自社のショートドラマを作ると決めたものの、何を物語にすればよいか決まらない。そんなときは、商品の特長を並べる前に、お客様が商品を必要とした場面を探します。「残業が続いて夕食を作る気力がない金曜日」のように、人と時間と困りごとが見える場面は、そのまま冒頭の数秒になります。機能の一覧から話を作ろうとすると、説明の多い台本になりやすいためです。
本記事は、企画会議の前に題材の候補を集め、1本目を選ぶまでの手順を、企業の担当者向けにまとめたものです。社内のどこに材料があるか、候補をどう書き直して絞るか、避けたい題材は何かを順に説明します。選んだ題材を企画書にまとめる方法はショートドラマの企画書の作り方、主人公を誰にするかは企業ショートドラマの主人公で扱っています。
題材は、お客様の行動が変わる場面から探す
機能の一覧からは、物語が始まりにくい
「保存料不使用」「最短翌日配送」といった特長は、商品ページでは大事な情報です。ただ、ドラマの冒頭に置くと、見る人には登場人物が何に困っているのかが分かりません。物語は、人物が何かを望み、それが簡単には手に入らないところから動き出します。特長は、その困りごとを越える手がかりとして、話の後半に出てきます。
そこで題材探しでは、特長を「この特長がなかったら、誰がどんな場面で困るか」に置き換えて考えます。最短翌日配送なら、「子どもの上履きが破れたのに、明日が登校日だと夜9時に気づいた親」のような場面です。これは考え方を示すための架空の例で、実在の顧客や効果を示すものではありません。
商品を知る前、使い始め、使い続けた後で探す
お客様の行動が変わる場面は、商品とのつきあいの時期によって違います。商品を知る前は、困っているのに解決策を知らない場面です。使い始めは、半信半疑で試して、思ったのと違うところや意外に助かったところに気づく場面です。使い続けた後は、生活や仕事の段取りが変わり、商品がない日を想像できなくなった場面です。
どの時期を選ぶかで、見る人の立場も変わります。まだ商品を知らない人に届けたいなら、知る前の困りごとが入口になります。比較検討中の人に向けるなら、使い始めの戸惑いと解決の場面が向いています。すでに使っている人の継続や紹介を増やしたいなら、使い続けた後の変化を描きます。題材を探す前に、この1本を誰に見せたいかを一言で決めておくと、候補を集める範囲が絞れます。
社内にある材料を集める
題材の材料は、多くの場合すでに社内にあります。お客様の言葉が残っている場所を、部署ごとに当たってください。
| 材料の置き場所 | 拾える場面 |
|---|---|
| 問い合わせ・相談の記録 | 買う前に迷っている理由 |
| 営業の商談メモ | 導入を決めたきっかけ |
| サポートへの質問 | 使い始めのつまずき |
| SNSのコメント・口コミ | 使い続けた後の変化 |
| 社員が自分で使った経験 | 細かな生活の場面 |
集めるときは、要約する前のお客様の言葉をできるだけそのまま残してください。「時間がない」と要約すると平板になりますが、「保育園のお迎えが18時なのに、会議が17時半に入る」と書かれていれば、それだけで一つの場面になります。数を集める段階では良し悪しを判断せず、1件1行で並べていきます。
個人が特定される情報は、題材のメモに写さないでください。氏名や会社名、住所が分かる内容は外し、場面と困りごとだけを残します。実在の方の体験をほぼそのまま物語にしたい場合は、後で説明するとおり、ご本人の了承を取ってから進めます。
材料を「誰が・いつ・何に困ったか」の一文に直す
一文にすると、比べられるようになる
集めた材料は、書き方がばらばらで比べにくい状態です。そこで、すべてを「誰が、いつ、何に困って、どうしたかったか」の一文に書き直します。主語と時間が入ると、撮影する場面が頭に浮かぶかどうかで、候補を見比べられるようになります。
次は、架空の作り置き惣菜の宅配サービスを例にした書き直しです。左の材料は、どれも問い合わせやコメントに残っていそうな言葉を想定しています。
| 集めた材料 | 一文に直した場面 |
|---|---|
| 平日の夕食が手抜きになる | 共働きの夫婦が、木曜の夜に冷蔵庫を開けて黙る |
| 届いてから食べきれない | 一人暮らしの会社員が、金曜に余った惣菜を眺める |
| 親に送ってあげたい | 離れて暮らす娘が、父の食事が気になって電話を切れない |
直した一文には、まだ商品が出てきません。それで構いません。この段階で確かめたいのは、困りごとが具体的で、見る人が「自分もこうだ」と思えるかどうかです。商品が解決の鍵になるかは、次の絞り込みで確かめます。
一文にならない材料は、まだ早い
「品質が高い」「安心できる」のように、誰がいつ困ったのかを書けない材料は、そのままでは題材になりません。営業担当やサポート担当に、その言葉が出た具体的な場面を聞き直してください。たとえば「安心できる」と言ったお客様が、何と比べて、何を心配していたのかが分かれば、一文に直せます。聞き直しても場面が出てこない材料は、今回の候補から外します。
候補を3つの確認で絞る
一文にした候補が10件、20件と並んだら、次の3点で絞ります。一つでも当てはまらない候補は、今回の1本からは外します。
- 見たい人が、その場面を自分のことだと思えるか
- 商品が、困りごとを越える手がかりとして自然に出てこられるか
- 決めた予算と人数、場所で撮れるか
1つ目は、届けたい相手と場面の人物が近いかどうかです。社内で受けが良い場面でも、狙う視聴者の生活にない場面なら、最初の数秒で通り過ぎられます。2つ目は、商品がなくても話が終わってしまう題材を外すためのものです。商品が出てこなくても解決する話は、見終わった後に何の商品だったかが残りません。商品の出し方はショートドラマの商品の見せ方で詳しく扱っています。
3つ目は、制作の条件です。登場人物が多い場面や、病院や学校のように撮影の許可が取りにくい場所は、費用と日程に響きます。人数の考え方はショートドラマの登場人物は何人?にまとめています。条件が合わない候補でも、場面の置き場所を自宅に移す、登場人物を二人に減らすなどの工夫で残せることがあります。外す前に、制作会社に撮れる形を相談してください。
残った候補が複数ある場合は、無理に1本に絞らなくても構いません。1本目にどれを選ぶかは、狙う相手に一番近い候補を優先し、残りは次の回の題材として取っておきます。
避けたい題材と、表現の注意点
効果を約束する筋書きは、表示の規制に触れる
「この惣菜に変えたら3日で体重が落ちた」のように、商品を使えば必ず大きな変化が起きる筋書きは、ドラマであっても広告の表示として扱われます。消費者庁は、商品を実際より著しく優良に見せる表示を優良誤認表示として禁じており、表示の裏付けとなる合理的な根拠の提出を求めることができるとしています。物語の中の台詞や結末であっても、根拠を示せない効果は描かないでください。
題材としては、変化の大きさより、困りごとが少し軽くなる手前の場面を選ぶと安全です。「夕食の献立を考えずに済んだ木曜日、夫婦が久しぶりに食卓で話した」のような場面なら、効果を数字で約束せずに、商品がある生活を見せられます。結末の作り方はショートドラマの結末の作り方も参考にしてください。
お客様の声を元にするときは、了承と表示を確かめる
実在のお客様の体験を元にするときは、ご本人に了承を取り、どこまで脚色してよいかを確認します。体験の細部を変える場合は、「実話をもとに再構成しています」のような断り書きを入れるかどうかも、制作会社と相談してください。
また、広告であることを隠して、一般の人の自然な口コミのように見せることはできません。消費者庁は2023年10月1日から、広告であることが一般消費者に分からない表示を景品表示法違反としており、対象となるのは依頼した側の事業者です。お客様の声をもとにしたドラマでも、企業が作って配信する以上、PR表記を入れます。表記の範囲は広告動画のPR表記で整理しています。
競合他社の商品を思わせる人物を失敗役にする題材も避けます。見る人によっては特定の会社への批判と受け取られ、物語より先にそちらへ注意が向いてしまうためです。
1本目の題材から、次の題材へつなげる
題材を一度集めると、候補は1本分より多く残ります。外した候補には、外した理由を一言添えて残しておきます。「撮影場所が取れない」「狙う相手と違う」といった理由が分かれば、条件が変わったときにすぐ使えます。
公開後は、どの場面で見るのをやめた人が多かったか、コメントにどんな言葉が書かれたかを確かめます。コメントに書かれたお客様の言葉は、次の題材の材料になります。数字の見方はショートドラマ広告のROI・KPI設計、公開後に制作会社と話す議題は動画公開後の振り返り会にまとめています。同じ人物で場面をつないでいくなら、ショートドラマのシリーズ設計も役に立ちます。
よくある質問
商品が地味で、ドラマになる場面が思いつきません
地味な商品ほど、商品そのものより、それがない場面に目を向けると題材が見つかります。たとえば事務用品なら、締め切り前夜に必要な書類が見つからない場面のように、困りごとの方に物語があります。社内の誰に聞いても場面が出てこないときは、サポート窓口に届いた質問を読み返すと、使う人の具体的な状況が見えてきます。
BtoBの商材でも題材は作れますか?
作れます。BtoBでも、導入を決めるのは担当者という一人の人です。予算の承認が取れずに困っている担当者、引き継ぎの資料が見つからない新任者など、仕事の中の困りごとは題材になります。社内の稟議を通す場面そのものを描く方法もあり、予算の根拠のまとめ方は動画制作の稟議を通す方法で扱っています。
題材は制作会社に任せられますか?
任せることはできますが、材料は発注側にあります。制作会社は物語の組み立てを得意としていても、お客様が実際に何に困っているかは、問い合わせや商談の記録を持つ発注側の方が詳しいためです。集めた材料を一文に直す前の状態で渡し、絞り込みを一緒に進めると、企画の打ち合わせが短くなります。
社内で候補の意見が割れたときはどうしますか?
最初に決めた「誰に見せたいか」に戻って選びます。社内の好みで選ぶと、作り手が面白いと思う場面と、見る人が自分ごとにできる場面がずれることがあります。それでも決まらないときは、2つの候補を短い試作や台本の読み合わせで比べる方法があります。比べ方は動画広告のABテストが参考になります。
制作相談には、集めた材料をそのまま持ってきてください
ナイトてんしょんへのご相談では、題材が決まっていなくても構いません。問い合わせの記録や営業メモ、お客様のコメントなど、手元にある材料を個人情報を外した形で共有してください。届けたい相手と予算を伺いながら、題材の候補を一緒に絞り、撮れる形の企画へまとめていきます。
参考資料は消費者庁の公開ページ2本です(2026年10月15日確認)。記事中の宅配サービス、家族、会社員の場面は、題材の探し方を説明するために作った架空の例です。特定の商品の効果や、実在の顧客の体験を示すものではありません。