動画制作の稟議で投資対効果を示すときは、「いくら使うか」「1件の見込み客にいくらの価値を置くか」「何件あれば元が取れるか」「どうなったらやめるか」を1枚の試算表に並べます。再生数の予測を大きく書くより、計算の前提を決裁者と共有するほうが、承認後に結果を読み違えにくくなります。

この記事は、動画制作の予算を社内で通す担当者向けです。稟議書全体の構成や承認の工程は動画制作の稟議を通す方法で扱っているので、ここでは投資対効果の数字の作り方に絞ります。記入例の金額や率は説明のための仮の値で、当社の受注実績や業界の平均ではありません。

当社の単発制作の条件は制作料金と最低本数、制作期間の目安は制作の流れで確認できます。

投資対効果は「総費用」と「戻り」を同じ範囲で比べる

投資対効果は、使った費用に対してどれだけの戻りがあったかを比べる考え方です。広告配信では、Google広告の目標広告費用対効果のヘルプが「売り上げ 500 円 ÷ 広告費用 100 円 × 100% = 目標広告費用対効果 500%」という計算例を示しています。この式の分母は広告費用です。

動画制作の稟議では、分母に制作費も入ります。配信の管理画面に出る広告費用対効果をそのまま貼ると、制作費が抜けた数字になり、決裁者が見る総額と合いません。試算表では、分母に入れた費用の範囲を必ず書き、分子の戻りも同じ期間・同じ施策に対応するものだけを入れます。

総費用は、確定している金額と仮に置く金額を分けて書く

総費用には、制作会社への支払いのほかに、配信費と社内の作業時間が入ります。見積書で決まる金額と、社内で仮に置く金額を同じ欄に混ぜると、後で「どこが予定と違ったのか」が分からなくなります。

費目記入例数字の種類
制作費POV4万円/本〜を最低本数の3本で12万円〜見積書で確定
配信費6万円(仮に割り当てた上限)社内で決める上限
社内の作業時間10時間×1時間3,000円で3万円(仮)社内で決める前提
合計21万円〜計算

制作費は当社の2026年10月時点の公開料金で計算した例です。ライトショートドラマは5万円/本〜・3本以上、ショートドラマ(本格)は15万円/本〜・2本以上なので、形式を変えると最低額も変わります。配信費の6万円と社内の時間単価は、この記事の計算用に置いた値で、推奨する金額ではありません。

月額の運用を依頼する場合は、30万円/月〜の別の契約になり、制作と投稿作業が一緒に含まれることがあります。単発制作費と運用費を両方計上すると、同じ動画の制作費を二重に数えることがあるので、見積書の範囲を照らし合わせてから合計してください。

戻りは「見込み客1件の価値」から逆算する

動画が売上にどれだけつながるかを、制作前に正確に予測することはできません。そこで試算表では、売上の予測ではなく「見込み客1件にいくらの価値を置くか」を社内の前提として決め、総費用を回収するのに必要な件数を逆算します。

見込み客1件の価値は、受注率と受注1件あたりの粗利から求めます。例えば、見込み客のうち受注に至る割合を20%、受注1件の粗利を30万円と仮に置くと、見込み客1件の価値は6万円です。総費用21万円をこの6万円で割ると3.5になるので、元を取るには見込み客が4件必要、という読み方になります。

関係を整理 総費用から必要な件数を逆算する 置く数字 計算例 総費用 21万円〜 1件の価値 20%×30万円=6万円 必要な件数 21÷6=3.5→4件
受注率・粗利は仮の値。売上の予測ではなく、回収に必要な件数の目安。

この計算の良いところは、決裁者が反論しやすい点です。「受注率20%は高すぎる」と言われたら、10%に置き直すと1件の価値は3万円、必要な件数は7件になります。前提を動かすと結論がどう変わるかを、承認前に見せられます。受注率や粗利は、過去の問い合わせ台帳や営業の記録から社内で決め、出どころを試算表に書いてください。

動画がなくても来た見込み客を、すべて成果に数えない

公開後に見込み客が4件来ても、その全部が動画のおかげとは限りません。もともと検索や紹介で来ていた相談も含まれるからです。

広告の効果測定では、広告を見た人と見なかった人を比べる方法があります。Google広告のコンバージョン リフト測定のヘルプは、広告を見た介入群と、広告が表示されなかった対照群のコンバージョンを測定し、「コンバージョン数の増分 = テストグループのコンバージョン数 - コントロール グループのコンバージョン数」で計算すると説明しています。

自社アカウントの通常投稿では、このように見る人を2つに分けることは難しいため、公開前の同じ長さの期間と比べる、問い合わせフォームで「何を見て知ったか」を尋ねる、といった方法で補います。どれも広告の対照実験と同じ精度ではないので、試算表には「動画経由と確認できた件数」と「期間中の全件数」を別の行で書き、回収の判断には前者を使います。

稟議に貼る、投資対効果の試算表

次の表は、本記事で提案する試算表の項目です。空欄を残したまま提出せず、決まっていない項目は「未定・決める日」を書きます。

項目記入例
目的商品の使い方を伝え、制作・導入の相談を増やす
総費用と内訳制作12万円〜(見積書)・配信6万円(上限)・社内3万円(仮)
観測期間3本目の公開から30日
見る指標動画経由と確認できた見込み客の件数、商品ページへの訪問
1件の価値の前提受注率20%×粗利30万円=6万円(営業記録から設定)
回収に必要な件数4件
継続の条件動画経由の見込み客が4件以上、または質問から次の企画が決まる
撤退の基準観測期間を終えて動画経由が0件、かつ追加予算の承認がない
承認者と見直し日部長/観測期間の終了から1週間以内

撤退の基準は、承認前に書いておくほど役に立ちます。公開後に結果を見てから基準を決めると、少しでも反応があれば「もう少し続けよう」となり、予算が少しずつ延びていきます。逆に、制作の段階で決めた4件に届かなくても、商品への質問が多く集まったなら、次の企画の材料として継続を判断する余地を残しておきます。見る指標の決め方は効果測定のKPI設計、費用の内訳はショートドラマ制作費の内訳も参考にしてください。

関係を整理 数字ごとに決まる時期が違う 試算表の数字 決まる時期 制作費 見積書で確定 1件の価値 承認前に合意 見込み客の件数 公開後に実測
確定値・仮定・実測を同じ欄に混ぜない。

件数が少ないときは、単価より件数のまま報告する

総費用21万円で動画経由の見込み客が3件なら、1件あたりは7万円です。ただし件数が少ないと、1件増減するだけで単価は大きく動きます。2件なら10万5,000円、1件なら21万円です。0件のときは単価を計算できず、「費用をかけずに獲得した」とも書けません。

件数が一桁のうちは、単価を主な結論にせず、「動画経由と確認できた見込み客は3件、回収に必要な4件に1件届かなかった」のように件数と前提を並べて報告します。次の予算を決めるときも、件数のほかに、相談の中身が狙った商品に関するものだったかを添えると、決裁者が判断しやすくなります。

よくある質問

再生数から投資対効果を計算できますか?

再生数は動画がどれだけ見られたかを示す数字で、売上や見込み客の件数とは別です。再生数に仮の転換率を掛けて売上を出すと、前提が二重になり、外れたときに原因が分からなくなります。試算表では、見込み客の件数とその価値で回収を判断し、再生数は補助の情報として別の行に書いてください。

受注率や粗利が分からない場合はどうしますか?

過去の問い合わせと受注の記録があれば、そこから社内で値を決めます。記録がない場合は、営業担当者と相談して仮の値を置き、「仮置き・見直す日」を試算表に書きます。前提を一つに決めきれないときは、高い場合と低い場合の2通りで必要な件数を示すと、決裁者が幅で判断できます。

12万円だけで投資対効果を出せますか?

12万円〜は、POV4万円/本〜を最低本数の3本で計算した制作費です。配信費や社内の作業時間は含みません。投資対効果の分母には、公開後に使う費用も入れて計算してください。

観測期間はどれくらいにすればよいですか?

商品の検討期間によって変わるため、一律の期間はありません。相談から発注まで時間がかかる商材なら、見込み客の件数は短い期間で見て、受注は別の確認日を置く方法があります。期間を決めたら、3本すべてが同じ長さの期間を経てから比べてください。

試算表の「総費用」と「1件の価値」が埋まれば、制作会社との打ち合わせで、どの形式と本数なら予算内に収まるかを具体的に話せます。ナイトてんしょんへのショートドラマ制作のご相談では、商品、公開先、総予算、社内で決めている前提をお知らせください。