撮影後の台詞を録り直すときは、対象の映像、変更する台詞、録り直す理由を一組にして制作担当へ渡します。聞き取りづらい声を補うのか、商品の説明を変えるのかによって、音声だけで対応できるか、映像も直すかが変わります。声を録る日を決める前に、修正する範囲と確認担当をそろえてください。
この記事で扱うアフレコは、撮影したショートドラマの映像に合わせて台詞を追加収録する作業です。発注担当者向けに、依頼資料の作り方と、録音から納品までの判断を整理します。依頼表と架空例は当社が本記事用に作成した提案で、実案件の記録や費用の実績値ではありません。
アフレコを決める前に、直したい問題を分ける
同じ「声が気になる」という指摘でも、聞こえ方、台詞の内容、演技の方向は別の問題です。例えば通行車両の音が一語に重なっているなら、別テイクの音声を使えるか、音の処理で聞き取りやすくできるかを先に相談できます。商品の条件が変わった場合は、雑音を除いても説明は更新されません。
Blackmagic DesignのFairlight公式説明には、撮影後の会話音声を再収録するADR機能が紹介されています。人物名と台詞を登録するリストや、収録を始める合図、複数テイクの記録に対応する機能です。ただし、機能があることと、特定の映像を自然に修正できることは分けて判断します。
口元が大きく映る場面で長さの違う台詞へ変えると、口の動きとの対応も確認が必要です。まず該当する場面を制作担当に見せ、声の収録と編集で対応する案、別の映像へ切り替える案、撮り直す案を比較してください。「全部アフレコで直す」と先に決めると、映像側の修正が見積もりから抜けるおそれがあります。
雑音への対処そのものは撮影した動画の雑音対策に、説明用の新しい声を加える依頼は動画ナレーションの発注にまとめています。本記事では、すでに映っている人物の台詞との対応を中心に考えます。
依頼資料は、映像の版と台詞の番号をそろえる
制作会社へ渡す確認動画には、ファイル名と版を付けます。台詞の一覧にも同じファイル名を書き、対象の人物、区間、変更前と変更後の文言を対応させます。時間だけを伝えると、冒頭の長さが違う動画を開いた担当者には別の場面が見えてしまいます。
秒で区間を示す場合は、どの動画の先頭から数えるかを合わせます。フレーム単位のタイムコードで指定する場合は、その表記方式とフレームレートを編集担当に確認してください。自社で技術的な設定が分からなければ、画面上に確認用の時刻を表示した動画を依頼し、その表示に沿って指示する方法があります。
以下は、架空の商品紹介ドラマで使う依頼表です。番号は収録した音声と検品結果を同じ箇所へ戻せるように付けています。「自然に」「もっと明るく」だけで終わらせず、残したい演技と変える内容を書き分けるための例です。
| 指定する項目 | 記入例 |
|---|---|
| 対象の映像 | 商品紹介_v04.mp4 |
| 台詞の番号・人物 | A03・店舗スタッフ |
| 対象区間 | 00:12〜00:15(動画先頭から) |
| 変更する理由 | 商品名の読みを訂正 |
| 確定した台詞 | 「こちらが、新しいミナです」 |
| 残したい演技 | 相手に説明する落ち着いた調子 |
| 内容の確認者 | 商品担当。読みを収録前に確定 |
| 完成映像の確認者 | 発注窓口。口元・音・字幕を確認 |
読み方は、商品担当の資料や確認した音声見本も添えて確定します。原稿に振り仮名を付けるだけではアクセントの希望まで伝わらない場合があるためです。未確定の台詞は収録対象と分け、誰の返答を待っているかを記載してください。
声を録る前に、映像へ合わせて短く試す
新しい台詞は、実際の映像を見ながら一度声に出して確かめます。文字数が近くても、息継ぎや強調する語が違えば、同じ区間に無理なく収まるとは限りません。口元が見える場面は、言い終わる時刻だけでなく、途中の口の動きも確認します。
商品名を短い仮称から長い正式名称へ変える架空例を考えます。元の映像で話している時間が短ければ、正式名称を急いで読んで収める案だけで決めず、台詞を前後から組み直すか、商品画面へ切り替えて説明を続けるかを相談します。どちらも商品の条件や意味を変えてよい理由にはなりません。台詞を変えるなら、商品担当が内容を再確認します。
出演者には、変更する一文だけでなく、その前後のやり取りも共有します。同じ声の大きさでも、相手を安心させる返事と、離れた相手を呼ぶ声では場面への合い方が違います。制作担当には、元の映像で残したい表情や間も示し、追加収録の演技指示をまとめてもらいます。
映像の変更が続いている間に録る必要がある場合は、「この版に合わせた仮収録」と分かる状態で扱い、後の映像変更で再調整が必要になる条件を確認します。完成版の収録として受け取った後で、発注側だけが映像の尺を変えることは避けてください。台詞自体の修正はショートドラマのセリフを直す手順も参考になります。
費用と納期は、収録以外の作業も含めて比べる
見積もりを比べるときは、出演者の追加収録、録音場所やスタッフ、音声の編集、映像への組み込み、確認用データと完成版の書き出しがどこまで含まれるかをそろえます。台詞が一つでも、出演者の手配や前後の音をつなぐ作業がなくなるわけではありません。本記事では、条件の違う案件を一律の単価や日数で示しません。
| 見積もりで確認する範囲 | 発注前に伝える条件 |
|---|---|
| 出演者の手配 | 本人が再収録できる日、利用先・期間 |
| 収録の準備 | 確定台詞、対象映像、立ち会う担当 |
| 音声と映像の編集 | 修正区間、元の音声データの有無 |
| 確認と納品 | 確認回数、必要なファイル、公開予定 |
| 追加変更 | 原稿変更や映像変更が起きた場合の扱い |
特に、台詞の読み間違いを直す作業と、発注後に商品条件を変えて録り直す作業は、依頼内容が異なります。修正費用に何が含まれ、どの変更から追加見積もりになるかを事前に確認します。「修正対応あり」という表現だけでは、自社の予定している変更が対象か判断できません。
出演者を別の人へ替える案や、音声を別用途にも使う案がある場合は、その予定も制作窓口に伝えます。既存の契約で対応できると決めつけず、声と映像の組み合わせ、掲載先、広告利用などを確認してください。ここでは契約の可否を一般化せず、発注時に確認すべき条件として挙げています。
ショートドラマ全体の追加編集も必要なら、制作サービスの対応範囲を確認し、対象映像と修正理由を添えて相談できます。「追加収録だけ」「台詞から再構成」「映像も撮り直す」のどれを検討しているかが分かると、見積もる作業を絞れます。
検品は、声だけと完成映像を続けて確認する
録音データでは、確定した原稿どおりか、語頭や語尾が切れていないか、意図しない雑音がないかを確認します。その後、音声を組み込んだ映像で、口の動き、前後の台詞との音量差、場面の響き、字幕との一致を確認します。声単独で聞きやすくても、映像へ入れたときのつながりは別の確認です。
元の音声を一部分だけ置き換える場合は、修正区間の少し前から少し後まで続けて再生します。言葉の途中だけを差し替えた境目で、声の調子や背景音が変わって聞こえるかもしれません。その場合は、加工を強める案だけでなく、一文を通して録り直す案も制作担当と比較します。
確認結果は、台詞番号、採用するテイク、残っている指摘、確認者を対応させて返します。「A03の読みは承認、映像に入れた状態は未確認」と書けば、内容確認が済んだことを公開承認と取り違えずに済みます。複数の担当者が確認する場合は、発注窓口が指摘をまとめ、食い違う指示を収録担当へ同時に送らないようにします。
Blackmagic Designの公式トレーニングでは、ボイスオーバーやADRの録音を扱う教材も案内されています。操作を制作側へ任せる場合も、発注側は「何を承認するか」を持っておきます。音声の専門操作を覚えることが、原稿と完成動画の確認の代わりになるわけではありません。
検品の指摘を、録り直す範囲へ戻す
「声が不自然」という一つの指摘でも、再収録する箇所は同じとは限りません。下表は、対象映像を見たうえで制作担当と比較する候補です。編集だけで解消できることや、再収録すれば必ず合うことを保証する表ではありません。
| 残っている問題 | 先に照合するもの | 比較する対応 |
|---|---|---|
| 商品名が違う | 確定原稿と収録テイク | 該当文の再収録 |
| 一語だけ浮く | 前後の声と背景音 | 一文単位の録り直し |
| 口元と長さが合わない | 元映像と新しい台詞 | 台詞・画の組み直し |
| 字幕だけ古い | 採用音声と字幕原稿 | 字幕修正と再検品 |
架空の依頼例なら、「A03は商品名の読みを承認。前の文と声の調子が変わるため、前後を続けた試聴版を確認したい。字幕の旧名称も修正し、同じ映像版で返してほしい」と伝えます。採用済みの読みまで変更する依頼と、つながりだけを直す依頼を区別できます。
口元を別の映像で隠す案を使うときは、その映像が物語上も必要かを確認します。インサートの採否判断に沿い、商品や人物について別の意味を伝えていないかまで見てください。音声の問題を解消しても、映像の説明が変わるなら台本の確認者へ戻します。
公開担当へは、採用版と字幕を一緒に渡す
台詞を変えたら、焼き込み字幕や投稿時に付ける字幕ファイルも照合します。商品名の読みだけを修正して表記は変わらない場合も、表示のタイミングに影響がないか確認します。字幕の受け渡し方は動画字幕の外注と検品で整理しています。
最終的に、公開用の動画、対応する字幕、採用版のファイル名、確認した担当者を一組にして渡します。修正前の動画を同じフォルダに残す場合は、公開対象から外れていることが分かる名前や置き場所にしてください。追加収録が終わったという連絡だけでは、どの動画を投稿してよいかは伝わりません。
すでに公開している動画を直す場合は、掲載先でどこまで編集できるかを先に確認します。YouTubeの動画の置き換えに関するヘルプでは、アップロード済み動画を別の動画に置き換えることはできず、新しいアップロードには新しいURLが付くと案内されています。修正版を新しく投稿する案では、旧動画の扱いと、リンクや広告の参照先も公開担当が確認します。
アフレコを依頼するときによくある質問
台詞が一つだけなら、音声だけ送れば依頼できますか?
対象の映像も渡すことを勧めます。口元が映るか、どのタイミングで話すか、前後の台詞とどうつながるかで作業が変わるためです。確認用動画の版と台詞番号をそろえ、必要な元素材は制作担当へ確認してください。
出演者にスマートフォンで録ってもらってもよいですか?
その録音で納品できるかは、収録環境と必要な品質によります。先に短いサンプルを制作担当へ渡し、映像へ入れた状態で判断します。収録場所や機材を指定されている場合は、その条件を確認してから録音してください。
口の動きと合わない台詞も、編集で直せますか?
対象の映像と台詞によります。音声のタイミング調整だけで自然に収まるとは限りません。台詞の組み直し、別のカットの使用、再撮影まで含めて、短い試作を見て決めます。
録り直した音声が承認されれば、動画を公開してよいですか?
完成映像も確認します。口元、前後の音、字幕、採用するファイルを照合し、公開を判断する担当者が承認してから渡します。原稿や音声単独の承認と区別してください。
ショートドラマの追加収録を相談するときは、対象の動画と直したい台詞、公開予定日をお知らせください。ナイトてんしょんでは、ショートドラマ制作のご相談から、映像の修正を含めた対応範囲を確認できます。