ショートドラマの企画が複数届いたら、まず「見た人に何を分かってほしいか」と「撮影で変えられない条件」をそろえて比較します。そのうえで、人物が何に困り、何を選ぶ話なのかを読み、目的に合う案を選んでください。社内の人気投票や参考動画の再生数だけでは、自社がその案を作る理由は決まりません。

この記事は、企業の発注担当者が制作会社から受け取った企画案を比較し、脚本へ進める1案を決めるための手順です。企画書そのものの書式は企画書の作り方、完成台本の確認は台本チェックで扱います。ここでは、まだ台詞やカットが固まっていない段階の判断に絞ります。比較例と返答例は当社編集部による創作で、顧客案件や効果を確認した事例ではありません。

比べる前に、今回決める範囲を合わせる

企画の選定と予算の承認を、同じ会議で進めることはあります。ただし、「この物語を具体化したい」という判断と「この金額で撮影を発注する」という判断は分けて記録しましょう。粗いあらすじへの賛成だけで、出演者やロケ場所まで確定したことにすると、後から条件を変えにくくなります。

比較する資料の詳しさもそろえます。A案は完成台本、B案は数行のあらすじなら、A案だけ場面が想像しやすくなります。両案とも、対象となる視聴者、主人公の困り事、最後の選択、商品が登場する理由、必要な撮影条件を書き出してから比べてください。足りない欄は評価を下げる前に制作側へ確認します。

先に決めること書く内容の例
今回の目的商品の使う場面を知ってもらう
今回選ぶ範囲脚本へ進めるあらすじ
固定する条件商品・公開先・希望時期
まだ決めないこと出演者の確定・細かな台詞

固定条件は必要なものに絞ります。出演者や場所をすべて先に指定すると、案の違いが出せない場合があります。反対に、販売開始日や実際に提供している機能など、企画の都合で変えられない事実は先に共有します。

流れをつかむ 条件をそろえてから物語を選ぶ 1 目的を合わせる 誰に何を伝えたいか 2 案を比較する 困り事と最後の選択 3 条件を返す 残す場面と確認待ち
編集部による企画選定の提案

架空の2案を、同じ目的で比較する

架空の商品は、持ち手を付け替えて使う小さなバッグです。今回の目的を「通勤と休日で持ち方を変えられることを、使う場面と一緒に知ってもらう」と設定します。実在商品の性能を説明する例ではありません。実際に制作する際は、付け替え方や使用条件を商品担当者が確認する必要があります。

A案:見間違いから、使い方の違いに気付く

職場の同僚が休日に会い、「今日は違うバッグなんだ」と声を掛ける。主人公は仕事用の持ち手を出し、同じバッグだと示す。同僚は自分の荷物を見て「私、二つ持ってきた」と笑い、二人が歩き始める、というあらすじです。

この案は、相手の見間違いをきっかけに、持ち方の違いを見せる構成です。ただし、企画書にそう書いてあっても、画面で違いが分かるとは限りません。商品の形、衣装、持ち方の見え方を確認し、説明なしでも二つの状態を見分けられるか、絵コンテで検討する余地があります。

B案:出発直前の迷いを、選び直す行動で見せる

友人との外出に遅れそうな主人公が、玄関で二つのバッグを見比べている。友人から「まだ?」と連絡が届く。主人公は持ち手を付け替え、荷物を入れ直さずに出かける、というあらすじです。

この案では、使い方の違いが主人公の行動と結び付きます。一方、持ち手が短時間で簡単に変わる印象を与えるため、撮影する動作と商品仕様の照合が必要です。「遅刻しそう」という場面が強すぎて、商品の使い方が記憶に残らない可能性もあります。どちらが伝わるかは、あらすじだけでは確定しません。

観点A案B案
話のきっかけ同僚の見間違い出発前の迷い
商品を見せる場面違いを相手へ示す持ち方を選び直す
主な確認点二つの状態の見分け付け替え動作の正確さ
撮影の候補外出先と人物の会話玄関と手元

同じ目的なら、A案とB案で「使い方を見せる方法」が違うことを比較できます。A案だけ認知、B案だけ購入を目的にすると、評価の物差しが変わります。目的が違う提案を受け取った場合は、先にどの課題へ取り組むかを決めてから選びましょう。

面白さは、好き嫌いを具体的な場面へ置き換える

「A案は面白い」「B案は地味」という感想は、企画の検討を始める手がかりになります。ただし、そのままでは制作側が何を残せばよいか分かりません。どの一言や行動で先を見たくなったのか、どこで結末を予想できたのかを説明してください。

A案なら「同じバッグだと分かった後の、同僚が二つ持ってきたという返答を残したい」と言えます。B案なら「どちらのバッグを持つか迷う理由が薄いので、選び直す前の困り事を具体化したい」と返せます。企画の良し悪しを点数だけで合計するより、残す場面と直す場面が脚本へ引き継がれます。

結末だけを入れ替える前に、前半の理由を確認する

A案の笑える返答をB案の最後へ付ければ、両案の長所が合わさるとは限りません。B案に同僚が登場しないなら、返答のために人物と場面を追加する必要があります。短い作品では、その追加によって商品を見せる時間や主人公の選択も変わります。

複数案から要素を選ぶ場合は、主人公が何に困り、なぜ最後の行動を選んだかを、混ぜた後のあらすじで読み直します。制作側へは「Aの結末とBの冒頭を合体して」だけで返さず、気に入った理由を渡して、新しい構成として成立するか検討を依頼してください。

商品の事実と、撮れる条件は点数の外で確認する

面白い案でも、未確認の商品性能を前提にしていれば、その状態で撮影へは進めません。採用候補の評価と、解消が必要な条件を別々に残します。演出の好みで補える項目と、商品担当者の回答が必要な項目を一つの総合点に混ぜないためです。

先のB案なら、付け替えの方法、実際に必要な操作、荷物を入れたまま扱えるかを確認します。確認の結果、複数の操作が必要だと分かった場合は、省略すると誤解を招かないか、場面を変更する必要があるかを検討します。まだ確認していない項目を「問題なし」として企画を選ばないようにしてください。

撮影条件では、使える場所、必要な商品、出演者、手元を見せるカット、公開希望日を照合します。A案を選ぶ場合も、職場と外出先の両方を撮るのか、会話だけで通勤時の持ち方を説明するのかで準備が変わります。場所の数だけで安い高いを決めず、その構成を撮るための条件を制作会社に確認します。

見積もりへ進む前に、企画ごとの追加条件を制作サービスへ相談できます。「A案を第一候補にしたいが、使える場所は社内のみ」と伝えれば、別の場所を手配する案と、社内で成立させる改稿案を比べるための相談になります。

採用候補は、同じ納品条件の総額でも比べる

企画の比較時に「A案のほうが撮影場所が多い」という理由だけで価格を決めないようにします。使用できる場所と時間、出演者の拘束、必要な商品、完成本数をそろえ、制作会社へ条件別の見積もりを依頼してください。当社編集部からの提案は、候補を絞る会議の前に、次の3状態へ分ける方法です。

条件の状態企画会議で決めること
予算・場所とも確認済み物語と商品理解を比べる
金額が未確定見積もり確認を採用の条件にする
必須の場所が使えない場面を変えて再提案を依頼する

これは企画の点数表ではありません。未確定の費用を0円として加点せず、追加回答が届くまで選定を保留できるようにする整理です。例えばA案の外出先が使えず社内で撮る構成に変える場合は、同じ企画名でも見せる場面が変わります。元の案の採用理由が残っているかも読み直します。

当社の公開料金はPOV4万円/本〜・3本以上、ライト5万円/本〜・3本以上、本格15万円/本〜・2本以上で、最低本数の総額は12万円〜、15万円〜、30万円〜です。1本の企画を選ぶ会議であっても、発注する本数と納品条件を別に確認してください。企画だけで終了する場合と制作まで進む場合の支払額、再提案の費用は契約書・見積書で確認します。採用の返答には、企画の承認と発注金額の承認をそれぞれ書き残してください。

参考動画の再生数を、自社案の予測にしない

参考動画は、台詞の調子、商品の登場の仕方、画面の構成などを伝える資料になります。一方、他社動画の数字には配信条件や公開後の期間などの違いがあります。同じ演出を採用すれば同じ再生数になるという約束には使えません。

TikTokのTop Adsの公式ヘルプは、成果の高い広告のうち広告主が掲載を許可したものを、地域・業種・広告の目的で絞り込んで見られる参考集として説明しています。これは他の広告表現から着想を得る資料です。今回の企画選定では、掲載例を市場全体の平均や自社の成果予測として扱いません(資料確認:2026年10月26日)。

参考にする際は、URLの横に「冒頭の質問」「商品を使う動作」「最後の案内」のように、見てほしい部分を書きます。作品全体を再現する依頼と混同しないよう、参考にする要素と自社向けに作る場面を区別してください。複数案のすべてに同じ参考動画を付ける場合も、それぞれどの点を参照したのかが分かる説明を求めます。

意見が割れたら、確かめれば決まる問いへ戻す

商品担当者は正確さ、広報担当者はブランド表現、制作担当者は物語や実現性を見ています。「部署ごとに違う案が好き」で止めず、判断を分けた理由を聞きましょう。商品の見え方が不安なら絵コンテ、台詞の自然さが不安なら短い読み合わせなど、確かめたいことに合う方法を選びます。

完成動画を作る前でも、二つのあらすじを同じ詳しさで説明し、初めて読む人が商品を使う場面をどう理解したか聞くことはできます。ただし、社内の少人数の意見を、実際の見込み客の反応と同じに扱いません。「採用案の予測が当たった」ではなく、説明不足を見つけた記録として残します。映像ができた後の確認はショートドラマの試写を参照してください。

公開して比較する場合は、別の設計が必要です。Google広告の動画テストには、成功指標を選んで動画広告を比較する仕組みと、利用できるキャンペーンなどの条件があります。社内で2案を選んだだけで、このような配信上の比較が成立するわけではありません(公式資料確認:2026年10月21日)。

両案を制作して比較する費用を掛けるかは、その結果で次の発注をどう変えるかまで考えて決めます。素材の作り分けは動画広告のABテストの発注に整理しています。

関係を整理 不明なことに合う確認方法を選ぶ 迷っている点 確認するもの 商品の見え方 絵コンテ 台詞の自然さ 読み合わせ 実現できるか 撮影条件と見積もり
確認の結果は成果予測と分けて残す

採用理由と、脚本で直す条件を一緒に返す

制作会社への返答には、選んだ案、選んだ理由、残す要素、変更してほしい要素、確認が必要な事実を載せます。「A案でお願いします」の後に全部の部署から別々の変更が届く状態を避けるため、社内の返答をまとめる窓口と、次に確認する版を決めてください。

先の架空例なら、次のように返せます。

A案を脚本化する第一候補にします。同じバッグの持ち方が変わったと、同僚が気付く場面を残したいです。撮影場所は社内のみを予定しているため、外出先を使わず成立する構成を提案してください。持ち手の操作と見せてよい商品状態は、商品担当が確認して返答します。撮影の発注は、脚本と条件別の見積もりを確認してから決めます。

この段階では、企画の採用と撮影の発注を分けています。すでに契約している制作工程がある場合は、その範囲に合わせて返答してください。追加の企画案や再提案を頼むなら、回数や費用が契約内かも確認します。

返答に残す欄架空例での内容
採用理由持ち方の違いを会話で見せる
残す場面同僚が違いに気付く場面
修正する条件社内だけで撮る構成
確認待ち商品の操作と状態
次の確認物脚本と条件別の見積もり

採用しなかった案も、今回はどの条件で選ばなかったかを残します。B案の使用動作を将来使いたいなら、そのまま制作を進める承認にせず、次の企画で再検討する候補として扱います。日が経てば商品や目的が変わるため、保留案を後日使うときも条件の確認が必要です。

企画比較についてよくある質問

再生数が多そうな案を選べばよいですか?

再生への期待だけでなく、誰に何が伝わり、どの案内先へ進んでほしいかを確認します。再生予測の根拠や条件が分からない場合は、確定値として評価表へ入れず、企画側の仮説として扱います。

社内で多数決をしてはいけませんか?

意見を集める方法にはなります。ただし、票数だけでは撮影できるか、商品情報が正しいかは判断できません。投票理由を場面ごとに聞き、事実と制作条件を確認したうえで決裁者が選びます。

複数案の良いところを一つにまとめられますか?

組み合わせた後も、人物の困り事と選択がつながるかを確認します。新しい人物や撮影場所が必要になる場合もあるため、元の案の部分修正として扱えるかを制作会社へ相談してください。

どの案も決め手がありません。

目的が曖昧なのか、人物の行動が想像できないのか、商品を入れる理由が弱いのかを分けます。最初から案数だけを増やすより、足りない問いを伝えて提案の条件を見直す方法があります。

企画相談には、迷っている理由を添える

ナイトてんしょんへショートドラマの制作相談をする際は、今回伝えたいこと、公開先、撮影で変えられない条件をお知らせください。企画案がある場合は、選びきれない箇所とその理由も添えていただけます。まだ案がない場合は、商品や顧客のどんな場面を描きたいかから相談できます。

制作サービスでは企画・台本から撮影・編集までの範囲を確認できます。企画比較の結論は、人気のあった案名だけでなく、脚本へ残す場面と、撮影前に解消する条件まで書いて制作側へ返しましょう。