ショートドラマの脚本は、「誰が、何に困り、どう動いた結果、何が変わるか」を整理するところから始めます。短い尺に情報を詰め込むより、映像で見せることとセリフで伝えることを分けると、撮影できる台本に近づきます。
よく使われる「3秒フック」は、冒頭を見直すための目安です。必ず3秒以内に事件を起こす、人物を3人以下にする、といった共通の成功条件ではありません。この記事では、架空の脚本例を使い、初稿から読み合わせ、公開後の改善までを具体的に説明します。バズや一定の視聴完了率を保証する型はありません。
最初に、結末までを一文で書く
ログラインは、物語の要点を短くまとめた文です。「感動する家族の話」だけでなく、主人公が何をした結果、何が変わるかを書きます。結末が決まらなければ、複数の案を並べて比較しても構いません。
ナイトてんしょん編集部が作成した練習用の例を示します。実際の作品や顧客事例ではありません。
忘れ物をした新人が、先輩に黙って取りに戻ろうとするが、状況を伝えたことで同僚の助けを得て、次は先に相談しようと決める話。
この文なら、忘れ物、黙って戻ろうとする判断、相談による変化を描きます。新人の出身地や職場の歴史などは、その選択に関係しなければ省けます。テーマは「相談の大切さ」でも、登場人物がその言葉を説明するだけで終わらせないようにします。
企業PRで使う場合は、紹介する会社やサービスが実際に提供している内容を確認します。採用向けなら、理想の職場像を描くために、存在しない制度や働き方を作らないことも必要です。企画書の構成では、制作前に共有する情報を整理しています。
冒頭のフックは、状況と疑問を一緒に見せる
「何が起きたのだろう」と思わせる場面でも、誰の何が問題なのかが全く分からないと、物語に入れません。大声や物の破壊だけを置くのではなく、続きを見ることで分かることを用意します。
同じ話の冒頭を、2案で比べる
前の練習例なら、次のような書き出しが考えられます。
| 案 | 冒頭で見せるもの |
|---|---|
| 説明から入る | 新人が「今日は大切な仕事の日で」と話し始める |
| 行動から入る | 新人が空の鞄を探り、時計と出口を見る |
行動から入る案では、次のセリフを「先輩、少しだけ外に出てもいいですか」にすると、何かを隠している状況が生まれます。ただし、必要な道具が鞄にないことを観客が理解できる画がなければ、単に帰りたい人にも見えます。台詞だけでなく小道具や視線も合わせて設計します。
説明が必要な作品もあります。冒頭の情報を短くした結果、人物の関係が不明になるなら、呼びかけや画面内の物で補います。最初の数秒だけを切り離して評価せず、その後の展開と約束が一致しているかを確認してください。
TikTok Japanの公式記事でも、脚本や短尺映像の考え方が紹介されています。制作者の表現上の助言として読み、ランキングの数値基準とは分けて使います(TikTok Japan公式・脚本の書き方)。
構成は、場面の因果関係を先に作る
「導入は何秒、展開は何%」と固定する前に、場面同士がつながっているかを確認します。練習用の新人の話なら、次の順に整理できます。
| 場面 | 次の場面につながる理由 |
|---|---|
| 道具がないと気づく | 黙って取りに戻ろうとする |
| 先輩に呼び止められる | 隠すか相談するか迷う |
| 状況を伝える | 同僚が代わりの道具を探す |
| 一緒に準備を終える | 次は早く相談しようと考える |
同僚が突然すべてを解決すると、新人の行動が結末に関係しなくなります。相談したことで助けを求められた、と分かる順番にします。反対に、新人の判断を強調したいからといって、先輩を必要以上に悪人として描く必要もありません。
意外な結末にする場合は、後から見返すと納得できる手掛かりを置きます。どんでん返しを入れなくても、人物の態度や関係が変われば結末になります。三幕構成や終わり方の比較は脚本・構成術で詳しく扱っています。
尺は読み合わせと試写で調整する
セリフを読んだ時間だけでなく、人物が動く時間、反応を見せる間、字幕を読む時間を含めて確認します。長い場合は、話す速度を上げる前に、同じ内容の説明が重複していないか見直します。
配信先の上限と、作品に必要な尺は別の判断です。YouTubeでは条件に合う最大3分の動画がショートとして分類されますが、すべての作品を3分にする必要はありません(3分間のYouTubeショートの公式説明、2026年9月26日確認)。他媒体にも公開する場合は、各投稿先の現行仕様と音源の利用条件を確認します。
セリフとト書きを、別の役割にする
セリフは人物が口にする言葉、ト書きは行動や表情、場面などの指示です。「すべてをセリフで説明する」という決まりはありません。画で分かることを言葉でも繰り返していないか確認します。
練習例の「私は必要な道具を忘れたので、今から家に取りに戻ろうと思っています」は、目的が分かる一方で説明的です。「すみません、道具を忘れました」と伝え、視線や鞄の中身で迷いを見せる方法もあります。短くするだけで、何を忘れたか伝わらなくなる場合は必要な情報を戻します。
| 見直す点 | 確認する質問 |
|---|---|
| 情報 | 観客が知らない必要なことを伝えているか |
| 人物 | この立場の人が、この相手に言う言葉か |
| 行動 | セリフの後で何かが変わるか |
| 重複 | 映像や直前のセリフと同じ説明ではないか |
一律の文字数上限は置きません。読み合わせで言いにくい箇所や、字幕が読みにくい箇所を見つけて直します。沈黙も、相手の反応や判断を見せる時間として使えます。一定の回数を入れること自体を目標にしないでください。
撮影できる形にする台本例
以下も当社による練習用の台本です。撮影場所、出演者、小道具などに合わせて調整する前提で使います。
場面:職場の準備室・朝
新人が鞄を開け、内ポケットまで探す。空いた道具入れを見る。
新人「先輩、少し外に出てもいいですか」
先輩「どうしたの?」
新人が鞄を閉じかけ、手を止める。
新人「道具を忘れました。取りに戻ります」
先輩「代わりがあるか、一緒に見よう」
二人が棚を探す。同僚が予備の道具を渡す。
同僚「戻ってきたら、ここに置いてね」
新人がうなずき、準備台へ向かう。
この例では、人物の気持ちを「安心した」とだけ書かず、手の動きや相手への返答で表現します。ただし、ト書きで演技を細かく固定しすぎず、読み合わせで演者と相談できる余地も残します。
読み合わせでは、直す理由を台本へ戻す
練習用の新人の話を初めて聞いた人が「勝手に帰ろうとした」と受け取った場合、必要な道具を取りに戻る意図が届いていない可能性があります。この場合は、台詞を強くする前に、空の道具入れを見せるカットがあるかを確かめます。次の表は、練習例に対する修正メモです。
| 聞き手の受け取り方 | 台本で見直す箇所 |
|---|---|
| 何を忘れたか不明 | 道具入れと視線 |
| なぜ隠すか不明 | 言いかけて止まる反応 |
| 助けが突然に見える | 相談から探索へのつながり |
作者が後から口頭で説明した内容は、台詞・動作・小道具のどこに戻すかを決めます。演者の表情だけに必要情報を任せず、書いた意図と初見の理解を比べます。映像になった段階の確認は演出と視聴データの見直しに分けてあります。
制作チームに渡す情報
脚本の冒頭に、対象者、公開先、想定尺、企画の目的、今回の結末を添えます。場面ごとに場所、時間帯、登場人物、必要な小道具を整理すると、撮影できるか確認しやすくなります。
音が物語の意味を変える場合は、その役割を書きます。たとえば着信音に気づいて行動する場面なら、いつ鳴るかが重要です。単に雰囲気を付ける音楽は、編集担当と相談して決める方法もあります。使用予定の音源は、公開先と広告利用の有無に合う許諾を確認します。
ジャンルは、描きたい体験で選ぶ
ジャンルごとの「平均完了率」や星の評価では、個別の企画の良し悪しを判断できません。誰にどんな場面を見せたいかを決めてから、表現方法を選びます。
| 描きたい体験 | 脚本で確認すること |
|---|---|
| 日常の共感 | 抽象的な悩みを具体的な場面にしているか |
| 恋愛のためらい | 言葉と行動の違いが伝わるか |
| 逆転の納得感 | 結末につながる手掛かりがあるか |
| サスペンスの疑問 | 隠す情報と必要な情報を分けているか |
| コメディのずれ | 人物が何を勘違いしているか分かるか |
人物の数も、関係が理解できるかで判断します。同じ役割の人物をまとめると分かりやすくなる場合はありますが、4人以上なら失敗すると決めつける必要はありません。
初稿から公開後まで、修正する順番を決める
まず物語のつながりを確認し、その後にセリフと尺を調整します。誤字だけを直しても、主人公の行動が結末につながっていない問題は残ります。
読み合わせでは、初めて台本を見た人に「何が起きた話か」を説明してもらいます。作者が補足しなくても伝わった部分と、説明が必要だった部分を分けます。簡単な映像を作ったら、音声ありと字幕中心の両方で、意味が伝わるかを確認します。
公開後の離脱やコメントは、次の仮説を作る材料です。尺、題材、配信条件が違う作品の完了率を、そのまま脚本の優劣として比較しません。「ここで離れたからセリフが悪い」と即断せず、画や音、前後の情報も見直します。制作工程のガイドも合わせて確認してください。
ナイトてんしょんへ相談する場合は、初稿、参考にした作品、対象者、公開先、撮影条件を共有してください。制作サービスと制作実績で対応内容や表現を確認できます。
よくある質問
必ず60秒以内にすべきですか?
公開先の仕様と、作品に必要な内容で決めます。短くするために必要な説明を落としたり、上限まで引き延ばしたりしないようにします。
初心者は何時間で書けますか?
題材、調査、撮影条件、修正回数で変わります。完成時間を固定せず、要約、初稿、読み合わせ、修正の各工程に時間を確保します。
シリーズの初話は、完結させないほうがよいですか?
その話で描いた問題を解決し、次の問いを残す方法もあります。結末を毎回先延ばしにすることと、続きへの関心を作ることは別です。
AIで作った脚本をそのまま使えますか?
出力を初稿として使う場合も、事実、権利、人物の一貫性、映像で実現できるかを確認します。実在の人物や顧客について、確認できない出来事や発言を作らないようにします。