動画制作の相見積もりでは、本数・尺・撮影・修正・権利・納品物の条件をそろえ、総額と追加費用を比較します。同じ条件でも、制作体制や料金設定によって金額は変わります。金額差だけで品質や対応力を判断しないことが出発点です。

以下では見積書に確認する7項目と、不明点を各社へ聞き返す手順を整理します。比較する社数は社内の調達規定や案件に応じて決めます。制作会社の体制や作品を選ぶ段階は制作会社の選び方、依頼条件の準備はオリエンで渡す情報を参照してください。

金額差の前に、各社が置いた前提を確認する

依頼内容に未定の項目があれば、各社が異なる仮定で見積もる場合があります。社員出演と外部キャスト、支給台本と企画からの依頼などを、同じ欄に並べて確認します。下の組み合わせは比較項目の例で、左側が必ず安くなるという価格表ではありません。

同じ軸で比較 金額を比べる前に、条件をそろえる 比較項目 条件例A 条件例B 出演 社員出演 外部キャスト 企画 支給案あり 企画から依頼 撮影 自社の場所 外部の場所 用途 SNS投稿 広告にも利用
各社の見積条件を確かめる比較例
書かれていない前提 条件の例A 条件の例B
出演者 社員出演 外部の選考
撮影場所 発注者の会社で撮る 外部で手配
撮影日数 まとめ撮り 複数日に撮影
修正 1回まで 範囲と上限を相談
使う範囲 SNSに投稿するだけ 広告配信・二次利用まで含む
企画 発注者の企画を撮る 企画・構成から作る

条件が違う項目は、必要な作業をそろえた再見積もりで比較します。条件をそろえても、料金体系や制作体制による差は残ります。金額差の原因を推測せず、各社の説明と提案を確認してください。

見積書で見る7項目

金額を横に並べる前に、次の7項目が各社の見積書で読み取れるかを確認します。読み取れない項目があれば、それがそのまま質問リストになります。

1. 何本ぶんで、1本あたり何秒か

同じ「3本」でも、15秒と60秒では作業量が違います。尺が書かれていない見積もりは、比較の土台に乗りません。

2. 撮影日数と、その日に何本撮る想定か

制作費の中で大きいのは撮影日の人件費です。1日で3本撮る前提と、3日かけて3本撮る前提では、金額が変わって当然です。ここが見積書に無ければ必ず聞いてください。

3. 修正の回数と、その範囲

「修正2回まで」と書いてあっても、何を1回と数えるかは各社で違います。テロップの誤字直しと、構成の作り直しが同じ1回にカウントされる会社もあります。回数だけでなく、どこからが追加費用になるかを確認します。修正依頼の出し方は動画制作の修正依頼の出し方に整理しました。

4. 出演者の費用と、その内訳

出演料が「一式」なのか、人数×拘束時間で積まれているのか。どちらの書き方でも、延長料金が発生する条件を確認します。あわせて、二次利用の範囲が出演料に含まれているかを見ます。含まれていないと、広告に転用する段階で別料金の交渉になります。権利の扱いはショートドラマの出演者契約と二次利用にまとめています。

5. 素材の権利と、納品されるデータ

完成データだけなのか、撮影素材(未編集の映像)も納品されるのか。後から自社や別の会社で編集したい場合は、元データの納品と編集に必要な利用許諾を確認します。完成データの保有だけで、あらゆる再編集が認められるとは限りません。納品物の見方は動画制作の納品データで受け取るものに書いています。

6. 使ってよい範囲(媒体・期間)

SNSの自社アカウントだけなのか、広告として配信してよいのか、社内の採用説明会で流してよいのか。利用範囲の変更により、追加料金や権利者との再調整が必要になる場合があります。予定用途と、将来検討する用途を分けて相談します。転用の考え方は制作した動画の使い回しにまとめました。

7. 追加費用が発生する条件

延長・再撮影・キャンセル・スケジュール変更。この4つの扱いが書かれているかを確認します。記載があることだけで、その会社の実務経験や信頼性を証明できるわけではありません。起きた場合の連絡先、判断方法、費用の算定を聞きます。

「一式」の中身は、含む作業と除外事項で確認する

一式表記でも、別紙の仕様書で範囲が分かれば比較できます。内訳がない場合は「台本、撮影、編集、修正、納品のどこまで含むか」「対象外の作業は何か」を質問します。細かな原価の開示を求めることと、発注する作業範囲を明らかにすることは分けましょう。

回答の速さだけで品質は決められません。担当者が確認に必要な時間を示し、依頼条件と矛盾しない回答を残せるかを見ます。「撮影一式」の中に場所代が入るのか、出演料は別かなど、見積書の同じ箇所を指して聞くと認識をそろえやすくなります。

比較表の空欄は0円で埋めず、「未確認」と書きます。予算超過を避けるには、追加になり得る項目を明らかにしてから正式発注することが必要です。

安い見積もりが、あとで高くなる3つの経路

追加費用を確認する場面の例です。元の仕様への適合と、新しい要望を分け、費用を負担する側を個別に確認します。

経路 起きること 見積もり時の防ぎ方
修正の追加 修正範囲の拡大 範囲と回数を確認
再撮影 撮影内容の変更 変更理由と負担を確認
用途の追加 利用先の追加 予定用途を伝える

追加が必要になった原因は個別に確認します。発注側の要望追加、制作側の仕様不一致、天候などの外部事情では負担の判断が違います。すべてを発注側の後出しと決めつけず、元の合意と変更内容を照合し、費用・納期への影響を作業前に相談します。

発注前に、見積もりと正式な取引条件をそろえる

見積書の比較が終わったら、発注する作業、金額、納期、支払期日を正式な書面やメールに反映します。見積書の7項目だけで法定の明示事項を満たすとは限りません。口頭の発注後に確認する運用にせず、必要な事項を先に確認します。

2026年の取適法では、対象となる取引について、発注時に内容を直ちに書面または電磁的方法で明示する義務があります。具体的な事項は、検査する場合の完了期日や支払期日などを含みます。公正取引委員会「委託事業者の義務」で確認できます。

適用は双方の資本金・従業員数の区分と委託内容から確認します。規模だけで対象と決めつけず、フリーランス法など別の法律が適用される場合も照合します。取引区分に迷う場合は公正取引委員会の取適法Q&Aと契約を法務担当へ提示してください。記録があっても紛争が起きないと保証はできませんが、合意と変更を照合する資料になります。

継続を前提にするなら、1本の単価では比べない

単発のキャンペーンと、継続運用では見積もる範囲が異なります。継続して出す前提なら、比較の単位も変わります。

まとめ撮りで移動や設営を共用できる場合があります。ただし、本数が増えると撮影日や出演者の拘束、編集・確認の工数が増えることもあります。本数を増やせば単価が下がると仮定せず、実際に予定する制作条件で見積もってもらいます。

比べるときは、次の形にそろえると差が見えます。

  1. 月に何本出すかを先に決める(本数が決まらないと単価は比べられない)
  2. その本数を1か月で作る前提で、各社に見積もってもらう
  3. 1本あたりに割り戻して並べる(単価にそろえて見る)
  4. 2か月目以降の金額も同時に聞く(初回だけ安い見積もりを見分けられる)

4つ目が抜けている相見積もりは多く、そして効きます。初回に企画設計費が乗っている会社は2か月目から下がり、初回が安い会社は2か月目から上がることがあります。比較期間は予定する契約期間にそろえます。初期費用、月額費用、最低契約期間、中途終了の条件を含めた総額と、月ごとの支出を併記してください。

当社の制作サービスでは、企画・撮影・編集・配信までの対応を案内しています。ただし、自社で台本や素材を用意する場合も、何を依頼するかは見積書で明らかにする必要があります。「一貫対応」という説明だけで、今回の発注範囲がすべて含まれるとは判断しないでください。

相見積もりの進め方

依頼する側の段取りとしては、次の順番で比較条件をそろえます。

  1. 条件を1枚にまとめる(本数・尺・出演者・場所・修正回数・使う範囲・希望納期)
  2. 同じ1枚を全社に渡す(会社ごとに口頭で補足を変えない。比較できなくなります)
  3. 見積書の項目名が違う場合は、こちらで7項目に並べ替える
  4. 読み取れない項目を各社に質問する(この時点で対応の質が見える)
  5. 金額と、含まれる範囲を並べて社内で判断する

条件が未定なら、見積依頼時に未定事項と仮定を明示し、各社の提案を比較します。ある会社から受け取った非公開の企画や原価資料を、そのまま他社へ配ることは避けます。共通条件を更新したら、検討中の各社へ同じ変更を伝えます。

よくある質問

Q. 相見積もりは何社取るのが適切ですか?

社内の調達規定と、候補を比較できる時間から決めます。3社は比較例であり、必須数ではありません。2社でも条件と判断基準がそろえば比較できます。必要な範囲を先に整理しましょう。

Q. 相見積もりを取っていることは、伝えたほうがいいですか?

伝えて問題ありません。むしろ伝えたほうが、各社が比較されることを前提に内訳を書いてくれます。隠して進めると、後から条件をそろえ直す手間が発生します。

Q. いちばん安い会社を選んで大丈夫ですか?

金額の差が「省いた前提」から来ているのかを確認してからにしてください。条件がそろっていても、納期に対応できる体制、作品の品質、連絡と確認の方法を確認します。安価であることだけで問題がないとも、品質が低いとも判断できません。

Q. 見積書に「一式」としか書かれていません。

含まれる作業を箇条書きで出してもらってください。出てこない場合は、その見積もりを比較の土台に乗せられません。金額を下げる交渉より先に、内訳を出す依頼をしてください。

Q. 予算が足りないときは、どこを削るべきですか?

目的を満たすために必要な場面と納品物を確認し、複数の削減案を見積もります。本数を減らす、場所をまとめる、別尺を後日にするなど、金額と作品への影響を並べて選びます。共通の削減順序はありません。

Q. 見積もりの有効期限はどう見ればいいですか?

有効期限と、出演者・撮影場所の仮押さえ期限が同じとは限りません。両方を確認します。期限を過ぎてから発注すると、同じ金額で同じ日程が取れるとは限りません。社内の稟議にかかる日数を逆算して依頼してください。

比較表に残った空欄を、最後の質問にする

候補を選ぶ前に、金額差の理由、未確定の追加費用、対応できる日程を確認します。返答を受けて条件が変わった場合は、更新日を付けた見積書で比較をやり直します。連絡の速さや表の細かさだけを制作能力の証拠にせず、同じ条件で依頼できるかを確かめてください。

ナイトてんしょんへ依頼する場合も、問い合わせ窓口へ本数・用途・希望納期をお知らせください。制作サービスと制作実績をご覧のうえ、必要な作業と納品物を確認できます。

参考リンク