「社員のお子さんに出てもらいたい」「家族の場面があるので子役を呼びたい」。ショートドラマではよくある相談ですが、撮影日が決まってから調べ始めると間に合わないことがあります。

先に結論を書きます。中学卒業の年度末までの子どもを出すときは、撮影の前に労働基準監督署長の許可が必要になる場合があります。許可の申請には学校長の証明書と親権者の同意書が要るので、書類を集める日数を考えると、出演者を決めるのは撮影の3週間前を当社の進行上の確認目安としています。許可に要する日数を保証する期限ではありません。当社は制作の進行表にこの期限を置いています。

年齢ごとの違いを先に一覧にすると、次のとおりです。条文は労働基準法(e-Gov法令検索)の第56条・第57条・第60条・第61条で確認できます。

項目中学卒業の年度末まで年度末の翌日〜18歳未満
許可要る場合がある(第56条)不要
時間授業の時間と合わせて1日7時間・週40時間まで。時間外・休日の労働もできない(第60条)時間外・休日の労働はできない(第60条)
深夜の禁止原則、夜8時〜朝5時は禁止(第61条)原則、夜10時〜朝5時は禁止(第61条)
書類年齢の証明書、学校長の証明書、親権者の同意書(第57条)年齢の証明書(第57条)

それぞれの根拠と、撮影の段取りへの落とし方を以下で説明します。出演者の決め方から相談したい場合は撮影の相談窓口からご連絡ください。誰に出てもらうかの選び方はショートドラマの出演者の選び方、契約と二次利用の範囲は出演者契約と二次利用にまとめています。

関係を整理 児童の出演は許可の要否を先に確認 労働者に当たる場合 撮影前の確認 15歳の年度末まで 労基署へ許可を相談 年度末後〜18歳未 満 年少者の制限を確認
学年ではなく生年月日で確認。対象事業・業務の要件あり。

15歳の年度末を境に、手続きが変わる

労働基準法は、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終わるまでの子を「児童」と呼び、労働者として使ってはならないと定めています(第56条第1項)。ほとんどの子は中学を卒業する年度末までがここに当たります。

例外があります。映画の製作または演劇の事業については、健康や福祉に有害でない軽易な業務であることを条件に、所轄の労働基準監督署長の許可を受ければ、修学時間外に限って使うことができます。しかもこの2つの事業だけは、満13歳未満の子も許可の対象になります(第56条第2項)。

では、SNSに出すショートドラマの撮影が「映画の製作」に当たるのか。ここは自分で判断せず、所轄の署に聞いてください。企画の内容、報酬の有無、指示の出し方によって扱いが変わります。社員の子どもに無償で出てもらう場合も、そもそも労働者に当たるかという入口の判断が要ります。

年度末を過ぎて高校生になれば、この許可は不要になります。ただし18歳未満は「年少者」として別の制限が残るので、手続きがゼロになるわけではありません。

学校の時間を足して、1日7時間まで

許可を受けて児童に出てもらう場合、労働時間は修学時間を通算して1週間40時間、1日7時間が上限です(第60条第2項)。ここが実務でいちばん効いてきます。

学校の授業が6時間ある日なら、残りは1時間しかありません。着替えや待機など、使用者の指揮命令下にある時間も含めて確認してください。移動時間を一律に労働時間へ算入できるとは限りません。授業のある日に撮影する場合は、修学時間と撮影に伴う労働時間を確認して日程を組みます。土日や長期休暇でも、許可条件と労働時間の上限は確認が必要です。

さらに、18歳未満には時間外労働と休日労働の規定が適用されません(第60条第1項)。大人のキャストなら「1時間押しても最後まで撮る」ができる場面で、子どもは押した分を翌日に回す必要があります。撮り直しの余地を同じ日に作らない前提で香盤を組むのは、このためです。

夜は何時まで撮れるか

深夜業の原則と、演劇に限った特例を分けて確認します。18歳未満は原則、午後10時から午前5時まで使えません(第61条第1項)。児童はさらに厳しく、午後8時から午前5時までが禁止です(労働基準法第61条第5項)。

ここに例外がひとつあります。演劇の事業に使われる児童が演技をする業務については、この時刻が午後9時と午前6時に読み替えられます(厚生労働省の特例通知)。舞台の子役のための緩和で、対象は演劇の事業です。映像の撮影がここに含まれると読むのは無理があるので、当社は児童の労働が午後8時より前に終わるよう、撮影後の片付け等も含めて進行を組みます。

関係を整理 年齢別の深夜労働の禁止時間 対象 原則の禁止時間帯 児童 20時〜翌5時 児童の演劇の演技 21時〜翌6時 児童以外の18歳未 満 22時〜翌5時
労基法61条と特例通知。演劇の特例を動画撮影へ適用しない。

つまり、夕方から夜にかけての場面を子どもと撮るのは、実務上かなり難しい。台本の段階で夜のシーンを室内の暗い画で作れないか、あるいはその役を大人に振り替えられないかを見ておくと、撮影日に慌てずに済みます。

事業場に置く3つの書類

年少者を使うときは、年齢を証明する書類を事業場に備え付けます。児童の場合はこれに加えて、学校長の証明書と親権者の同意書が必要です(第57条)。

備え付けるのは「事業場」です。誰が使用者になるかで置き場所が変わるので、制作会社が出演者と契約するのか、発注側が直接依頼するのかを先に決めておいてください。発注側が自社の社員の子どもに直接声をかけた場合、書類をそろえる役割も発注側に来ることがあります。

二次利用の同意は、労基法とは別の話です。撮った動画を広告に回すのか、何年使うのか、といった範囲は親権者から書面でもらいます。ここを撮影当日に口頭で済ませると、翌年の広告転用で止まります。

台本と香盤で、先に決めておくこと

書類の話とは別に、当社が制作の前段で潰している論点を書いておきます。子どもが出る撮影は、法律を守った上でさらに現場の設計が要ります。

台本を書く段階では、水に入る、高い場所に上がる、長時間食べ続ける、といった場面を子どものカットから外します。許可の条件が「軽易な業務」である以上、企画そのものを条件に合わせて作るほうが早い。

香盤では、子どものカットを午前に固めます。撮影は後半ほど押すので、後ろに置くと制限時間に当たります。あわせて親権者の同伴を前提にして、待ち時間の場所を確保しておく。待っている時間も子どもにとっては拘束です。

学校がある日を避けるのは当然として、定期テストの期間も外します。学業への影響を減らすための制作上の配慮です。

よくある質問

社員の子どもに無償で出てもらう場合も、許可は要りますか。 労働者に当たるかどうかで変わります。こちらが指示を出して演じてもらい、対価を払うなら労働者として扱われる可能性が高い。無償で自由に参加してもらう形でも、撮影の指示を出していれば判断は分かれます。撮影日が決まる前に所轄の署へ相談してください。

街で遊んでいる子どもが背景に映るのはどうですか。 出演ではないので、この記事で書いてきた労基法の話には当たりません。ただし肖像権と個人情報の問題は残るので、撮影の範囲と知らせ方を別に設計する必要があります。

AIで子どもを生成すれば手続きは不要ですか。 労基法の手続きは発生しません。実在の子どもに似せないことと、生成の元になった素材の権利を確認することが条件になります。実写とAIの使い分けは出演者の選び方で整理しています。

許可が下りるまで、どのくらいかかりますか。 署によって差があるので、事前に確認してください。当社が撮影の3週間前を判断の期限に置いているのは、書類の取得と申請、そこから先の不確実な待ち時間を見込んだ目安です。

撮影日から逆算する

子どもが出る企画は、キャスティングの判断が撮影日を決めます。出したい場面が夜なら台本から、撮影が平日しか取れないなら企画から見直す。順番が逆になると、書類がそろった頃には撮影日が過ぎています。

企画の段階で相談していただければ、この条件を織り込んだ台本と香盤で組みます。お問い合わせからご連絡ください。撮影当日に発注側が用意するものは撮影で発注側が用意するものにまとめています。

参考にした資料

この記事は制作会社の実務としてまとめたものです。個別の企画がどの事業に当たるか、許可が必要かどうかの最終的な判断は、所轄の労働基準監督署または専門家にご確認ください。