広告として作る動画は、見た人が広告だと分かる形で出すところまでを発注時に決めます。決めるのは、使う文言、表示する位置、表記を入れる担当、確認する人の4つです。投稿を担当する人が最後に思い出して付けるものとして扱うと、出し先やアカウントが変わったときに抜けます。
商品を自然に登場させるショートドラマほど、この判断が後回しになりがちです。企業の公式アカウントで出すなら広告と分かる、出演者の個人アカウントで出すなら分かりにくい、というように、同じ動画でも出し方で見え方が変わります。
この記事は、動画やショートドラマを外注する担当者向けに、発注時に決める項目を整理したものです。法的な助言ではなく、制作の実務としての手順提案として読んでください。個別の表示が景品表示法に違反するかどうかの判断は、消費者庁の資料と、社内の法務または専門家に確認してください。本文で参照した公的資料は2026年9月18日に確認しました。広告動画の全体の進め方はショートドラマ広告とは、出演者との取り決めは出演者契約と二次利用も参照してください。
責任を問われるのは、依頼した企業の側
消費者庁はステルスマーケティングは景品表示法違反となりますで、令和5年10月1日からの規制について「規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません」と案内しています。依頼した側が決めて、依頼した側が確認する前提で組み立ててください。
対象も広く、同じ資料では「インターネット上の表示(SNS投稿、レビュー投稿など)だけでなく、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌等」が挙げられています。SNSで公開する動画だから特別、という区分ではありません。
「制作会社に任せた」は、社内の説明にならない
発注先が投稿まで請け負う場合でも、表記の内容を決めるのは発注側です。制作会社が独自に「たぶんこの位置でいい」と判断すると、社内の法務が想定していた形と食い違います。当社が発注者へ最初に確認するのは、その案件で誰が表記の可否を決めるか、投稿前に誰が実物を見るかの2点です。
社内の窓口を決めるときは、担当者の役職ではなく、判断を止められる人かどうかで選びます。表記の形を変える判断が必要になるのは、たいてい撮影後の編集中か、公開の直前です。その時間帯に連絡が取れない体制なら、判断の基準をあらかじめ文書にしておく方が現実的です。投稿を代行してもらう範囲は動画の投稿は誰がやるで整理できます。
広告だと分かりにくくなるのは、出し方が変わるとき
判断に迷う場面は決まっています。出演者の個人アカウントで公開する、商品名を出さずにブランドの世界観だけを見せる、社員が自分のアカウントで会社の商品を紹介する、無償で商品を提供して感想を投稿してもらう。どれも「企業が関与しているのに、見た人には個人の発信に見える」形です。
企業の公式アカウントからの投稿は、アカウント名で広告と判断しやすい場合があります。ただし、投稿の見え方は出稿先やフォーマットによって変わるため、公式アカウントだから常に不要と決めつけないでください。迷う場合は、表記を入れて困る理由があるかを考える方が早く決まります。表記があると再生数が落ちると言われることがありますが、PR表記の影響を考える場合も、読み取れる表示を確保したうえで、冒頭や構成など他の条件と合わせて視聴データを確認します。
表記は、文言・位置・読める形の3点で決める
どの語を使うかだけを議論しても決まりません。消費者庁の同じ資料では、規制されるのは「一般消費者が広告であることを分からないもの」と説明されています。判断の軸は語の選択ではなく、その表示を見た人が事業者の広告だと分かるかどうかです。細かい判断の基準は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(2023年3月28日公表)にまとまっており、名称と公表日は消費者庁の景品表示法関係ガイドライン一覧で確認できます。
文言は案件の中で揃える
「広告」「PR」「プロモーション」「タイアップ」など、実務で使われる語はいくつもあります。どれを使うかは社内の方針で決めてかまいませんが、1つの案件の中で混在させないでください。同じキャンペーンの3本で表記が違うと、社内の確認でも、後から見返すときにも手間が増えます。
決めた文言は、台本、投稿文の下書き、依頼書の3か所に同じ言葉で書いておきます。英語と日本語を混ぜる場合は、どちらを主にするかまで決めます。ブランドの表記ルールがある会社では、広告表記もそのルールの一部として扱えるか、先に社内で確認してください。案件ごとに毎回決め直すと、判断のたびに確認の時間が発生します。
文言が揺れやすいのは、途中で出し先が増えたときです。公式アカウントだけの予定だった動画を出演者のアカウントでも出す、広告として配信する、といった変更が入ると、その場の判断で語が足されます。変更を受けたときに誰へ連絡するかまで決めておけば、後から表記を揃え直す作業を減らせます。
位置は「再生してすぐ目に入るか」で確認する
文言を決めても、置く場所によって伝わり方が変わります。投稿文の末尾でハッシュタグが並んだ最後、折りたたまれた説明文の中、動画の最後の数秒だけ、といった置き方は、途中で離脱する視聴者には届きません。実機で再生して、最初に目に入るかどうかを見てください。
確認するときは、パソコンの管理画面ではなくスマートフォンの実機で見ます。投稿文が何行目で折りたたまれるか、動画の上下がどこまで他の要素で隠れるかは、端末と画面の大きさで変わります。当社では投稿前の確認として、実際の端末で再生した画面を撮って共有し、文字が読める大きさかどうかまで見ています。テロップの色が背景と近くて読めない場合は、位置を変えるか、背景を敷くかを編集で調整します。
表記を入れる工程を、台本の段階で決める
表記の作業は、編集で画面に入れるものと、投稿時に文章として書くものに分かれます。両方が必要かどうかを案件ごとに決め、台本に書き込んでおくと、編集の終盤で慌てずに済みます。台本を確認する観点は撮影前の台本チェックにまとめています。
以下は発注時に決める項目の例です。案件ごとに内容を埋めて、制作会社と共有します。
| 決める項目 | 書く内容 | 決まっていないと起きること |
|---|---|---|
| 文言 | 使う語と表記ゆれの扱い | 本数ごとに表記が変わる |
| 表示位置 | 画面内、投稿文、その両方 | 出し先で抜ける |
| 表示の長さ | 画面内に出す秒数と大きさ | 一瞬で消えて読めない |
| 作業の担当 | 編集で入れるか投稿時に書くか | 互いに相手がやると思う |
| 確認する人 | 公開前に実物を見る担当 | 確認なしで公開される |
| 記録 | 確認した画面の保存場所 | 後から説明できない |
画面の中と投稿文で、役割を分ける
画面に入れる表記は、動画が転載されたり保存されたりしても一緒に動きます。投稿文に書く表記は、修正が簡単で、文字数の制約も緩やかです。片方だけにするか両方入れるかは、公開先と転用の予定によって決めます。広告配信に使う予定があるなら、審査や配信面の仕様も含めて先に確認してください。
編集で画面に入れる場合は、いつからいつまで出すかを台本に書きます。冒頭の1秒だけ表示して消す形は、視聴者が読み取れない可能性があります。表記を入れる前提で構図を作れば、テロップや商品と重ならない位置を最初から空けておけます。あとから足すより、台本の段階で決めておく方が仕上がりは安定します。
当社の制作現場では、画面の下側はセリフのテロップ、上側はアカウント名やUIに隠れやすい、という前提で配置を考えます。縦型の動画では、再生画面に重なる要素が出し先ごとに違うため、想定する出し先を先に聞いてから位置を決めます。同じ動画を複数の出し先で使うなら、どこに出しても隠れない範囲に収める判断になります。
プラットフォームの機能は、確認してから使う
多くのSNSには、タイアップやプロモーションであることを投稿に示す機能があります。名称、表示される文言、表示位置、利用できる条件はサービスごとに違い、更新もされます。使う予定があるなら、投稿の直前ではなく、企画の段階で管理画面を開いて現在の仕様を確認してください。
機能をオンにしただけで社内の確認を終わりにしないでください。実際の画面で表示を見て、想定した位置に出ているかを確かめます。出演者のアカウントから投稿する場合は、そのアカウント側で機能が使える状態か、設定を誰が操作するかも決めておきます。仕様が変わって表示が消えていたときに気づけるよう、公開後の画面も記録として残しておくと安心です。
機能に任せきりにしない理由は、表示が自動で付く範囲が限られるためです。機能による表示は、そのサービスの画面で見たときにだけ出ます。動画を保存して別の場所で再生した場合や、画面を録画して転載された場合には残りません。転載まで想定する案件では、画面の中に入れる表記と併用するかを検討してください。
出演者やクリエイターに依頼するときの伝え方
規制の対象が依頼した企業側である以上、表記の条件は企業から示します。「常識の範囲でお願いします」と伝えるだけでは、相手ごとに解釈が変わります。依頼書に、使う文言、表示する位置、投稿前に確認させてほしい旨を書いてください。
依頼書に書く条件を、報酬の条件と一緒に渡す
投稿を依頼する相手には、撮影や投稿の条件と同じ場所に表記の条件を書きます。後から口頭で追加すると、相手が既に下書きを作っていた場合に修正の手間が生じます。商品の無償提供、割引、金銭の支払いなど、企業から何を渡しているかによって、第三者から見た関係も変わります。
社員が自分のアカウントで会社の商品を紹介する場合は、会社の指示や依頼があるかどうかで扱いが変わります。社内から投稿を依頼するなら、社外のクリエイターへ依頼するときと同じ条件を示してください。判断に迷う関係を社内で抱えたままにせず、法務や専門家に確認する時間を日程に入れておきます。当社が発注者へ確認するのも、誰に何を渡しているかという関係の整理です。
二次利用と広告配信は、別の条件として確認する
投稿された動画を広告として配信する、公式アカウントで再投稿する、採用の説明会で流す。こうした使い方は、最初の投稿とは別の判断が必要です。出演者との取り決めで使える範囲を確認したうえで、その使い方に応じた表記を考えます。使い回しの判断は制作した動画の使い回しで整理しています。
広告配信では、配信面ごとに表示のルールや審査があります。オーガニックの投稿として問題がなかった形でも、そのまま配信できるとは限りません。転用の予定がある案件では、表記の形を決める段階で配信の予定を共有しておくと、作り直しを避けられます。費用の考え方はショートドラマ広告の費用相場を参照してください。
公開後に見直すときの進め方
公開してから表記の不足に気づくこともあります。その場合、投稿を消すか、投稿文を直すか、動画を作り直すかの判断が必要です。消すと決める前に、何が足りないのかと、直して残せるのかを整理してください。
直せるものと、作り直しが要るものを分ける
投稿文に文言を足す、プラットフォームの機能をオンにする、といった対応は公開したまま直せる場合があります。画面の中に表記を入れる必要があると判断したなら、編集と再投稿が必要です。再投稿すると初回投稿の反応データは引き継がれないため、作り直す本数と影響を先に確認します。
過去の投稿をまとめて見直す場合は、公開日、出し先、関係者を一覧にしてから始めます。件数が多い案件では、判断の基準を1枚にまとめ、同じ基準で分類する方が早く終わります。当社でも、公開済みの動画に手を入れるときは、対象の一覧を作ってから作業の順番を決めています。
同じ判断を次の案件に持ち越す
一度決めた表記の形は、次の案件の初期設定として使えます。案件ごとに毎回ゼロから議論すると、担当者が変わったときに判断が揺れます。決めた文言、位置、確認の手順を社内の資料として残し、発注時に制作会社へ渡してください。
社内の資料には、判断した理由も短く書いておきます。「この位置にした」だけでは、次の担当者が状況に合わせて考え直せません。公的資料は更新されるため、参照した資料の名称と確認日も一緒に残します。当社が案件の引き継ぎで確認しているのも、決定の内容とその理由の2つです。
見直す時期も決めておきます。公的資料の更新、出し先の追加、担当者の交代のいずれかが起きたら読み直す、という程度で十分です。期限を切らずに置くと、数年前の判断をそのまま使い続けることになります。担当が変わるときの引き継ぎはSNS運用の担当者交代でも整理しています。
広告表記についてよくある質問
Q1. 公式アカウントの投稿にもPR表記は必要ですか?
企業の公式アカウントであることが見た人に伝わるかどうかで判断が変わります。アカウント名やプロフィールで企業の発信と分かる場合と、ブランドの世界観だけを見せていて発信元が分かりにくい場合では、必要性の判断が違います。個別の判断は消費者庁の資料と社内の法務に確認してください。
Q2. 表記を入れると再生数は落ちますか?
当社の制作現場では、冒頭の見せ方や話の構成の方が視聴維持に影響します。表記の有無だけで再生数が決まるとは考えていません。目立たせたくないという理由で読めない位置に置くと、確認のやり直しが発生し、公開が遅れます。
Q3. 商品名を出さなければ表記は不要ですか?
商品名の有無だけで決まるものではありません。ブランドが特定できる見せ方をしていれば、見た人は企業の発信だと受け取ります。判断に迷う見せ方をするなら、企画の段階で法務に相談してください。
Q4. 出演者が自分の判断で表記を書かなかった場合はどうなりますか?
消費者庁の資料では、規制の対象は商品・サービスを供給する事業者であり、依頼を受けた第三者は対象とならないと案内されています。だからこそ、条件を依頼書で示し、投稿前に確認する手順を発注側で用意しておきます。
Q5. 動画の最後に表記を入れれば足りますか?
最後まで見た人にしか届きません。途中で離脱する視聴者にも伝わるかを、実機で再生して確認してください。動画の尺、テロップの量、表示する秒数によって読み取りやすさが変わります。
表記の条件も含めて相談する
ナイトてんしょんへ広告動画やショートドラマを相談する際は、公開するアカウント、出演者の予定、広告配信の有無、社内で確認する担当をあわせてお知らせください。台本の段階から表記の位置を含めて設計できます。ショートドラマ制作のサービスと制作実績を確認のうえ、お問い合わせからご相談いただけます。
表記の話は、どのアカウントで出すかを決める段階で一緒に片づけてください。順番をひとつ前にずらすだけで、公開直前の作り直しは減ります。