受付終了後でも同じ材料や仕様で作れるかを確認する必要があります。どちらを選ぶかは商品ごとの条件次第で、公開情報だけから業界共通の予備率を置くことはできません。

告知動画や商品写真の制作も、この販売条件が決まってから仕上げると修正を減らせます。当社はショートドラマの企画・制作とキャスティングをする立場です。制作現場で商品を扱う企画では、撮影に使う試作品が販売品とどこまで同じか、発売前に確認しておくと、映像と商品説明の食い違いを避けやすくなります。作品を知ってもらう映像の作り方はショートドラマの制作サービスで確認できます。

よくある質問

受注生産の採用は、在庫の有無と、企画全体の採算・納期を分けて判断します。

Q. 受注生産なら初期費用はゼロですか?

製造代の立て替えを抑えられる方式でも、画像制作や試作を外注するなら、その費用は別に確認します。本記事の計算例では、手数料前マージン500円から427円が残る条件で、固定費10万円の回収に235注文が必要でした。費用ゼロで始められる範囲と、品質を確かめるために自社が支払う範囲を分けて見積もります。試作品を作るかどうかを決める際も、販売画面のプレビューだけで確認できることと、素材や印刷の実物を見て確かめることを分けると、費用の目的が明確になります。

Q. 受注生産は在庫販売より必ず利益が出ますか?

売れ残りを抑える効果と、注文ごとの受取額を比較する必要があります。先にまとめて作る案は、単価が下がる条件があっても、売れ残る数量や保管費が増える可能性があります。受注する案は、販売後の製造期間を購入者が待てるかという条件が加わります。見積書から製造費と発送費を取り、売れた数量、残った数量、固定費をそろえて試算します。最低発注数や数量別単価は取引先ごとに異なるため、この記事では共通の相場を置いていません。

Q. 一番人気の絵柄だけを多めに作ればよいですか?

期間受注で入金済み数量が分かるなら、まずその数量を基準にします。追加販売を見込んで多めに作る分は、受注済みの分と分けた在庫判断です。SNSの反応数と有料で購入する人数は同じではないため、反応数だけを製造数へ置き換えません。再販売の許諾、販売期限、追加分の保管費まで確認してから発注数を決めます。色やサイズの選択肢がある商品では、絵柄の人気だけでは各仕様の注文数が分からないことにも注意が必要です。

まず1商品の見積書と販売条件を並べ、入金済み数量、手数料後の受取額、未払いの製造・配送費、発送予定を同じ表へ記入してください。商品を知ってもらうための映像も検討する場合は、販売期間と届けたい相手を添えて制作について相談すると、撮影日や告知時期を具体的に検討できます。別の収益構造と比べたい方は、エンタメの経済学の記事一覧から関心のある事業を選べます。