動画のテロップに使うフォントは、制作会社が普段使っているものをそのまま使うか、自社の指定フォントを渡すかで、確認する内容が変わります。指定がある場合は、フォント名だけでなく、そのフォントを動画で使える条件と、誰の契約で使うのかを発注時に共有してください。
フォントの利用条件は、配布元が示しているライセンス表示が出発点になります。無償で配布されていても、改変や再配布に条件が付くもの、ファイルへの埋め込みの扱いが決められているものがあります。読んで分からない部分は、配布元の問い合わせ先か、自社の法務・購買の担当者へ回します。
この記事は、動画制作を外注する広報・マーケティング担当者向けの発注ガイドです。2026年9月に確認した公式のライセンス文書とメーカーの公式ヘルプを主な根拠にし、そこに書かれていない運用の部分は、当社が制作現場で使っている判断案として分けて示します。個別のフォントの可否は、必ず配布元の最新の表示で確認してください。
テロップのフォントは、誰が用意するかを先に決める
見積もりの段階では「テロップあり」としか書かれていないことがあります。その状態だと、制作会社が自分の環境にあるフォントで作り、発注側は完成した画面を見て初めて書体を知ることになります。後から書体を変えると、文字数に合わせた改行や配置を作り直すことになり、修正の回数も増えます。
制作会社の手元にあるフォントで進めるとき
制作会社が普段の案件で使っているフォントで作る場合でも、候補を2つか3つ見せてもらい、テロップの見え方を確認しておくと判断が早くなります。縦型の動画では画面の幅が狭いので、線の細い書体や字間の広い書体は、屋外で見たときに読みにくくなることがあります。確認するときは、完成に近い1カットの静止画を、スマートフォンの実機で見せてもらってください。
このとき、書体の名前も一緒に聞いておきます。次の動画を別の制作会社へ頼むときや、自社でサムネイルを作るときに、同じ書体を使えるかどうかが分かるためです。当社でも、シリーズで続く案件では初回の納品時に使用フォント名を一覧で残し、担当者が変わっても同じ見た目を再現できるようにしています。書体を統一しておくと、動画とバナーを並べたときの印象がそろいます。
自社の指定フォントがあるなら、使える範囲まで渡す
コーポレートフォントを決めている会社では、「このフォントで作ってください」と指定することがあります。ただし、そのフォントを制作会社が使えるかどうかは、会社が結んでいるライセンス契約の範囲によって変わります。社内の端末で使う契約と、外部の制作会社が作業に使う場合の扱いは別に書かれていることがあるため、購買・情報システムの担当者に確認してください。
確認が終わるまでは、制作会社に作業を止めてもらうのではなく、代替の書体で構成を進める方法もあります。テロップの文字数や改行位置は書体が変わってもある程度そのまま使えるので、後から差し替える前提で設計しておけば、確認待ちで日程が崩れるのを避けられます。差し替える予定があることは、作業を始める前に制作会社へ伝えておきます。
フォントの利用条件は、配布元の表示を読んで確認する
無償で配布されているフォントにも、使い方の条件が付いています。条件は配布元ごとに違うので、「フリーフォントだから自由に使える」とまとめず、そのフォントのライセンス文書を開いて確認します。判断に迷う部分は、社内で結論を出す前に配布元の記載を引用して共有すると、後から根拠をたどれます。
商用利用の可否と、埋め込みの扱いを見る
たとえばIPAフォントライセンスv1.0では、商用・非商用の別を問わず、印刷物やデジタル・コンテンツでの利用が認められると書かれています。また、デジタル・ドキュメント・ファイルに埋め込まれたフォントが、そのファイル内の表示のみに使われる場合には、ライセンス上の義務が発生しないという特例も置かれています。IPAフォントライセンスv1.0
ここで大事なのは、条件の内容そのものより「ライセンス文書に書かれた条件を確認する」という手順のほうです。別のフォントには別の条件が書かれています。動画のテロップは映像に焼き込まれるため、フォントファイルそのものを渡すわけではありませんが、編集用データを制作会社と受け渡しする場面では、ファイルの扱いが関わってきます。どの場面の話をしているのかを区別して読んでください。
改変やフォント名の扱いに条件が付くものがある
SIL Open Font Licenseで配布されているフォントは、本やポスター、ロゴ、ウェブサイトなどでの利用ができ、利用にあたって謝辞は求められないと公式サイトに書かれています。一方で、フォントを自由に改変・再配布できる代わりに、Reserved Font Namesが宣言されている場合は、改変したものに同じ名前を使わないといった配慮が必要になります。SIL Open Font License
ロゴに合わせて文字の形を少し変えたい、字間を詰めた専用の書体を作りたいという相談は、制作の現場でときどき出ます。デザイン上の加工と、フォントファイルそのものの改変は別の話なので、どちらをしようとしているのかを制作会社と整理してください。ファイルを加工する話になるなら、配布元の条件を読んだうえで、必要なら配布元へ問い合わせます。
納品後に自社で編集するなら、その前提を先に伝える
完成した動画をそのまま公開するだけなら、フォントは映像の一部として扱われます。ところが、自社で文字を差し替えたい、別の商品名で同じ動画を作りたいという予定があるなら、編集用のデータとフォントの環境が必要になります。この予定は、見積もりを取る段階で伝えるかどうかで、納品物の内容が変わります。
編集データを受け取っても、同じ書体で開けるとは限らない
編集ソフトのプロジェクトデータには、フォントファイルそのものが入っているとは限りません。自社の端末にそのフォントが入っていなければ、文字が別の書体に置き換わった状態で開きます。受け取ったデータを試しに開いて、テロップの見た目が納品された動画と同じかどうかを、支払いや検収の前に確認してください。
同じ書体をそろえるには、自社でもそのフォントを使える状態にする必要があります。無償のフォントなら配布元から入手できますが、有償のフォントは自社の契約が必要です。編集を自社に移す予定があるなら、その費用も含めて見積もりを比べてください。編集作業の切り分け方は編集だけを外注する場合の支給素材と見積範囲に整理しています。
資料やスライドへ転用するときは、埋め込みの可否を確認する
動画から切り出した画面を社内資料や営業資料に使う場面もあります。Microsoftの公式ヘルプでは、ファイルにフォントを埋め込む機能について、すべてのTrueTypeフォントを埋め込めるわけではないと説明されています。フォントの作成者側で、埋め込み不可、プレビューと印刷のみ、編集可能、インストール可能といった設定が付けられる場合があるためです。Microsoft「ファイルにフォントを埋め込む」
これはオフィス文書についての説明で、動画ファイルの話ではありません。ただ、動画のテロップに使った書体を資料側でも使いたいときには関わってきます。資料を社外へ配る予定があるなら、埋め込みの設定と自社の契約条件を確認したうえで、配布方法を決めてください。判断が付かないときは、画面の画像として貼る方法も選べます。
見積もりと納品条件に、フォントの項目を入れる
フォントは「デザインの一部」として扱われ、見積書の項目に出てこないことがあります。費用が発生する可能性があるのは、有償フォントを新たに使う場合と、自社で編集するために同じ環境をそろえる場合です。どちらも、動画そのものの制作費とは別の話になります。
| 確認する項目 | 発注側が渡す情報 | 合意する内容 |
|---|---|---|
| 書体の指定 | 社内の指定フォントの有無 | 使う書体と候補の出し方 |
| 利用条件 | 自社契約の範囲 | 誰の契約で使うか |
| 費用 | 予算の上限 | 有償フォントの負担 |
| 納品物 | 自社で編集する予定 | 編集データと書体名の記載 |
| 転用 | 資料・SNSへの使い回し | 使える範囲の確認 |
| 修正 | 差し替えの想定回数 | 文字修正の受付方法 |
有償フォントの費用を、誰が持つかを決める
制作会社が契約しているフォントサービスの中から選ぶ場合と、発注側の指定で新たに購入する場合では、費用の持ち方が変わります。制作会社側の契約で使うなら、その契約が外部向けの制作物に使える内容かどうかを確認してもらいます。発注側が購入するなら、契約者は自社になるので、次回以降も同じ書体を使い続けられます。
継続的に動画を作る予定があるなら、後者のほうが管理しやすいことがあります。ただし年ごとの更新が必要な契約もあるため、社内で誰が更新を管理するかを決めてから買ってください。1本だけの制作で終わる可能性が高いなら、制作会社側の環境にある書体から選ぶほうが手早く進みます。
納品物の一覧に、使用フォント名と入手元を残す
納品時の書類に、使ったフォントの名前と入手元、利用条件の確認日を残しておくと、次の制作のときに同じ確認を繰り返さずに済みます。当社では、シリーズで継続する案件の申し送りに、テロップの書体と大きさ、色、縁取りの設定をまとめて記録しています。担当者が交代したときに、見た目が少しずつ変わっていくのを防ぐためです。
記録を残す先は、納品データのフォルダでも、社内の共有資料でも構いません。動画ファイルとは別の場所に置くなら、どこに置いたかを納品書か引き継ぎメモに書いておきます。納品物全体の確認の進め方は動画制作の納品データと検収チェックにまとめています。
読みやすさは、書体だけで決まらない
フォントを選んだあとも、文字の大きさ、1行の文字数、背景とのコントラストで見え方は変わります。特に縦型の動画は、スマートフォンの画面の中でさらに小さく表示されることがあるため、編集画面で読めても実機では読みにくい、という差が出ます。確認は必ず実機で行ってください。
1行の文字数と改行位置を、撮影前に決める
テロップの文字数は、話し言葉をそのまま入れると長くなりがちです。制作の現場では、1行に入れる文字数の上限を先に決め、そこに収まるように言い換えます。長い一文を2行に折り返すより、短く言い切って2枚に分けたほうが読みやすくなる場面もあります。台本の段階で決めておくと、編集時の判断が早くなります。
改行の位置も、意味の切れ目に合わせます。読点の位置で機械的に折り返すと、意味のまとまりが途中で切れて、読む速度が落ちます。テロップの原稿を誰が作るか、修正の最終確認を誰がするかは、動画字幕を外注するときの決め方で扱っている分担の考え方と同じように整理できます。
背景に重なる文字は、明るさの変化を見る
屋外や店内で撮影した映像では、カットの途中で背景の明るさが変わります。白い文字が明るい壁に重なると読めなくなるので、縁取りや帯を敷くかどうかを、カットごとに確認します。当社の制作でも、色の指定は最初に決めますが、実際の映像に乗せてから調整することが多く、この確認を飛ばすと差し戻しになります。
確認は、動画を一時停止して1枚ずつ見るだけでは足りません。再生した状態で、文字が出てから消えるまでの間ずっと読めるかを見ます。読めない箇所があったときは、「見にくい」とだけ伝えず、時間の位置と、そのときの背景を添えて共有してください。修正依頼の書き方は動画制作のリテイクを減らす依頼方法が参考になります。動画の企画から相談したい場合は、ナイトてんしょんの動画制作サービスもご覧いただけます。
動画テロップのフォントについてよくある質問
Q1. フリーフォントを動画のテロップに使っても問題ありませんか?
配布元が示しているライセンス表示を確認してください。無償で配布されていても、条件は配布元ごとに違います。商用利用の可否、改変の扱い、ファイルへの埋め込みの扱いが書かれているので、動画で使う場面に当てはまるかを読んで判断します。
Q2. 制作会社が使うフォントの費用は、見積もりに入っていますか?
見積書に項目がなければ、制作会社に確認してください。制作会社が契約しているサービスの中から選ぶ場合と、発注側の指定で新しく購入する場合で、費用の持ち方が変わります。自社で購入するなら、契約者と更新の管理者も決めておきます。
Q3. 納品後に自社でテロップを差し替えられますか?
編集用データと、同じ書体を使える環境の両方が必要です。データを受け取っても、自社の端末にフォントが入っていなければ別の書体で開きます。差し替える予定があるなら、見積もりを取る段階で伝えて、納品物に含めてもらってください。
Q4. コーポレートフォントを制作会社に渡してよいですか?
自社が結んでいるライセンス契約の範囲を、購買や情報システムの担当者に確認してください。社内の端末で使う契約と、外部の制作会社が作業に使う場合の扱いは別に書かれていることがあります。確認が終わるまでは代替の書体で構成を進める方法もあります。
Q5. 動画のテロップと資料で同じ書体を使えますか?
書体の入手元と、それぞれの利用条件を確認します。オフィス文書へフォントを埋め込む場合は、フォント側の設定で埋め込みが制限されることがあります。社外へ配る資料なら、配布方法まで含めて確認するか、画面の画像として貼る方法を選びます。
見積依頼には、書体の指定と編集の予定を添える
当社がこの記事で提案しているのは、使ったフォントの名前・入手元・条件を確認した日付を、納品物と一緒に残す方法です。次の動画を作るときや担当者が交代したときに、同じ確認をやり直さずに済みます。この方法で再生数が伸びるわけではありませんが、シリーズで作り続ける案件では、見た目のばらつきと差し戻しが減ります。
依頼のメールには、社内の指定フォントの有無、自社で編集する予定、動画以外への転用の予定を書き添えてください。決まっていない項目は、決める担当者と期限を添えて相談すれば、確認待ちのまま日程が動かなくなるのを避けられます。
ナイトてんしょんは、ショートドラマの企画・制作とSNS運用を行っています。テロップの見せ方を含めて構成から相談したい場合は、制作の相談フォームから、掲載する媒体と社内のデザイン規定をお知らせください。使える書体の範囲と必要な確認を、最初の打ち合わせで一緒に整理します。
参考にした資料(2026年9月21日確認)
- IPAフォントライセンスv1.0(一般社団法人 文字情報技術促進協議会・ライセンス本文)
- SIL Open Font License(公式サイト)
- Microsoft「ファイルにフォントを埋め込む」(公式ヘルプ)