ショートドラマで心の声を入れるなら、まず「相手には言わないが、視聴者には伝えたいこと」を決めます。画面で分かる動作を声で繰り返すより、口にした台詞と本音の食い違いを見せたい場面で検討すると、役割がはっきりします。
ただし、心の声を入れれば面白くなる、再生数が伸びるとは限りません。出演者の表情や次の行動で伝わるなら、声を足さずに進める案もあります。この記事では企業のPRドラマを企画する担当者向けに、台詞・動作・心の声の使い分けから、台本への指定、収録と字幕の確認までを説明します。台本例はすべて当社が説明のために作った架空例です。
心の声が必要かは、誰に伝える情報かで決める
ここでは、登場人物が口に出さずに考えている内容を、視聴者に聞かせる演出を「心の声」と呼びます。場面や状況を外から説明する語りとは役割を分けて考えます。脚本では略号を使うこともありますが、制作チームで意味が共有できる表記を先に決めてください。
最初に確かめたいのは、その言葉を場面の相手が聞いているかどうかです。相手に伝えるための台詞なら、その返答や反応を撮れます。心の声なら、相手がその内容に直接答えると、聞こえていないはずの情報を知っているように見えます。勘が働いたのか、表情を読んだのか、別の理由があるなら、その手掛かりを画面に残す必要があります。
| 伝えたいこと | 使う手段の候補 | 確かめる点 |
|---|---|---|
| 相手への頼み事 | 口に出す台詞 | 返答がつながるか |
| 言えない本音 | 心の声 | 相手は知らないか |
| ためらう気持ち | 動作・表情 | 画面で伝わるか |
これは選び方の例で、どれか一つだけに絞る決まりではありません。例えば「大丈夫です」と言いながら手が止まる場面なら、台詞と動作の組み合わせだけでも不安を示せます。さらに心の声を加えるなら、視聴者に新しく何が伝わるのかを言葉にしてみてください。
人物の関係がまだ決まっていない場合は、声の演出より先に、誰が誰に何を求めているかを整理します。ショートドラマの脚本構成では、物語全体を組み立てる視点を確認できます。
架空の台本で、説明と本音の違いを比べる
以下は、私たちがこの記事の比較用に作った台本です。舞台は会社の会議室。新人のユウが企画書を先輩のミナに渡す場面とします。ユウは意見を聞きたい一方で、否定されるのが怖くて、先に逃げ道を作っています。
まず、画面に映ることをそのまま言い直す案です。
ユウ、企画書を差し出す。 ユウ「まだ下書きなんですけど」 ユウの心の声「私はいま、先輩に企画書を渡している」 ミナ、企画書を受け取る。
このままでは、差し出す動作に説明が重なります。作品の語り口としてあえて使う余地はありますが、短い場面の中でユウの迷いを知ってもらう目的には、別の言葉を試せます。
ユウ、企画書を差し出す。 ユウ「まだ下書きなんですけど」 ユウの心の声「三日かけた。下書きってことにしておこう」 ミナ「最初の一行、私は好き」 ユウ、引っ込めかけた手を止める。
後の案では、口では下書きと言いながら、実は時間をかけていることが視聴者に分かります。ミナは心の声への返事をせず、目の前の企画書について話しています。最後の動作は、ユウが少し安心したのか、もっと読んでほしくなったのかを演じる余地として残します。
ここで「うれしい。安心した」とさらに心の声を足すかは、演技と編集を見て判断します。何もかも説明すると、視聴者が表情から受け取れる部分も減ります。人物が感じたことをすべて言わせる必要はありません。
一方、心の声を使わない案も作れます。企画書を渡した手が離れない、受け取られた直後に言い訳を足す、といった動作や台詞に置き換えて、同じ狙いが伝わるか比べてください。台詞そのものを直す手順は不自然なセリフの修正も参考になります。
台本には、声と画面の対応を残す
台本で「心の声」と書くだけでは、録音するタイミングや、声が流れている間の画面が決まりません。誰の声か、どの動作に重ねるか、相手が何を知っているかを、台詞とト書きで分けて残します。
先ほどの場面なら、「企画書を差し出したあと、ユウの手元に心の声を重ねる」「ミナは企画書を読んでから返事をする」と書けます。これは一つの演出案で、必ず手元を撮るという指定ではありません。表情で見せる案を採るなら、必要な表情と、編集でどこまで使うかを相談します。
| 台本に残すもの | 記載例 | 確認する担当 |
|---|---|---|
| 声の種類 | ユウの心の声 | 脚本・演出 |
| 重ねる画面 | 手が離れる直前 | 演出・撮影 |
| 相手の知識 | 三日かけたとは知らない | 脚本・出演者 |
時間を固定する前に、声に出して映像の動作と合わせます。早口にすれば尺に入るとしても、それが人物の本音として聞こえるかは別です。心の声を言い終えるまで動作が不自然に止まるなら、言葉を減らす、画をつなぐ、声を始める場所を変えるといった案を試します。
同じ作品で複数人の心の声を使う場合は、切り替わった人物が分かる画や表示を検討します。台本上の人物名だけで視聴者に伝わるわけではありません。話者が曖昧なまま進むなら、一人の視点に寄せる案も含めて見直してください。
商品説明を心の声へ移す前に確認する
PRドラマでは、登場人物の口から説明すると不自然だからと、商品の説明をすべて心の声に移したくなることがあります。しかし、声の種類を変えても、人物がその場で考える理由のない説明は残ります。
例えば、主人公が初めて触った道具について、まだ使っていない機能まで詳しく心の中で列挙するなら、なぜ知っているのかを考えます。購入前に調べていた人物なのか、使い方を教わったあとか。場面の前提を変えるか、手元で見せられる情報を分けるかを検討してください。
確認するのは、人物の実感として言う言葉と、商品について事実として伝える説明です。「これなら私にもできそう」という架空の人物の感想と、「誰でも必ずできる」という保証のような表現は、同じ扱いにできません。心の声にしたから、商品情報の確認が不要になるわけではありません。
商品担当者には、音声だけでなく、そのときに映る商品、字幕、条件の表示をまとめて渡します。まだ確認していない性能や利用条件は、台本の段階で保留と明記します。広告として何を残すか整理する際は、ショートドラマ制作のサービス内容と照らして、脚本・撮影・確認の担当範囲を相談できます。
仮の声を置いて、収録と字幕を確かめる
撮影前に短い仮音声を作ると、心の声が何秒かかり、どの画面に重なるかを試せます。仮音声をそのまま完成版へ使うかどうかは別途決めます。担当者の仮読みと出演者の演技では、間や速さも変わるためです。
操作の一例として、AppleのiMovieユーザガイドは、iPhoneでムービープロジェクトへアフレコを録音し、確認・録り直しをする手順を案内しています。ここで必要なのは特定ソフトの採用ではなく、画に声を合わせた状態を関係者が確認できることです。
本番収録では、台本の版、場面、役名、採用するテイクを区別して残します。言葉だけを切り出して録る場合も、直前の台詞や相手の反応を共有して、場面に合う読み方を相談します。依頼する音声の仕様や修正条件はナレーション収録の依頼方法で別に確認できます。
字幕も、台詞と心の声の区別が必要です。色の違いだけに頼らず、必要な場面では「ユウの心の声」のような短い表示や、画面内での一貫した見せ方を試します。全行に長いラベルを付けて、映像を見る場所がなくならないかも確認してください。
YouTubeの字幕追加の案内では、字幕ファイルや手入力などの方法が示されています。また、自動字幕の説明では、発音や雑音などによる誤りへの確認が求められています。台詞の文字起こしが合っていても、それが心の声かどうかまで意図どおりに伝わるとは限りません。完成した映像を音あり・音なしの両方で見て、誰の言葉として受け取れるかを確かめます。
公開前は、声を外した版とも比べる
試写では、心の声を入れた版だけで完成と決めず、一度その声を外した状態も見ます。外すと人物の目的が分からなくなるのか、それとも表情と台詞で十分なのかを比較すると、残す理由を説明しやすくなります。
確認を頼む相手には、先に答えを教えず「誰が何を隠しているように見えたか」「相手はどこまで知っていると思ったか」を聞きます。人数の少ない社内確認で好評だったことを、一般の視聴者への効果が証明されたとは扱いません。理解が分かれた場所を探し、修正するための確認です。
公開後も、視聴維持率が変わっただけで心の声の効果と決めないでください。題材、出演者、尺、公開時刻、配信先なども変わっていれば、理由を分けきれません。比較するなら、何を変更し、どの期間のどの指標を見るかを先に残します。動画広告のABテストでは、比較条件の作り方を確認できます。
制作を相談する際は、伝えたい商品情報、現在の台本、心の声を入れたい場面、迷っている理由をそろえると検討しやすくなります。台本が未完成でも、制作相談で企画段階からお話しいただけます。
心の声についてよくある質問
心の声は必ず録音したほうがよいですか?
必須ではありません。台詞と表情だけで人物の本音が伝わる案もあります。まず仮音声を重ね、声を外した版と比べて、何を伝えるために残すか判断してください。
台本では「M」と書けば伝わりますか?
制作チームがその意味を共有していれば略号を使えますが、初めて参加する人にも通じるとは限りません。台本の冒頭で凡例を示すか、「ユウの心の声」のように書き、口に出す台詞と区別してください。
相手役は、心の声の間にどう動けばよいですか?
心の声を聞いた反応ではなく、その場で見聞きできる情報に基づいて動きます。書類を読む、返事を待つなど、その人物がしていることを決めます。超能力などの設定で聞こえる作品なら、その前提を別途共有します。
心の声にエコーをかける必要はありますか?
固定の決まりとしては扱わず、作品の音と画に合わせて検討します。加工を強くすると言葉が聞き取りにくくなることもあるため、区別できるかと聞き取れるかを別々に確認します。