企業ショートドラマの主人公は、伝えたい商品を説明できる人より先に、「その場面で何かを望み、選択する人」として考えます。顧客の困りごとを見せたいなら使う側、仕事の判断を見せたいなら働く側が候補になります。同じ商品や会社でも、誰の立場で出来事を見るかによって台詞と結末が変わります。

この記事は、企画案の主人公が毎回似てしまう、会社の説明役になってしまう、と感じている発注担当者に向けた制作上の提案です。人物設定の例は架空で、当社の受注事例や実測結果ではありません。役を演じる俳優や社員の選定は出演者の選び方、企画書全体は7つの構成要素にまとめています。ここでは物語の中の人物を決めます。

主人公が望むことを、商品名を使わずに書く

「自社のサービスを使ってよかったと言う人」だけでは、人物がどんな事情で行動するかが分かりません。まず「友人を待たせずに合流したい」「後輩に頼ってもらいたい」など、その場面で本人が望むことを書いてみてください。商品はその行動に関わる道具やきっかけとして検討できます。

望みを大きな人生目標まで広げる必要はありません。短い動画では、その場で決める行動を一つ置く方法があります。例えば、遅刻しそうな人が友人へ連絡するか、ごまかすかを迷う場面なら、観客は次の行動を待てます。「忙しい人」という属性だけでは、この迷いは生まれません。

困りごとと、性格の欠点を混同しない

顧客の悩みを描くために、主人公を極端に無知にする必要はありません。使い方を知っていても、人に頼れない、時間がない、別の相手との約束を守りたいといった事情で迷う人物は作れます。商品を褒めるために顧客を見下す構図になっていないか、台本で確かめます。

主人公の選択には、その人なりの理由を置きます。間違った選択をする人物でも、なぜそうしたかが分かれば、その後の変化を追えます。逆に、商品を登場させる都合だけで急に忘れ物をさせたり、説明を聞き始めさせたりすると、出来事のつながりが弱くなります。

顧客・社員・第三者は、見せたい場面で選ぶ

ナイトてんしょんがこの記事で提案する比較軸は、人物の肩書きの印象より、どの情報を知り、何を決められるかです。顧客役は使う前の不安を描けます。社員役は仕事上の判断を描けます。友人や家族などの第三者は、当事者との認識の違いを描けます。どれも全案件に適した型ではありません。

関係を整理 見せたい出来事から選ぶ 物語の視点 描きたいこと 顧客の立場 使う前の迷い 社員の立場 仕事での判断 第三者の立場 相手への認識の変化
当記事の整理。案件の条件や計測範囲に応じて確認します。

顧客を主人公にする場合

商品を初めて使う直前や、使い慣れた生活の中から場面を選びます。主人公が何を期待し、何に迷うかを見せると、商品の説明をすべて台詞に載せなくても話を作れます。ただし、使用による変化を描くときは、実際の商品情報と一致しているかを発注側が確認します。演出の面白さを理由に、根拠のない性能を足すことはできません。

架空の例として、贈り物を選ぶ顧客なら「自分の好み」と「相手が欲しがっていたもの」の間に迷いを置けます。最後に選ぶ理由が最初とどう変わるかを描けば、主人公の行動が結末になります。商品の購入を結末にするかどうかは、企画の目的に合わせて決めます。

社員を主人公にする場合

会社の理念を読み上げる役にすると、人物の選択が見えにくくなります。例えば「すぐに答えを教えるか、後輩の話を最後まで聞くか」という判断を置き、その行動から仕事への姿勢を見せる案があります。実際の業務ルールと異なる対応を、会社の標準対応として描かない確認も必要です。

ここでいう社員は物語上の役柄です。実際の社員が出演するとは限りません。俳優が演じる架空の社員、実在社員の経験をもとにした人物、本人のインタビューでは、事実として扱える範囲が異なります。企画書にはその区別を書き、事実確認と出演の確認を担当者へ渡してください。

第三者を主人公にする場合

友人や家族が相手の変化に気づく構成なら、商品の利用者が自分の良さを説明し続ける場面を減らせます。ただし、第三者が何も知らないまま商品の効果を断言する台詞は不自然です。その人物が見たこと、聞いたこと、推測したことを分けます。

例えば、家族が帰宅時間の変化に気づく話を考えるなら、何が変わったのかを確かめる会話が必要です。視聴者へすぐに正解を教えるか、人物と同じ順番で知ってもらうかは演出の選択になります。隠す情報が多すぎて、誰の何の話か分からなくならないようにします。

同じ題材で二つの視点を比べてみる

主人公を決め切れないときは、長い脚本を二本書く前に、同じ出来事の短いあらすじを比べる方法があります。次は架空の「新人が先輩へ質問する」場面です。優劣を示す事例ではなく、視点の違いを検討するための例です。

比べる項目新人が主人公先輩が主人公
望み迷惑をかけたくない頼ってほしい
思い込み先輩は忙しい新人は順調そう
選択質問を伝える様子を尋ねる

新人を主人公にすると、声をかけるまでのためらいが中心になります。先輩を主人公にすると、相手の状態をどう理解するかが中心になります。採用で伝えたいのが入社時の不安なのか、働く人の判断なのかによって、先に描きたい出来事を選べます。

比較するときは、人物の年齢や服装を変えるだけで済ませず、誰が何を知らず、最後に何を選ぶかまで確認します。二案とも会社を褒める台詞で終わるなら、視点の違いが結末へ届いていない可能性があります。これは台本を見直すための仮説で、公開後の成績を予測する判定ではありません。

比較案を制作会社へ渡すときは、採用理由を残す

あらすじを二つ読んだあとに「新人の案がよい」とだけ返すと、脚本家は残すべき要素を判断できません。新人の迷いを見せたいのか、先輩との関係を見せたいのかまで伝えます。次は、上の架空例を企画の依頼へ移すための記入例です。

決めること返答の例
採用する視点初めて質問する新人を主人公にする
残したい行動ためらったあと、自分から声をかける
事実確認質問できる担当や職場の運用は人事へ確認
制作側への相談内心の説明を減らし、動作で伝える案を見たい

人事への確認が終わる前に、実際の勤務制度を台詞として確定しないようにします。一方、人物の迷いや場面の構成は先に検討できるため、何を決められて何を待つかを分けて返してください。

主人公が決まらない段階でショートドラマ制作を相談する場合は、誰に見せたい動画か、伝えたい商品や職場の情報、迷っている二案を添えると、比較する条件を共有できます。出演者の人数やキャスティングは、その後に台本と照合します。

台本では、説明を消しても行動がつながるかを見る

台本を読むときは、商品の機能説明や会社紹介の台詞をいったん脇へ置き、人物の行動だけを追ってみてください。冒頭の望み、途中の障害、最後の選択がつながるなら、説明をどこへ戻すかを検討できます。つながらない場合は、人物が話す理由を先に直します。

流れをつかむ 人物の行動をつなぐ 1 望むこと その場で達成したいこと 2 迷う理由 行動をためらう事情 3 最後の選択 本人が決めて動くこと
当記事の整理。案件の条件や計測範囲に応じて確認します。

ただし「商品を消すと成立しない話」だけが正解というわけではありません。生活場面を支える小道具として商品を見せる企画もあります。発注側が決めるのは、この作品で商品がどんな役割を担い、どの情報を正確に伝える必要があるかです。役割の確認がないまま、登場する秒数だけを前後させても問題が残ります。

実話に見える表現には、確認の担当を置く

架空の人物の台詞でも、会社の実際の対応、商品の性能、顧客の実体験だと受け取られる表現があります。事実として伝える内容は、商品担当や業務担当が確認します。創作した体験を「実際のお客様の声」として掲載することは避けてください。

企画会議の記録には、人物設定として承認した部分と、事実確認待ちの部分を分けて残します。「社員役の台詞は承認したが、勤務制度の説明は担当部署へ確認中」と書けば、撮影前に必要な返答が分かります。表現の確認をすべて制作会社へ任せたつもりにならないための手順です。

公開後は、主人公が原因だと決めつけずに振り返る

人物の視点を変えた動画の再生数が増えても、出演者、配信費、公開時間、尺も変わっていれば、主人公の設定だけが原因とは言えません。公開前に比較したい点を決め、変更した条件と観測した値を分けて残します。

YouTubeの視聴者維持率の公式説明では、グラフの谷は視聴停止やスキップ、山は繰り返し視聴などを示します。山には内容が分かりにくく見直された可能性もあるため、「共感された」と直結させず、該当場面を見直してください。表示条件があり、すべての短い動画で同じ詳細が得られるわけではありません。

コメントを見るときも、全視聴者の意見とは扱いません。「この先輩の気持ちが分かる」という反応と、「制度について知りたい」という質問では、次に確認することが違います。人物の行動についての反応、商品情報への質問、案内先への行動を分けると、次の脚本で変える箇所を考えられます。

問い合わせまで見る場合は、クリックと実際の受信を分けます。GA4のイベントについての案内を参考に、どの操作が計測されるかを担当者間で確認してください。受信が少ない場合や計測できていない期間は、人物設定の成功・失敗を保留し、必要なデータと次回の確認日を残します。

主人公の設定でよくある質問

Q. 顧客と同じ年代の主人公にすれば共感されますか?

年代だけでは判断できません。望みや迷い、行動の理由が伝わるかを台本で確かめます。対象者と同じ年代を選ぶことは検討材料ですが、共感や売上の保証にはなりません。

Q. 社員役は、実際の社員が演じるべきですか?

人物設定と出演方法を別に決められます。社員本人の出演可否、演技の必要性、公開範囲を確認して、社員・俳優などの方法を選びます。本人の体験を使う場合は、どこまで事実として扱うかも明確にします。

Q. 主人公は失敗してはいけませんか?

失敗を描くこと自体で決まりません。顧客や社員を不当に見下す構図になっていないか、失敗の理由とその後の選択が伝わるかを見ます。会社や商品の実際の対応と誤認される部分は、事実確認を行ってください。

企画を相談する際は、伝えたい相手と、主人公が迷う場面を一つお知らせください。ナイトてんしょんではショートドラマの企画・制作を案内しています。まだ顧客視点と社員視点で迷っている段階でも、企画の相談で、どちらの出来事を描きたいかから整理できます。