撮影衣装は、発注側が制服を支給する、出演者の私物を使う、制作側に手配を頼む、という選択肢があります。誰が服を用意するかに加え、誰が選び、着用を確認し、撮影後に返すかまで決めて発注してください。「衣装込み」という見積もりでも、候補の提案だけか、現場での着替え対応まで含むかで、依頼できる範囲が変わります。
「社員なら普段の服で来てもらえばよい」と決めたあとで、役柄に合う服がない、制服のサイズが合わない、別日の追加撮影で同じ服が集まらない、と分かることもあります。衣装の写真と担当を撮影前に揃えれば、足りないものを探す時間を確保できます。
この記事は、企業のショートドラマや社員が出演する動画を外注する担当者に向けた衣装手配のガイドです。商品・ロゴなど支給物全体の確認は撮影で発注側が用意するもの、出演者を誰にするかは出演者の選び方で扱っています。ここでは服と靴、小物の手配、衣装合わせ、費用と返却に絞ります。
衣装は「調達」と「当日の対応」を分けて頼む
制服を会社で揃えられても、誰が出演者ごとに分けて持ち込み、着替え後に回収するかは残ります。制作会社に衣装を頼む場合も、服の貸し出しと、候補を探して組み合わせるスタイリングは区別して確認します。レンタル商品を選べば、撮影現場に衣装担当者も来るとは限りません。
制服・私物・外部手配を役ごとに選ぶ
実際の店舗スタッフを演じるなら、現行の制服を会社が支給する方法から検討できます。担当者は必要なサイズの在庫、同じ型の追加調達、名札や靴の扱いを確認します。私物を使う場合は、出演者に服の購入を任せる前に候補写真を集め、制作側へ役柄や背景との相性を確認してもらいます。出演者が服を持っていることと、今回の撮影に使う了承があることも別々に確認する項目です。
役柄を表す服が手元にないときや、複数の出演者の色・形を揃えたいときは、制作側に外部手配を含む案を出してもらいます。一つの動画で全員を同じ方法にする必要はありません。社員役の制服は支給、顧客役は私物、不足する靴だけ手配、という組み合わせも相談できます。どの方法を選んでも、採用する衣装を決める窓口を一つにします。
| 手配方法 | 発注側が先に確かめること | 制作側に依頼する範囲 |
|---|---|---|
| 会社の制服を支給 | 型・サイズ・在庫・持ち出し可否 | 役柄、背景、撮影時の見え方 |
| 出演者の私物を使用 | 本人の了承・候補写真・汚損時の扱い | 組み合わせの選定と代替案 |
| 衣装を購入 | 購入承認・予算・撮影後の所有者 | 候補探し、購入、現場への搬入 |
| 衣装をレンタル | 使用日・サイズ・使用条件 | 在庫照会、受取、返却の担当 |
| スタイリストへ依頼 | 役柄・人数・変更できない条件 | 提案、調達、衣装合わせ、当日対応 |
スタイリストと現場対応の範囲を見積もりに書く
スタイリストの仕事を一括で依頼する場合は、打ち合わせ、候補探し、手配、試着、撮影当日の対応、返却のどこまでを含むか確認します。たとえばMOREの公式依頼フローでは、サイズ確定後の見積もり、画像での候補確認、撮影当日のフィッター対応を別工程として案内しています。これは同社の提供内容であり、すべての手配先に共通する条件ではありません。MORE:衣裳ご依頼の流れ
発注側が受け取る見積もりにも、今回必要な工程名を書いてもらいます。服の手配だけを頼むなら、当日の整理や着替えの補助を誰が担うか補います。ヘアメイクまで必要な場合は、同じ担当が行うのか、別の手配かも確認してください。衣装担当が空いている時間に別作業を任せる前提で予定を組むと、着替えの対応と重なる可能性があります。
衣装を選ぶ前に、役柄と場面の一覧を渡す
「きれいめの服」「会社員らしい服」だけでは候補が揃いません。接客中か退勤後か、初対面か親しい同僚同士かによって、同じ社員役でも服装の選択が変わります。会社の実際の服装規定と、ドラマ内の人物に着せたい服を整理し、変更できない条件から伝えます。
依頼メモは服の好みより、使う場面から埋める
最初の依頼では、企画・台本の版、登場人物、撮る場面、撮影場所、必要な着替えを並べます。会社が指定する制服があるなら、正面・背面の写真や、使える型を添えてください。「紺なら何でもよい」のか「現在の店舗と同じ制服が必要」なのかを分けると、候補を選び直す理由が明確になります。小物も衣装の一部として扱い、名札、時計、靴、バッグの手配担当を決めます。
サイズは衣装の手配に必要な項目だけを、本人の了承を得た窓口で確認します。担当者全員へ無制限に転送する運用は避け、手配先と確認する人に共有先を絞ります。写真も、服を選ぶための資料と公開する素材を混ぜずに保存してください。本記事の依頼メモは整理用の提案です。実際に必要な採寸項目や提出方法は、手配先の指定に合わせます。
| 依頼メモの欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 役柄と場面 | 店舗スタッフの勤務中、顧客の来店時など |
| 台本の版 | どの場面構成をもとに衣装を選ぶか |
| 変更できない条件 | 制服の型、指定色、会社の服装規定 |
| 出演者とサイズ | 衣装手配に必要な範囲を指定窓口へ共有 |
| 用意できる服 | 支給・私物それぞれの候補写真 |
| 不足するもの | 靴、ベルト、上着、バッグなど |
| 動き・汚れる場面 | 座る、走る、水を扱う、食事をするなど |
| 使用日と返却 | 撮影日、予備日、追加撮影の可能性 |
| 確認担当 | 会社の表記と見え方を誰が承認するか |
同じ場面を別日に撮るなら、衣装の記録も残す
以下は整理の例です。同じ勤務日の会話を、店内と屋外で別日に撮るとします。店内では上着を着ていたのに、屋外では別の上着を着ていると、同じ場面として編集したときに服装が一致しません。服の種類に加え、ボタン、袖、靴、小物の状態を写真と場面番号で残すと、追加撮影で照合できます。これは実案件の成果紹介ではなく、衣装を記録する用途を示す仮定例です。
複数話を同日に撮る場合も、話数ごとに機械的に服を増やす前に、物語の中で日付が変わるかを制作側へ確認します。同じ服を続けて使う意図があるのか、別の役を演じるために変えるのかで、必要な衣装が変わります。撮影順は物語の順番と一致するとは限らないため、持参リストには台本の場面番号と衣装の番号を対応させておきます。
衣装合わせは、写真確認と着用確認を分ける
写真で色と方向性を選び、実際に着てサイズや動きを確認する順で進めます。衣装合わせの実施日、場所、参加する人、費用を撮影予定と一緒に決めます。試着ができない場合は、その条件を共有し、サイズが合わなかった場合の代替服と判断担当を用意します。
いつまでに決めるかは手配先の条件から逆算する
撮影前日までに写真が届けば十分、という一律の期限は設けません。必要な服の在庫、試着、サイズの交換、配送にかかる時間を手配先へ確認し、採用決定日を逆算します。特殊な衣装やサイズ違いを含む場合は、撮影日が決まった段階で手配の可否を照会します。社内承認の日だけを予定表に置いても、承認後に服が届かなければ撮影には使えません。
松竹衣裳の公式注文フローでも、発注後に在庫・料金を確認し、支払情報の確認を経て受け取る手順が示されています。掲載写真を見つけた時点では確保済みと考えず、手配担当から在庫確認と受取予定の報告を受ける運用にします。松竹衣裳:撮影用衣装レンタルの注文の流れ
座る・腕を上げる・商品を持つ動作まで確かめる
立っている写真で採用した服でも、実際の芝居で窮屈になったり、商品を持つと袖が商品を隠したりすることがあります。衣装合わせでは、台本に出てくる動作を試すよう依頼します。立ち姿だけを確認した場合は、その範囲を記録し、撮影当日のリハーサルで残りの動作を見る時間を取ります。靴も、画面に写るかに加え、本人が予定する動作を無理なく行えるかを確認してください。
その場で服を加工したい場合は、支給品・私物・レンタル品のどれかを確認してから判断します。丈を詰める、テープを貼る、小物を固定する、といった作業の可否を所有者や貸出元へ確認し、了承されていない加工を現場判断で進めないようにします。代替の着方で撮れるか、別の候補へ変えるかも、演出と衣装の担当者に相談します。
カメラとマイクを通した確認を入れる
服の見た目は、撮影場所の背景や光と組み合わせて確認します。白や黒を一律に禁止する決め方では、制服やブランド指定との整合が取れません。候補を実際の画面に入れ、人物と背景を見分けられるか、商品や表情を見る妨げにならないかを撮影担当へ確認してもらいます。
細かい柄は、使う撮影条件でテストする
細かい格子柄などの服では、本来の柄とは別のまだら模様が写る「モアレ」が出る場合があります。キヤノンの写真用語集も、細かな格子柄の衣服での発生と、服を選ぶ段階での対応を説明しています。すべての柄物で必ず起きる、という意味ではありません。キヤノン:モアレ
衣装候補を決めるときは、問題が出たら交換できる別の服を用意するか、撮影側でテストする工程を設けます。写真の用語説明を、今回の動画の仕上がり保証には使いません。画面上で気になる模様が出るかは、実際に使うカメラや記録条件で短く撮って確認します。撮影後の修正を前提に採用せず、テスト結果を見て服や撮り方を選び直せる段階で判断してください。
セリフがある場面では、服の音も確認する
マイクメーカーDPAの公式記事で、録音技師は衣装によるノイズと、衣装部門との事前の協力について述べています。布や装飾が音の問題になる可能性を、見た目だけでは判断できないためです。ここで引用するのは録音技師の実務上の見解で、ノイズの発生率や改善率を示す計測値ではありません。DPA:映画の録音現場で確認すること
セリフのある場面では、本番で着る服を着用し、予定するマイクの付け方で短く動いてもらいます。録音担当が聞き、服がこすれる音や小物が当たる音が会話を妨げないか確認します。服装を変えた後も同じ確認を入れます。周囲の音も含めた確認と録り直しの判断は、動画撮影の雑音対策で整理しています。マイクを付けるために本人の衣服や身体へ触れる必要がある場合は、先に説明と了承を得て、本人が不安なく準備できる方法を担当者と相談してください。
費用は衣装代・手配・当日対応・返却に分ける
衣装の発注では、購入代やレンタル料だけを予算に入れると、候補探し、搬送、試着、撮影後の作業が抜けます。業界共通の相場を当てはめる前に、今回の委託範囲を見積もりで確かめます。私物を使う場合も、購入や洗濯、持ち込みを本人が負担する前提にはせず、依頼前に費用の扱いを合意してください。
| 費目・条件 | 見積もりで確認すること |
|---|---|
| 衣装本体 | 購入かレンタルか、靴・小物を含むか |
| 候補の提案 | リサーチと組み合わせの提案範囲 |
| 衣装合わせ | 試着の日程、場所、人員、交換対応 |
| 撮影当日の対応 | 搬入、着替え、管理、回収を含むか |
| 配送・移動 | 受取と返却の送料、交通費 |
| 追加・変更 | 承認後の変更、延長、追加撮影の扱い |
| 汚損・加工 | 許される使用方法、連絡先、費用確認の手順 |
| 撮影後 | 返却、清掃、保管、購入品の引き渡し |
「衣装込み」の欄に数量と範囲がなければ、何を含むか追記してもらいます。たとえば「出演者ごとの採用衣装と小物を手配、当日の着替え対応を含む。追加撮影は別途確認」と書けば、受け取る内容を双方で照合できます。これは見積もり項目の書き方の例で、当社や特定の会社の標準料金条件を示すものではありません。動画全体の費目は制作費相場と見積もりの内訳を参照してください。
撮影当日の管理は、次の衣装を準備する人まで決める
服を現場に持ち込んだ後は、出演者別・場面別に分け、採用した組み合わせが分かる写真を添えます。着替えの場所、荷物置き場、次の衣装を準備する担当も撮影の予定表に入れます。出演者が自分の私服へ戻る際には、借りた靴や小物が混ざらないよう、返却先を示しておきます。
MOREが2026年6月15日に公開した現場記事では、衣装の選定・試着・管理を一人が抱える問題や、撮影中に次の衣装を準備する分担が論点になっています。これは同社の現場見解です。人を増やせば必ず待ち時間がなくなるという保証にはせず、今回の撮影で作業が重なる箇所を確認する材料にします。MORE:衣装準備が間に合わない現場の共通点
発注側が立ち会う場合は、制服や社名の見え方を確認する人と、服の手配を進める人を決めておきます。現場で別の社員から衣装の変更希望が出ても、窓口へ集め、撮り終えた場面との一致や着替え時間への影響を確認してから変更します。撮影当日の判断範囲は発注者の立ち会いでやることにつながります。
返却前に、再撮影と汚損の扱いを確認する
追加撮影の可能性があるなら、借りた衣装を延長するか、一度返して再手配するかを貸出元に相談します。同じ商品が次回も空いているとは約束できません。継続して使う必要のある服は、購入や保管を含む案も比較し、その費用と担当を見積もりで確認します。撮影素材の保管と再編集の備えと合わせ、映像データと衣装を別々に管理してください。
汚れや破損があった場合は、状態を写真で残し、決めておいた窓口へ連絡して扱いを確認します。自己判断で洗濯、補修、交換を進める前に、所有者や貸出元の指示を受けます。返却方法、到着期限、付属品の一覧を照合し、担当者は発送の連絡だけで作業を終えず、受取確認が必要かまで決めておきます。
撮影で買った服についても、制作会社、発注会社、出演者の誰が引き取るかを明記します。出演者が衣装を着たまま帰ってよいのか、社内へ返すのか、次回のために制作側で保管するのかを、当日迷わない状態にしておきます。延期や中止が決まった場合は撮影延期・中止の判断と費用を確認し、衣装手配も同時に止める・変更する連絡を入れます。
よくある質問
Q. 出演する社員に、普段着を持ってきてもらうだけでもよいですか?
A. 私物を使う方法は選べます。事前に候補写真、本人の了承、汚損時の扱いを確認し、制作側へ採用判断を依頼します。合わなかった場合に交換できる服も決めておくと、当日の判断を進められます。
Q. 制作費に衣装代は含まれますか?
A. 見積もりの範囲によります。服の購入・レンタル、候補の提案、衣装合わせ、当日の着替え対応、配送と返却を分けて確認してください。「衣装込み」という名称だけで、すべて含まれるとは判断できません。
Q. 制服があればスタイリストは不要ですか?
A. 制服の支給で服を確保できても、サイズ確認、着替え、小物、当日の管理は残ります。必要な作業を誰が担えるかで判断し、人数や衣装の切り替えが多い場合は現場対応を含む案を相談します。
Q. 衣装合わせは撮影当日にしてもよいですか?
A. 当日しか着用確認できない場合は、その条件と残る確認点を共有します。合わなかった場合の代替服や、マイクを付けて動く確認の時間を確保してください。写真確認だけでサイズや音まで検証済みとは扱いません。
Q. ストライプやチェックは撮影に使えませんか?
A. 柄物を一律に禁止する必要はありません。細かい柄でモアレが出る場合があるため、候補服を使う撮影条件でテストし、問題があれば別の服や撮り方を検討します。撮影後の修正を保証する前提にはしません。
Q. レンタル衣装が汚れたら、洗って返すべきですか?
A. まず貸出元の指定を確認します。状態を記録して連絡し、洗濯や補修の可否、返却方法、費用の確認手順に従います。私物や会社の支給品も、所有者の了承なく加工しない運用にします。
ナイトてんしょんに撮影を相談する際は、台本の役柄と着替えのある場面に、「自社で用意できる服」「制作側に手配してほしい服」を対応させて共有してください。ショートドラマ制作について相談するから、衣装を含む手配範囲を確認できます。
参考リンク
・MORE:ご依頼の流れ ・松竹衣裳:撮影用衣装レンタルの注文の流れ ・キヤノン:写真用語集「モアレ」 ・DPA:7 points about working with sound in the film industry ・MORE:衣装準備が間に合わない現場の共通点(2026年6月15日)
出典の確認日は2026年9月14日です。手配先の公式フローは当該サービスの説明、技術資料は現象の説明、現場記事は執筆者の見解として参照しています。役割分担、依頼メモ、見積項目は本記事が発注者向けに提案する整理例です。