動画のナレーションを依頼する前に、読んでほしい原稿、読み方、声を入れる映像、使う場所を揃えます。声の候補を選ぶときは、商品名や最後の呼びかけを含む一節で試す。本収録へ進む前に、その試し読みで何を承認するか、原稿変更や読み直しをどこまで見積もりに含めるかを決めてください。

「落ち着いた声で」と伝えても、語尾の強さや会話との距離感まで同じイメージになるとは限りません。企業紹介を読み上げる声と、ショートドラマの人物が胸の内を語る声では、映像との合わせ方が変わります。先に決めたいのは、その声に何を担ってもらうかです。

本記事は、動画制作を外注する担当者向けの依頼手順を提案します。金額や無料修正回数を業界の標準として決めつけず、今回の発注内容を確かめる形にしました。AI音声の公式資料は2026年9月13日に確認しています。翻訳や外国語への吹き替えは動画の多言語化、出演者そのものの選定は出演者の選び方で扱います。

声を頼む前に、映像の中での役割を決める

関係を整理 声の役割から、確認する点を選ぶ 声の役割 確認する点 商品説明 名前と条件の読み 心の声 人物と演技の方向 本人の体験 本人の言葉と意図
今回の依頼で確認点を決めるための提案です。

商品説明と、登場人物の心の声を分ける

まず台本の声の部分に、誰が誰へ話すのかを書き添えます。画面の外から視聴者に商品を説明するのか、登場人物の心の声なのか、社員本人の体験を語るのか。たとえば「これなら続けられる」という同じ文でも、商品を勧める説明と、人物が自分で納得する独り言では読み方を検討する基準が違います。この例は依頼条件を考えるための想定で、当社の実案件を紹介するものではありません。

声で補う情報も絞ります。画面に商品名が出ている間に、同じ名前を読ませる必要があるか。人物の表情を見せたい場面で、説明を重ねる必要があるか。判断に迷ったら、声を入れる案と、映像とセリフだけで伝える案を制作会社に相談します。ナレーションの量を決めると、誰に何を頼むかも整理しやすくなります。

社員・ナレーター・合成音声を同じ原稿で試す

社員の声を使う案は、本人が話す意味を残したい場面で検討できます。その場合は、担当業務と収録予定の調整、原稿を変更したときの追加収録、公開後に使い続ける範囲まで確認します。プロのナレーターを依頼する案では、候補の声質に加えて、演技や読みの指示をどう伝えるか、立ち会って確認できるかを相談してください。いずれも採用だけで仕上がりが確定するわけではありません。

合成音声を検討する場合も、商品名や数字が入る実際の原稿で聞き比べます。人の声を自動的に安価・高品質と比較できる一律の基準は置かず、読みの調整、利用条件の確認、映像との合わせ込みを含めた作業を比べる。本記事では、声の制作方法を決める前に同じ短い原稿を試し、社内の確認担当が読み方と用途を承認する手順を勧めます。

原稿には、文字と読み方の両方を渡す

商品名・数字・略語の読みを確定する

画面に出す文字と、口で読む表現を別の欄にします。英字の商品名はカタカナ読み、型番は一文字ずつ読むか名称として読むか、数字は桁の読み方まで指定する。単語の音の上がり下がりも決まっている場合は、発注側で短い参考音声を用意すると、文字だけで伝えにくい箇所を示せます。参考音声は読みの指定用か、完成品にも使用してよい素材かを明記してください。

たとえば下の表は、架空の製品「AB-20」を説明する原稿の整理例です。制作会社に製品名の正解を推測してもらう必要はありません。商品担当が読む内容を確定し、映像担当が画面上の表記と突き合わせます。略語を正式名称へ言い換えるときは、字幕も同じ意味になっているか確認します。

原稿の記載例読みの指定例決める担当
AB-20エービー・にじゅう商品担当
3営業日さんえいぎょうび商品担当
SNSエスエヌエス広報担当
2026年版にせんにじゅうろくねんばん商品担当
詳しくはこちら語尾を強く押さず、案内として読む演出担当と発注側

原稿の版と、読む範囲を明記する

原稿には版番号と更新日を付け、画面説明や演技指示を読み上げ本文から分離します。「少し間を空ける」という指示まで音声に入る失敗を防ぐため、どの列を読むかを示してください。社内で修正した原稿が複数あるときは、収録用の正本を一つ決め、変更履歴を添えて制作会社へ渡します。口頭で決めた商品名の読み方も、収録用原稿へ戻して記録します。

VOICEVOXの公式Q&Aでは、単語の読みを辞書登録で変更する方法を案内しています。ただし、辞書があることだけで原稿全体の読みが確認済みになるわけではありません。生成した音声を最後まで再生し、意図した読みになっているかを確かめます。参照:VOICEVOXの読み方に関するQ&A

試し読みは、実際の映像に合わせて確認する

流れをつかむ 本収録の前に、読み方を固める 1 原稿を渡す 版・読み・用途 2 一節を試す 実際の映像に合わせる 3 読み方を承認 原稿と声の方向を記録 4 本収録へ 変更時の扱いも合意
試し読みの有無・費用は個別に確認します。

声のサンプルから、本稿の一節へ進む

ナレーターのボイスサンプルや合成音声の試聴は、候補を絞る材料として使います。その後の試し読みでは、今回の原稿から判断が難しい一節を選びます。商品名、息継ぎの位置が分かれそうな長文、最後の案内文を含めると、社内で意見が割れそうな点を先に相談できる。試し読みの対応可否、費用、候補数は発注前に確認してください。

確認の言葉も具体化します。「もっと明るく」だけでは、話す速さを上げる、語尾を上げる、笑いを含ませるといった複数の読みが考えられます。「冒頭は会話の続きとして入り、最後の商品名だけ聞き取れる強さにする」のように、箇所と変えたい点を指定しましょう。試し読みで採用した声、読みの方向、承認した原稿版を記録し、本収録の前提にします。

尺を固定するなら、間と映像の切り替わりを見る

原稿の文字数だけで完成音声の長さを確約せず、仮の読みで映像と合わせます。人物の反応を待つ間、商品を見せる時間、最後の案内を聞き取る時間を含めて確認する。尺が決まっている場合は、収録前に原稿を減らすか、映像の配分を変えるかを制作会社と決めます。速度だけを上げて収めた案は、商品名や条件が聞き取りにくくなっていないかを確かめてください。

VOICEVOXの公式操作ガイドには、話速や抑揚などの調整方法が載っています。こうした機能は調整の手段です。どの設定を使うかは、原稿と映像を合わせた音声で判断します。声だけを承認した段階と、BGMやセリフを含めた完成動画を承認した段階を分けて記録してください。

見積もりでは、収録と動画への組み込みを分けて確認する

ナレーター料に何が含まれるかを聞く

声の収録を依頼した費用に、原稿の整理、スタジオ、録音担当、音声の編集、映像との同期まで含まれるかを確かめます。ナレーターを直接手配する場合と、動画制作会社に一括で頼む場合では、発注側が取りまとめる作業が変わる。金額欄だけを比べると、誰も担当していない作業が残り得ます。まず依頼範囲を揃えて比較してください。

声を入れた完成動画だけを受け取るのか、声だけの音声ファイルも受け取るのかも先に決めます。再編集用に必要なら、BGMを混ぜない音声、採用テイクの一覧、ファイル名と原稿の対応を依頼します。元の録音や未採用テイクが当然に納品されると考えず、契約と見積もりで範囲を確認します。詳しい受領確認は納品データのチェックへ進んでください。

見積もりの項目発注前に確かめること
声の候補出し候補数、試し読みの有無
原稿整理読みの確認、文章調整の担当
本収録場所、収録方法、立ち会いの可否
音声編集不要部分の除去、採用テイクの整理
映像との同期どの映像版に合わせるか
音量の調整セリフ・BGMを含めた確認範囲
納品ファイル完成動画、声のみ、元録音の範囲
利用範囲掲載先、広告利用、期間、別動画への転用
修正・追加収録回数、対象、原稿変更時の扱い

読み間違いと、承認後の原稿変更を区別する

渡した原稿と異なる読み、事前に指定した商品名の読み違い、発注側が承認後に文言を変える場合を、同じ修正として扱うかは確認が必要です。「修正込み」とだけ書かれていたら、対象と回数の数え方を聞いてください。指摘をまとめて一回とするのか、収録の機会ごとか。立ち会い中の調整と、納品後の再収録も分けて確認します。

原稿変更が決まったら、変更箇所と前後の文を渡します。単語だけを差し替えるか、文ごと読み直すか、映像も調整するかは仕上がりを見て相談する。再収録の日程と再編集の時間を含め、公開日に間に合う案を決めましょう。具体的な伝え方は動画制作の修正依頼でも扱っています。無料範囲や標準回数は、個別の見積もりに従います。

AI音声は、選んだ声と生成時の利用条件を残す

商用利用とクレジットの条件を確認する

VOICEVOXのソフトウェア利用規約は商用・非商用の利用を認め、各音声ライブラリの規約を守ることと、VOICEVOXを使ったと分かるクレジット表記を求めています。外注では、使用する音声名とその規約、表示するクレジット文、掲載位置を制作会社に確認してください。ソフトの利用条件と、選んだ声の条件を一緒に残します。

ElevenLabsの生成コンテンツの公開に関する公式説明では、無料プランで生成した内容に商用ライセンスはなく、有料契約中の生成内容も権利・規約やサービス別条件を満たす必要があるとしています。Beta Servicesには別の制限があります。現在有料プランかだけで判断せず、実際に納品する音声を生成した時点の条件を記録します。

社員の声を複製する場合は、通常収録と分けて扱う

本人の録音を動画に使う依頼と、その録音から新しい発話を作れる声のモデルを作る依頼は分けて確認します。声のモデルを誰が管理するか、誰が何の原稿を生成できるか、公開前に誰が確認するかを決めてください。提供する録音の範囲や、利用終了時の扱いまで本人と確認し、外注先に用途を明示します。本人の収録同意を、あらゆる声の複製への同意と読み替えないようにします。

ElevenLabsのProfessional Voice Cloneに関する公式説明では、この方式で作成できるのは自分自身の声に限られ、本人の同意があっても他人の声を作成できないと案内しています。この条件をすべての音声サービスへ一般化せず、採用する方式の現行仕様を確認してください。モデル作成の条件と、納品音声の利用条件を別々に確認します。

納品確認では、声だけと完成動画を聞く

同じ軸で比較 音声と完成動画を、別々に確認する 確認対象 声だけ 完成動画 言葉 読み・抜け 字幕との一致 時点 間・採用テイク 画面との一致 聞こえ方 音の途切れ BGMとの重なり
確認用の声だけの音声を受け取れるか、発注前に決めます。

読み・欠落・採用テイクを原稿に照合する

声だけの音声で、収録用の正本と照合します。商品名の読み、数字、文の抜け、同じ文の重複を確認し、修正依頼にはファイル名と再生位置を付ける。原稿側にも同じ修正を残します。複数テイクがある場合は、どれを採用したかを記録し、編集担当が別の候補を使わないようにしてください。

収録用原稿に修正が入った場合は、指摘一覧と原稿版の両方を更新し、再確認する文の範囲を決めてから受け取ります。このときの承認対象は、音声の内容と読み方です。完成動画の検収を兼ねたことにはしません。声のみの納品を契約していない場合は、確認用にBGMを外した動画を出せるかを相談します。確認方法を納品後に追加依頼すると作業が増えるため、発注時に検収の手順も見積もりへ含めます。

完成動画で、セリフやBGMとの重なりを確かめる

完成動画では、商品名が出る画面と音声が合っているか、セリフと重なって意味を取りにくい箇所がないかを聞きます。スマートフォンのスピーカーとイヤホンなど、想定する再生環境でも確認してください。どの端末でも同じ聞こえ方を保証する手順ではありませんが、制作に使った機器だけでは気づかなかった問題を見つけるための確認になります。

聞き取りにくい箇所は、声を大きくする以外に、BGM、セリフ、間、原稿量を調整する候補があります。発注側では、どの言葉を聞き取れなかったかを記録し、制作会社に原因と修正案を確認します。公開後の商品名変更に備えるなら、採用音声と原稿を一緒に保管し、撮影・制作素材の保管範囲も決めておきましょう。

動画ナレーションの依頼でよくある質問

原稿が完成していなくても相談できますか?

相談時には、映像の目的と声を入れたい場面を伝え、原稿作成を依頼範囲に含めるか確認します。本収録に使う版を誰が確定するか、未確定箇所をいつ決めるかまで相談してください。

社員の声で仮ナレーションを作って渡してよいですか?

読み方や間を示す参考資料として渡す方法があります。完成品に使ってよい音声か、指定を伝えるためだけの音声かを明記し、声の複製や別用途への利用を依頼範囲に混ぜないようにします。

AI音声なら商用動画に無料で使えますか?

サービスと音声ごとに条件が違います。VOICEVOXは各音声ライブラリの規約とクレジットの確認が必要です。ElevenLabsは無料プランに商用ライセンスがないと案内しています。使う音声と生成時点の条件を確認してください。

ナレーターを頼めば、動画への組み込みも含まれますか?

個別の見積もりによります。収録、音声編集、映像との同期、BGMとの音量調整を誰が担当するか確認し、未担当の作業がない状態で発注してください。

収録後の商品名変更は無料修正になりますか?

無料とは限りません。承認後の原稿変更として、再収録や再編集の費用・日程を確認します。読み間違いへの対応と、発注側の文言変更を分けて、契約時に扱いを決めておきましょう。

同じ声を別の動画にも使えますか?

利用範囲と納品条件によります。掲載先、広告利用、利用期間、再編集の可否を確認してください。声のモデルを使って新しい発話を生成する場合は、その方式の規約と本人の確認も別途必要です。

依頼文には、決まっていない内容も書く

最初の相談には「採用向けの縦型動画。社員の心の声を入れたい。原稿は初稿で、声の候補と試し読みの範囲を相談したい」のように、用途と未確定点を添えてください。公開希望日や、社内で商品名を確認する担当が決まっていれば、それも渡します。完成した原稿がない段階でも、発注範囲の相談は具体化できます。

ナイトてんしょんでは、ショートドラマの企画・制作を承っています。声を足す場面と映像の構成を一緒に検討したい場合は、ショートドラマ制作の相談へ、台本の該当箇所と、声で伝えたい内容をお送りください。

参考リンク

VOICEVOX:ソフトウェア利用規約VOICEVOX:Q&AVOICEVOX:使い方ElevenLabs:生成コンテンツの公開条件ElevenLabs:Professional Voice Cloneで他人の声を作成できるか